堺屋太一さん、
どうしましょう?

経済企画庁に出張しての鼠穴対談

第2回 博覧会のコンセプト

堺屋 概念は「コンセプト」っていうんですよね。
わたしもその時までコンセプトということばを
知らなかったんですが、
カナダのモントリオールの博覧会に行ったら、
テーマよりもコンセプトの話をしている。
コンセプトを求める、これが今の愛知博覧会が
うまくいかないことにも関わっているんです。
テーマとコンセプトを混合しているから。

コンセプトの次には、ストーリーが要る。
その次には一般のひとに理解してもらうために、
ストーリーを明示するシンボルが要ります。
シンボルができたところで、
次にマスタースケジュールを作り、
マスタープランを作るという、
この順番を必ず踏まなければならないんです。
これは博覧会学として
1870年くらいから定着しているんです。
糸井 パリ博のころ・・・。
(*1851年にロンドンで初めて開催された万国博覧会は、
 その後1855年パリ、1862年ロンドン、
 1876年フィラデルフィアなどで続けて開かれた。
 1889年、1900年にはパリで開催されている)
堺屋 それくらいですね。わたしはその万博のときに、
グランドデザインをつくるには、
コンセプトとストーリー、それからシンボル、
この3段階が大事だとしみじみわかったんです。

今度の「インパク」でも、コンセプトは、
第一に、全国に情報を発信するということです。
従って、制限は可能な限りなしにしたい。
地方自治体も、企業も、
NPO(Non Profit Organization・非営利組織)も、
個人としても出していただく、
そういうサイトをつくろうと思います。

そしてそこが自由競争になって、
アクセス数の多いところが目立ってゆく、
そういうしかけをまずつくろう、と。
それによって、日本の人々が自分の情報発信をできます。
第二に、バーチャルとリアルを
結び合わせるということです。
例えば、温泉というテーマのパビリオンでは、
この中でまずは歴史の温泉、ローマ時代の温泉、
楊貴妃の入った温泉など世界中の温泉を見てみる。
それから、今度はみんなで理想の温泉をつくる。
その理想の温泉が決まったら、
その現物をどこかの県に
つくってもらおうじゃないかと。
糸井 バーチャルをリアルに戻すわけですね。
堺屋 ええ。リアルなものも、見に行ったら
さらにまたバーチャルなものに発想が展開する。
温泉以外にも、例えば恐竜のバーチャルな
博物館をつくって、最後には
「こんな恐竜がいればおもろいな」
という、ゴジラを上回るやつをつくってやる。
そういうような、リアルとバーチャル、
それとイマジネーション、その3つを
連動させていくというのがひとつの案なんです。

もうひとつはね、モバイルとデスクトップの
組み合わせですね。i-modeだとだいたい1画面で
70〜100字。70〜100字の短縮情報ですよね。
デスクトップ型であると400字くらい。
それくらいの情報が互換性を持って
できるようにしたいと考えています。
糸井 今までですと、民間に競争があるおかげで
さかんにアイデアを出しあっていました。
コンペティションで負けたところがおちていくから、
危機感を背中にしょって、
グランドデザインと言わなくても
競争のなかでみがいてゆくような
アイデア合戦がありますよね。
今回のように、国をあげてやろうというときに、
堺屋さんが、もともと民間にいらっしゃって、
そういう競争もわかったかたがたが、
ぜんぶをどうするのかを考えるところに、
ぼくはすごく期待をするわけです。

例えばの話、新千年紀のページを見たら、
会議の様子の生写しがそこに出ている。
ぼくらは、小説読むみたいに、
この個性のひとがこういう言い方しているのかとか、
現場の雰囲気さえも、一緒にオールで味わえる。
そのところからちょっとずつ、
リスクをわかりながら、それを
コストとして考えて提案していることが
はじまっているな、と。
とてもおもしろかったんですよ。

(つづく)

2000-03-30-THU

BACK
戻る