石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

ふるさとの訛[なまり]なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
 (石川啄木『一握の砂』より)
 ※[ ]の中はふりがなです。


第14回 石川くんのなまり


石川くん、きのうはそっけない態度で悪かった。
またファンレターが届いているから、紹介します。
   *
まずは、
「石川くんの母校で県下一の進学校、
盛岡第一高校の卒業生」さん……からのメール。

> 「おらほのごど
>  そったに うおもしぇがって
>  ふったつけるゾ」


…………。
いったい何をおっしゃってるのか、
チンプンカンプンの私です。
どなたか、日本語訳をしていただけると幸いです。
なんとなく語尾の「ゾ」からは、
俺は不満だゾ、
という気持ちが伝わってくる気もするんですが……。
   *
お次は、
高校卒業まで生まれも育ちも生粋の盛岡っ子、
現在はアメリカのオレゴン州在住、
若村淳子さんからのメールです。

(前略)
> 啄木や宮沢賢治を語る時
> イナカモン的、イワテケン的思考で読まないと
> (あるいは、イナカモンのお友達に
> その訛りで読んで説明してもらう)
> 深いところまでわからないのではないかと
> イナカモンの私は思います。
> いかがでしょう、都会っ子のマスノさん。


……なるほど、それは実際そうかもしれません。
東京杉並生まれで高円寺在住の私には、
理解しにくい気持ちもあるのかもしれませんね。
石川くんの母校で県下一の進学校、
盛岡第一高校の卒業生たちのあいだでは、
妻子に仕送りもせず、プロの女の人といちゃいちゃ、
そういう生活をするのが、
案外スタンダードなのかもしれませんし……。
あ、失敬。ただいま不適切な発言がありました。
   *
若村淳子さんのメールは、まだ続きます。

> 余談ですが、金田一君も盛岡の人です。
> (因に石川君の出身地は、
>  盛岡近郊の玉山村か渋民村ではないかと思います)


……そうです、たしか「渋民村」ですね。

> 今から20年以上も前の話です。
> 現在どうなっているのか分かりませんが、
> 官庁や地方企業のビルがある盛岡市中央通には
> 「金田一駐車場」という
> 屋根もなく、地面もコンクリート打ちすらしてない
> 昔カタギの駐車場がありました。
> (駐車台数20台くらい)
>
> 盛岡の一等地にあるとはいえ、その駐車場が
> かの「金田一さん」の土地だと聞かされ育った私は
> 今にも崩れおちそうな錆びた駐車場の看板を見る度
> 「えぇっ、かの有名な金田一京助の家があれなの?」
> と動揺を覚えたものです。
>
> 石川君にお金を貸してさえいなければ
> もっとりっぱな駐車場が建てられたことでしょう。
> と、マスノ短歌を読んでから分かった新事実、
> 石川君と金田一君の関係に、
> 「う〜ん、そーかぁ」と頷く私です。

   *
素敵な報告ありがとうございました、若村淳子さん。
私もついこのあいだ、
じつは金田一くんは石川くんより年上、
すなわち学校の「先輩」だった!
ということを知ってしまい、動揺を覚えたものです。
だって石川くんのあの態度、
先輩に対するものとは思えないよ!!
石川くん、反省してる?
君のせいで、
ふるさとの金田一くんちは大変なことに……。
少しは動揺してもいいと思うけどな。
なまりを懐かしがってる場合じゃないのでは??
   *
動揺を隠せない者同士、
きょうはこのへんで。
また来週。

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-06-17-SUN

BACK
戻る