石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

その膝[ひざ]に枕しつつも
我がこころ
思ひしはみな我のことなり
 (石川啄木『一握の砂』より)
 ※[ ]の中はふりがなです。



第21回 ひざまくらと石川くん


石川くんて、結局、自分のことしか考えてないのね!
愛用してる香水は「エゴイスト」でしょ!!
知ってるんだからッ!!!
   *
「國文學」昭和三十八年三月号に載った
『啄木を憎む女』(文=岩城之徳)、
読んでみました。
……つまんない。
読まなかったことにします。
だって「憎む」ってのは「愛」の裏返しなんだもん。
石川くんの書いた小説のモデルだと言われている、
梅川ミサホという女性のことが書いてありました。
つまり梅川さんは石川くんに片想いしてるみたいね。
そして石川くんがつれなかったから憎んでます、と。
石川くんが死んでからも、ずーっと憎んでます、と。
……やれやれ。
さようでございますか。
   *
同じ記事の中に、
石川くんの「恋人」だったことで有名な芸者、
小奴[こやっこ]さんのインタビューもありました。
「ほんとうに短い三月[みつき]ばかりの
 おつきあいでしたが、いつまでも
 あの方の面影は忘れることはできません。
 この年になっても啄木の話をすると楽しい。」
…………。
急激に眠たくなってきた私です。
もう風邪もすっかり治ったし睡眠不足でもないのに。
石川くん、
いいよね、いろんな人に愛されてて……。
   *
念のため読者の皆さんに説明しておきますけど、
彼女(たち)といちゃいちゃしていた時期、
もちろん石川くんにはもう奥さんがいたんですよ。
しかし、なんとまあその奥さんも石川くんのこと、
あくまでも文学者として強く尊敬してるんだよね。
ああ、目をさまして奥さん!!
   *
しかも石川くん、
小奴さんにひどいことばかりしてたのに……。
どうして石川くんのこと、憎まないの小奴さん!?
いかにひどいことをやってたのかは、
関川夏央×谷口ジローの人気漫画
『【啄木日録】かの蒼空に』(双葉社)
に詳しく書いてありますから、ご参考まで。
とても私の口からは言えないくらいひどいことなので
早口で言うと、小奴さんを別の男に金で譲ったのね。
おまけに、そのあとで小奴さんに金を借りたりして。
ひざまくらの歌のモデルは
小奴さんであるというのが定説なんだが、
ひざまくらしてもらってても
考えてるのはいつだって自分のことばかりなわけ。
なんで?
なんでそんな石川くんのことをみんなで愛するの??
そう書きつつも私もじつは君のこと愛してるの???
   *
この続きは、またあした。
おやすみなさい。
小奴のひざの上で。

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-07-14-SAT

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