『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第16回 祖父江慎びっくり装丁解説その3

── 続きましては、この本。
『新耳袋』という怪談の本です。
 
糸井 これまたいろいろありそうな‥‥。
祖父江 この本はね、
カバーだけで済むんですよ。
一同 は?
祖父江 なくてもいいんです、本体が。
一同 え?
祖父江 でも、タイトルとか
バーコード部分があるんで、
実際にぜんぶは読めないんですけど。
つまり、これの中身の本文の文字が、
ぜ〜んぶ、カバーに印刷されてるんです。
一同 ええええっ?
祖父江 中身がぜんぶ責了になって
OKになってから、
本文をカバーに流し込んだんです。
7級ベタ7歯送りで、
3分の7歯ずつずらしながら。
それを前後3層に分けて、
3つの色で刷ってあるんです。
一同 ‥‥‥‥。
 
祖父江 なので、ルーペとかを
使っていただければ、
本体を読まなくても、
ぜんぶ読めるようになってる(笑)。
しりあがり すごいねぇ〜。
え、ほんとに読めるの?
祖父江 読もうと思えば、大丈夫!
── 「読もうと思えば」(笑)。
祖父江 ちゃんと見出しは太くしてあるし。
── すごいなあ(笑)。
糸井 この表紙を、なんっとも思わずに
生きていく人たちがいるんだね。
悲しいねえ(笑)。
祖父江 本文の重なりぐあいは、
ルーペを使わないでながめてると、
人の顔らしき形が
うかびあがったりして‥‥。
しりあがり ははははははは。
祖父江 それとね、あんまり
気づかれないけど、
この本、怖い内容だから、
お祓いがされてるの。
しりあがり あはははははは‥‥えぇっ?
祖父江 本表紙と見返しの間に、ちゃんと
魔除けの梵字が刷ってあるんです!
しりあがり ええっ!?  その、袋になってるところ?
祖父江 だから安心して
読んでいただいて大丈夫。
いたれりつくせり。
 
しりあがり うわっ! ほんとだ!。
糸井 あ、ほんとだ!
祖父江 もし、魔除けの刷ってない本を
読んでしまったら、あぶないです。
読む前に確認しといたほうがいいと思うよ。
でもこの本は、大丈夫。
ぐへへへへへへ。
しりあがり すげぇ‥‥。
糸井 この、本体の写真もすごいねえ。
なんか、禍々しいものを感じるね。
祖父江 なんかイヤ〜な写真なんですよね。
 
糸井 なに? この写真、いったい(笑)。
祖父江 なんか、文中に出てくるらしいんだけど、
ちょっとよくわかんないんで、
編集の人に訊いてくださいよ。
‥‥ぼくは怖いから、読んでなくて。
糸井 ははははははは。
しりあがり すげぇ‥‥。
祖父江 つくった本には
きっとなにかひそませちゃいます(笑)。
糸井 じゃあこの『バカボン』は?
こんな、文庫本にも
なにかあるんですか?
 
糸井 これになんかあっちゃ、
イヤですけどね(笑)。
祖父江 うん、でも、これは‥‥。
糸井 ある?
祖父江 そんなにでもないんだけど‥‥。
しりあがり やっぱりなんかあるんだ(笑)。
祖父江 うん。タイトルの描き文字を、
ぜんぶフジオ・プロの人に
描きおこしていただいたんです。
 
しりあがり はぁ〜。
祖父江 この「赤塚不二夫モジ」って独特なんで、
慣れてないと描けないんです。
しりあがり なるほどねぇ〜。
祖父江 それと、このシリーズの16巻めは、
赤塚さんが「山田一郎」って名前に
改名して描かれてたんです。
だから、16巻めだけは
「山田一郎」になってます。
 
しりあがり 16巻だけ。へぇ〜。
祖父江 でも、16巻めの後半では、
また「赤塚不二夫」に改名してるんで
小さく「赤塚不二夫」も入れちゃいました。
本屋で並べるときに困るから、
帯は「赤塚不二夫」なんだけど。
 
糸井 なるほど、なるほど。
祖父江 正しいでしょ〜。
しりあがり 一見、すごくノーマルな本なのに、
いろいろやってるんだねぇ。
(次回で最終回です!)

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2004-03-26-FRI
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