糸井 ええと、上野公園での撮影を終えまして。 石川 はい。 糸井 石川さんは、 ご自分の撮ったもののなかからセレクトして、 紙焼きにしてきてくださったんですよね。 石川 はい、持ってきました。 糸井 （写真の束を見て） けっこうあるねぇ。 なにが出てくるんだろうねぇ（笑）。 石川 いや、そんなに、 とんでもないものは出てこないですよ（笑）。 限られた時間で撮ったものですから。 糸井 いや、すごく楽しみですよ。 ぼくのほうも、いちおう選んで、 プリントアウトして持ってきました。 石川 はい。 糸井 もちろん、 すごい写真があるわけじゃないですけどね。 ええと‥‥たとえば、こんなの。 石川 あ、オレも同じようなところを撮ってますよ。 糸井 あー、そうですか。 ま、こんな写真でも、 選ぶときは真剣に選んだんですよ。 写ってるのは、上野公園の広場で、 大道芸人がジャグリングかなんかをやってて、 そこに人だかりができているわけなんですけど。 これ、大道芸人が写ってる写真もあったんです。 石川 ああ、はい。 糸井 で、どっちを選ぼうかと考えたときに、 大道芸人が見えないほうを選んだ。 よくわかりませんけど、 それがぼくの判断でした。 石川 ぼくも同じなんですよ。 これなんですけど。 糸井 あああー。アハハハハ、へぇー！ 石川 同じ判断でした。 糸井 そうですかー。 そういうの、おもしろいですねぇ。 現場で話したりしてないのにね。 石川 ちょうど写真と写真のあいだに 大道芸人がいる感じで、 それ自体は見えてないんですよ。 そういうふうにぼくも選んだ。 糸井 大道芸人が写ってる写真も、 きっと、撮ってますよね。 石川 いちおう、撮ってます。 撮ったんだけど、 セレクトの段階でやっぱり‥‥。 糸井 落としますよね。 石川 落としましたね。 糸井 ぼくもそうなんですよね。 これは、人だかりを見つけたときに、 「なにやってるんだろう？」と思って、 カメラを持って、 どんどん近づいていったんですけど、 どんどんつまんなくなっていったんですね。 石川 やっぱり、「そのもの」が写っちゃうと、 説明するための写真になっちゃうから おもしろくないんじゃないですかね。 糸井 うん。答えなんか、知りたくないんですよね。 だから、けっきょく、選んだこの１枚は、 最初の１枚に近いんですよ。 「なにやってるんだろう？」の１枚。 石川 なにをやっているのか、という答えよりも、 「なぜ見てるんだろう？」ということとか、 なにかを見てる人たちを見てる、 みたいなことのほうが、おもしろい。 糸井 そう。 やってる大道芸を撮りたいという気持ちは ほとんどなかったですね。 石川 ぼくもゼロでしたね。 糸井 はははははは。 大道芸自体がいやなわけじゃなく、 撮るときの興味としてね。 石川 ええ。 糸井 それは、これからあとに出す写真ぜんぶに、 同じことが言えるような気がしますね。 石川 ぼくも、そうですね。 というか、ぼくの撮る写真は、 そういうふうになってきちゃってる。 糸井 おもしろいね。 答えがあるわけじゃないし、 そもそも写真を見せ合って、 成り立つのかなと思ってたけど、 うん、おもしろい。 石川 おもしろいですね。   （続きます） 2007-11-27-TUE