『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里
第10回 理想のチームは?

── すごく端的な質問を
してみたいんですけど、
みなさんがいわゆる「上の人」として
指示を出すときに、
「なんかもう、
 気を遣いながら指示出すより
 オレが自分でやっちゃったほうが
 早いじゃん!」っていうことが
あるんじゃないかなあと
思うんですけど、いかがでしょうか?
しりあがり ぼくは‥‥、
いまのところあんまりないですね。
アシスタントさんには、
描く作業を中心に
手伝ってもらってるんで、
まずぼくが描くよりは、
みんな上手なんですよね。
糸井 ふふふふふふ。いいね!
しりあがり ま、たまにね、
なんか勘所押さえてないな、
みたいなね、
そんなとこにそんな時間かけるのは
どうかと思うな、
みたいなことはありますけど。
でも、あんまり自分が、
描くの好きじゃないんですよね、
面倒くさがりで(笑)。
だから、そんな、自分でやろうなんて、
ぜんぜん思わないですけどね。
糸井 祖父江さんは?
祖父江 うーん、思い描いたり、
「こうしよう!」って
決めるのは好きだけど、
実際に作業するのは、
そういうのが得意な人が
やってくれると楽でいいな‥‥と。
なんか「こんな感じっ!」って
いうのができたら、そこでもうね、
やや飽きるじゃない?
で、最終的なかたちにするところは、
誰かやってくれないかな、とか、
思うなー。
時間のかかる作業してると、
その途中でもっとべつのプランが
出てきちゃうかもしれないし。
── でも、できたあがってきたものが
「こんな感じっ!」とは
ちょっと違ったものになってたりしたら?
祖父江 あ、そのときはね、
ふたつケースがあると思うんです。
ひとつはよくない場合で、
そのときは、
「ここをこうすれば良くなるかな?」
とか、「ここをこうしない?」とか、
なんとなくスタッフの顔色を見ながら
伝えてます。
あと、もうひとつは、
自分が思ってたよりも
よくなってるケース。
「あ、いい、
 こういう手があったのか!」って。
たまにあるんですよ。
そういうときは、
「なんだか申しわけないなぁ」とかって
思っちゃうんですけど。
一同 (笑)。
祖父江 ひとりでやってると、
思いいたらないこととかあるしね。
だから、まあ、いろいろだよね!
── なるほど。糸井さんはどうですか?
糸井 ぼくはふたりより年上なぶんだけ、
苦労した道のりがちょっとだけ長くて、
「自分でやったほうが早い!」って
思った時期がけっこうあるんですよ。
しりあがり ああ、そうなんですか。
糸井 とくに、コピーライターの仕事が
とんでもなく忙しかったときね。
こういう言いかたを
するのはなんだけど、
要するに、ぼくがいちばんうまく、
早く、おもしろくできるんですよ。
だからある意味、
我慢ばっかりしてるんです。
で、もういろんな性格の人が
いましたけど、
いちばん困ったのは、こう、
「深い考えがある」みたいに
腕組みして、天井を見ながら
1本のコピーを2日くらいかけて
考えてる人なんですよ。
「そんなたいそうなことじゃ
 ないだろう」って思えてね。
タバコなんかふかしながら、
眉間にシワ寄せて、
毎日怖い顔してるんですよ。
ぼくからするともう、
腹が立ってしょうがない。
一同 (笑)
糸井 そんな感じで何日待っても
コピーがあがってこない。
で、とうとうどうしたかっていうと、
封筒に、オレの考えたコピーの案を、
書いて入れておいた。
もちろん何日か経ってからだよ?
あんっまりできなくて、
締切がきちゃうよ、っていうときに
まだそいつは腕組みしてるから、
しょうがなくてそうしたの。
間に合わなかったら困るから、
それを渡しておいて、
もし間に合わなくなりそうだったら、
これにしてくれって。
── すごい気の遣いよう(笑)。
糸井 で、深夜かなんかにそいつが、
こう、涙流さんばかりの顔をして、
「‥‥ダメでした」って言ってきて、
オレの封筒を開けて「あーっ!」って。
そういうの見てるのが辛くて!
そんなの、ずっと繰り返すわけ。
で、思ったのは、やっぱり
完全に同じ職業のアシスタントがいると
うまくいかないんですよね。
要するにオレも
ライバル意識あるもんだから、
「負けないぞ!」になっちゃうんで、
育てられないと思うんですよ。
── あああ、なるほど。
糸井 とくに、そのときよくなかったのは、
全体の仕事の分量を決めている状態で
みんなで仕事してたのね。
ところが「ほぼ日」始めてからは、
「仕事を増やせば増やすほどいい!」
っていうふうに切り替えたんです。
そうなると、仕事を増やせば増やすほど
おもしろくなるんですよ。
で、そのネタを考えるのが
ぼくの仕事になるわけ。
そうしたら、もう目が届かない。
目が届かないところで
行なわれていることが
おもしろくなってくる。
つまり、「自分でやったほうが早い」
なんて言えるほどの
分量じゃなくなったの。
おかげで、そういう、
「答えを封筒に入れて」みたいなことを
やらなくてもすむようになった。
祖父江 おめでとう!
一同 (笑)
── そういうふうに
切り替えたきっかけはなんでしょう?
糸井 これはね、
もうほんっとインターネット様々。
たぶん、ページ数に限りがあったら、
「この企画はダメだけど、
 この企画はいい」とかって
いうのをもっと厳しくやるように
なりますよね。ところが、
それをやらなくてすんじゃう。
おかげでね、もうね、
こんな楽しい仕事は、
みんなに分けてあげよう!
みたいになったんですよ。
祖父江 なるほどぉ。
しりあがり それはいいなぁ。ぼくもなんか、あの、
会社の理想みたいなものが
いちおうあって。
みんながぼくの仕事のほかに
自分の仕事をそれぞれにして、
そっちが忙しくなれば独立していって、
新陳代謝していけば
いいなあと思ってるんです。
でも、なかなかそうならないんですね。
うん、ちょっと最近
止まっちゃってるというか。
糸井 あの、うまく伸びていく人って、
探したらそんなにいないんですよ。
つまり、才能って、
なんていうんだろう、
ある程度の分量あれば、あとは、
勝手に伸びてくもんだと思うんですよ。
しりあがり ええ、ええ。
糸井 ただ、そういう人って
そんなにいるもんじゃない。
あの、若いときに、
組織を組むにあたって
ついつい憧れがちなのは、
「欠点はあるんだけれども
 ものすごい個性を持っている
 『7人の侍』をそろえる」
みたいなことなんですよ。
でも、そんなチーム見たことない!
しりあがり あ〜(笑)。そうなんですよねえ。
つい、そうなればたのしいのにな、
って思うんだけど。
こう、それぞれに能力があって、
組織としてはある程度自由で、
でも全体としては相乗効果みたいな。
なんか、漠然と、
理想みたいに思っちゃうんですけど。
糸井 わかるんだよ、その気分は。
 
(続きます!)

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2004-03-11-THU

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