『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第14回 祖父江慎びっくり装丁解説その1

── ええと、ここに、
祖父江さんがデザインした最近の本を
いくつか持ってきたんですけど、
やっぱりそれぞれに特長があって。
ちょっとご本人に
解説していただこうかなと。
まず、宮藤官九郎さんの
『私のワインは体から出て来るの』
 
祖父江 これ、ちょっと失敗しちゃったんですよ。
糸井 それは?
祖父江 この背表紙の窓のところに
ワインが見えてるんですけど‥‥。
 
祖父江 ほんとうは、本をこう開くと、
「かんぱ〜い! ちゅっ!」って、
なる予定だったんですよ。
 
しりあがり はっはっはっは。
祖父江 ところが、
表紙スジ押しがうまくいってないのと
背ノリの硬さがうまくいってなくて
失敗しちゃった(笑)。
これから第2弾『おぬしの体から
ワインが出て来るが良かろう』
をつくるんで
そっちでは必ず成功させます。
糸井 ところで、この絵は、もしかしたら?
祖父江 ええ、しりあがりさんの絵でございます。
糸井 これ、妙に似てるね〜(笑)。
しりあがり たしか2案ほど描いたんだよね。
祖父江 うん。クセの強い絵のほうで
いっちゃいました。
第2弾では「文豪でいこう」
ってことになってます。
しりあがり あ、文豪か。へぇ〜。
祖父江 そのうち依頼します(笑)。
── 続きましては、しりあがりさんの本で、
『瀕死のエッセイスト』
 
糸井 あ、これは、ある意味、
正統的に見えます。
祖父江 正統です。うん。
ぼくはいつだって正統ですもの。
糸井 そ、そうですよね。
祖父江 うん、そうです‥‥よ?
‥‥ね?
一同 (笑)
── 解説していただけますか。
祖父江 はい、では透明のカバーをはずしま〜す。
そしてそして〜。
本体の、この白い部分が包帯なのね。
 
── このスタンプはどうやって?
祖父江 これ、面倒だったらしいんです。
おばさまがたが、手押しでやってるの。
すごいでしょ。
── 手押し?! ぜんぶ?
祖父江 うん。ピタン! ピタン! って、
製本のあとで押してもらった。
それで、スタンプ押したあとに、
1冊ずつ骸骨の絵を空押しして。
 
しりあがり あー、そっかそっか。
祖父江

で、この透明のカバーをかけると、
あら不思議!
空押しの骸骨と、
カバーに印刷された人物が
重なってるじゃあ、あ〜りませんか!

しりあがり ぬははははは。
糸井 ププッ。
祖父江 あとね、主人公はね、
体がボロボロなんですよ。
過去の体とか想いとかを
引きずっている人なんです。
だからね、ほら、これ。
わかります!?
糸井 んん? ページの端が上に?
 
祖父江 これね、まえのページの最後の部分が、
つぎのページの頭に少し出てるんです。
つまり、過去を引きずってるんですよ〜。
しりあがり あははははは‥‥。
糸井 あはははは‥‥。
祖父江 ぶへへへへへへへ。
── あ、ぜんぶのページがそうなってる。
祖父江 そう。全ページ過去を
引きずりながら進むんです。
糸井 引きずってるねぇ‥‥。
知らなかったわ、これ。
しりあがり 「乱丁じゃありません!」
って言ってたよね(笑)。
祖父江 えへへへへへへ。
それでね、まだあるんですよ〜。
── まだあるんですか。
祖父江 最後に田口ランディさんの
解説があるんですけど、
その部分はこうなってるんです!
 
祖父江 これ、過去じゃないんです。
‥‥未来! が見えてるんですよね〜。
しりあがり ああ! そこまでは知らなかった(笑)!
祖父江 ぶへへへへへへへ。
でも、説明しちゃうと、
なんとなくね、恥ずかしいね。
しりあがり いえいえいえいえ。
でも、あ〜、なるほどねぇ。
祖父江 過去を引きずる本文と、
未来が見える解説!!
糸井 変わってるわぁ‥‥。
しりあがり なんでそんなつぎからつぎへと
アイデアが出てくんのかねぇ?
── つぎの本の解説をお願いします。
祖父江 え〜? もういいよー。
(続きます!)

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2004-03-22-MON
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