『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第5回 ぼくの上に上司がいたら困るんですよ。

糸井 祖父江さんの力っていうのは
いつ鍛えられたのかなぁ?
祖父江 いつ、なんだろうね?
糸井 少なくとも学生時代じゃないよね。
しりあがり 学生時代じゃないっすね。
(※注:しりあがりさんと祖父江さんは
  同じ大学の漫研に所属していた)
祖父江 当時はなにもわかんなかったもんね。
サークルでつくった雑誌の表紙とかを、
わかんないままやってたもんね。
しりあがり うん(笑)。
祖父江 ノンブルを指矢印のノンブルにしよう、
とか決めてね。で、
「誰が貼るんだ!」って怒られちゃってね。
糸井 楽しそうだな(笑)。
祖父江 「そっかー、これを貼る人がいるんだー」
とか思って(笑)。
そういえば、はじめて本のデザインしたのは
あの同人誌だったなあ。
しりあがりさんが部長だったころですね。
糸井 しりあがりさんは、
そういう本のデザインを
身につけていったりしなかったわけね?
しりあがり いやもう、だって、こんな人がいると、
自分でやろうとは思わないみたいなね(笑)。
糸井 そうだね。
しりあがり だからもう、「お願い!」って。
ま、もう、大切にしようと
思いましたけどね、学生のころから。
祖父江 しりあがりさんは
学生のころも、すごかったんですよ。
スクリーントーンを
わざとグチャグチャにして、
雑巾みたいにして貼ってたり。
しりあがり 貼ってたね、わざとね(笑)。
祖父江 「カッコイイ!」と思ってね。
あれはびっくりした。
 
糸井 当時からそういうことしてたんだ(笑)。
しりあがり ま、変わったことをやりたがる時期、
ありますよね、誰でも(笑)。
祖父江 うん。そういう時期だったんだよね。
── こんな本をつい最近つくった人たちに
そういうこと言われても(笑)。
一同 (笑)
糸井 でも、この本は、
学生にはつくれないじゃないですか。
そこがおかしいですよね。
祖父江 ああ、そうだなぁ。
糸井 これ、学生にね、
「自由に変なことしろよ!」って言っても、
これになんないと思う。
しりあがり うんうん。
── 知識がなかったら、まずできないですし、
できあがるまえに不安が
山ほど出てくるだろうし。
糸井 うん。まず、どうなってもいいっていう、
最低どこまでっていう、
だいたいの覚悟がいるんですよね。
ことばは悪いけど、
「いちばん失敗してもこのくらいだろう」
っていうところが見えて
はじめて決裁ができるから。
だから、これで、
ぼくの上に上司がいたら困るんですよ。
しりあがり あー、そうですよね。
糸井 だから、人間ね、
やっぱり上司になるべきだなっていうのはね、
そういうときなんですよ。
オレにも心配はあるけども、
いっくらひどいことになってもこのくらいだろう、
じゃあ、いいじゃないか、っていったら、
いろんなことできちゃいますよ。
しりあがり あー。
祖父江 でも、糸井さん、心配してたんじゃない(笑)?
もしかしたら、
「雑巾みたいな本になるんじゃないか?」って。
糸井 いやいや(笑)。
もちろん信用してるからね。
いちおう、まかせて、
どうなってもいいとは思ってても。
で、できあがってみて思ったのは、
キレイなのよ、この本。
「買ってよかった感」があるんですよ。
とくにこの、ピカピカの表紙に
囲まれてるおかげでね、
なかの色が順番に違ってたりするところが
とってもね、ステキなんですよね。
祖父江 あ〜、ほんとだ。
── 「ほんとだ」って(笑)。
しりあがり すごいよね、これ。
本文の紙も違うんですね。
糸井 そうなんですよ。
紙も、2色の色の組み合わせも、
折ごとにわざわざ変えてある。
しりあがり けっこうたいへんなことですよね。
(続きます!)

2004-02-23-MON

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