時間と空間と中枢神経の映画。
鈴木敏夫さんと

無邪気に語る。

第7回 いちばん気になること

鈴木 映画の本なんか読むと、
そういうことが書いてあるわけです。
「実は映画は、すべてアニメーションだ」と。
それは、定説なんです。
アニメーションの1ジャンルとして、
ライブアクションがある……
だから、もとの当たり前の地点に戻っていると言えば、
そう言える。

ただ、実際にアニメーションの
現場で働いてる人たちには、
なんかちょっと気になる発言が多いんです。
それは何かっていうと……
「映画に興味がない」という。
 
糸井 あぁ。
 
鈴木 この「映画への興味」が、
これから何かをやっていくときの、
「いちばん気になること」なんです。

ちょっと考えれば、
みなさんもおわかりだと思うんだけど、
ぼくらが子どものころには、テレビはなかった。
映画しかなくて、その映画っていうのは、
光り輝く宝物みたいなものだったんですよ。

だから、幻想があったんですね。

ところが、それからずいぶん経つと、
映画だけじゃなくて、テレビだゲームだと、
ほんとにいろいろなものが出てきちゃった。

そういう中で、映画に対して
幻想を持たない若い人たちが出てくるのは、
当たり前なんです。

そういう人たちが、今、
30代から40代になろうとしている。
だからこれは、新しいものが出てくるのには、
ちょっとむずかしいかなって思っているんです。
 
糸井 しがみつきたくなる幻想がない、と。
 
鈴木 そこが不幸ですね。
 
糸井 映画も、「なまじ作れちゃうから」ですよね。
 
鈴木 ええ。
コンビニがあれば、
食欲がなくなるのが当たり前。
そんなことが、映画の世界にも起きていますよね。
糸井 まぁ、昔に戻れっていうのは無理な話なんで、
「昔に戻るような遊びをしろ」っていうか。
つまり、そこまでが遊びだと思うんですよ。
 
鈴木 ええ。
 
糸井 「不自由を買って出る」っていうことの中に、
みんなの楽しみ方がどんどん増えていくというか。
その中での映画の位置を考えるのは、
たぶん、鈴木さんの役割なんでしょう。
 
鈴木 「1回なくならなきゃ、
 しょうがないんじゃないかな」

っていう気持ちが、どこかにあるんですけど(笑)。
 
糸井 まぁ、焚書坑儒されてしまえば、
映画は、盛んになりますよね。
 
鈴木 ダメだ、っていわれれば、そうでしょうねぇ。
……あ、こんなところで何なんですけど、
糸井さんに『ハウル』のコピーを頼んでるのに、
いっこうに作ってくれないんですよ……。
 
糸井 今回はとくにひどいんです。
鈴木さんに向かって、
すいませんとは何回も言っているんですけど、
ほんとに今回は、むずかしいですねぇ……。
 
鈴木 いちばん長いですよね? 今までで。
 
  (映画公開日の明日に、つづきます!)


『イノセンス』についてはこちら。

2004-03-05-FRI


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