いろどり 稼ぐおばあちゃんたちの町。
8 「惜しい!」が商売のコツ。

立木 「いろどり」で扱う「つまもの」の数は
300品目以上ありますけれども、
そうやって品名として名前がつくことで
みなさんの目が、ちゃんと
ひとつひとつの植物に行くんです。
「この種類のこの葉っぱの
 どの状態のものがこれだけほしい」
という注文が来ると、
それをきちんと出すことができるのは、
それぞれの人が、
自分の扱う葉っぱがどんな状態か、
在庫管理がすべてできているからなんですよ。
横石 自分の畑の置かれている条件も
把握できてると思います。
色や大きさの変化の状況も
ぜんぶわかっています。
糸井 葉っぱは毎日変わるからね。
採った葉っぱをパックしている仕事が
いちばん仕事っぽく見えるけど、
そうじゃない時間もたくさん必要なんですね。

横石 散歩しよんやな、と思てたら、違う。
「この葉っぱはいま何センチやな」と、
見回っているんです。
目配り気配り、かなりやってますね。
山田 自分の葉を把握している度合いは
みなさんおなじくらいなんでしょうか。
横石 それは、思いによって違います。
自分の思いが強ければ強いほど
興味や関心が高くなるから、
それに連れて
判断力、把握度が高くなっていきます。
環境や状況、季節、世の中の動き、
すべてが「自分のこと」になるんです。
山田 漫然とやってると、
ついてこない力ですね。
糸井 ぼくは脱サラの農家を
これまで見た機会があったんですが、
すべてを自分の頭へ近づけようとするから
ちょっと困ったことになっているな、
というケースに出会ったことがあります。
もちろん、そうじゃない人のほうが
多いんだけどね。

畑に雑草が出たとする。
「俺は農薬を絶対使わない」と決めた人は、
使っちゃいけない、と考えるから
「雑草が出ているほうがいいんですよ」
というふうに、人に伝えてしまうんです。
だけど、もともと農業をやってた人は、
抜きます。草は嫌だから。

横石 ぜったいに抜きますね。
糸井 だけど、脱サラ組は
「雑草が出てるでしょ?
 ぼくは除草剤を使わないんですよ。
 その証拠です」
って自慢するわけ。
頭の中で考えていることを
正当化するために生きるんですよ。
もともとそのことでお金を得ていた人たちは、
頭の中のつくり話はないから、
この、いま目の前にある現実への対応の
積み重ねをするんです。
横石 そうかもわからんね。
糸井 田舎にいるのと都会にいるのとでは、
そのあたりがちがうのかな。
横石 実際に目の前にするから
見えることがあるんかもしれんね。
菖蒲 そうねえ、あの木かて
先っちょのほうは、採れたら
しょうにするといけるのに。

山田 ??
「先のほうは
 塩漬けにするといける?」
横石 いや、「小」にするといける、と
おっしゃったんです。
山田 小?
横石 葉っぱには「小」と
「普通」サイズがあるから。
「小」は日本料理のつきだしで
使われることが多いんです。

山田 なるほど! 「小」か。
糸井 「塩漬け」に聞こえるのが
一般的には正しいかもね。
おばあちゃんが業界用語の「小」と
言うほうが新鮮だから。
山田 採れないけど、
あんな遠い場所についている
葉っぱのことまで
気にかけているんですね。
糸井 「惜しい!」とか
しょっちゅう思っていらっしゃるのかも
しれませんね。
人は、何についても、よーく見ていると
「もうちょっとでよくなるのに」
ということについて、勘が働きます。
「惜しい!」って何回言うかが、
商売人のコツなのかな。
横石さんも
「もうちょっとなんですよね」
とおっしゃること、多いですもん。
横石 そうです。
山田 最近、糸井さんも多いですよ、
「惜しい」と言うことが。
糸井 うん、そうだね。
たぶんそういう時期なんだと思う。

(つづきます!)
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2006-10-20-FRI

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