その1992

すべての子どもたちは
美しい名前を持っています。
ひとりずつひとつ、かけがえのない名前を。
しかし、その、燃える命ともいえる名前は、
しばしば他者によってあっさりと
「言いまつがわれて」しまうのです。
てなわけで「名前の言いまつがい」です。
いろんな名前が、いろんなパターンで、
見事に「言いまつがわれて」ますよー。

今は亡き祖母の名前は「スガ」でした。
漢字で書くと「寿賀」という
大変おめでたい名前です。
ところが、町役場からの郵送物は
すべて「○○ガス様」と‥‥。
人の名前として、疑問はなかったのでしょうか?
(ガス会社の孫)
私の兄は「諭史(さとし)」といいます。
よく宛名では「論史」になっています。
で、名前の説明をするときは
「福沢諭吉の『諭(ゆ)』です」と言っています。
ですが、実際に送られてくると
「湯史」「吉史」など、
不可思議な名前で書かれてきます。
(一万円札見て確認した?)
大柴といいます。普通の苗字ですが、
電話で「柴」の字を伝えるのに意外に苦労します。
「芝生じゃない方の柴」
「柴田の柴」など言ってみますが、
「紫に似た柴です」と言うと
大抵の方が「ああ!」とわかってくれます。
なので届く郵便物の宛名の何割かが
「大紫(オオムラサキ)になります。
明らかに名前負けです。
(ルー大柴じゃもっと派手)
つい先程の話。
目の前に座ってる同僚が電話で話していて
「フジナガ宛にFAXお願いします」
と相手に伝えた。
「どのような字でしょう?」
とでも聞かれたのでしょう。
「フジにナガです」
キッパリ言い切った。
(藤に永です)
木村といいます。
電話で先方に名前を伝えた際、
漢字を聞かれました。
木村なんてめったに漢字を聞かれないので、
焦った私は
「木村の木に村です」
と言ってしまいました。
説明になってません。
(木村)
転職した時のことです。
私の苗字は「笹谷(ささや)」というのですが、
なぜか新しい上司が私のことを
「里谷(さとや)だと思い込んでしまい
何度訂正してもなかなか直りませんでした。
しまいには、
「笹谷さんは
 里谷たえさん(モーグル選手)の
 親戚じゃないの?
と聞いてくる始末。
だから、笹谷なんだってば‥‥。
(親戚じゃない)
小薗江(おそのえ)といいます。
夫とつきあって3年、結婚してしばらくも
「おぞのえ」だと思ってました。
「なんで訂正しなかったの?」と夫に訊くと、
「この名前で暮らすには、細かなことを
 いちいち訂正しててはきりがない」
『菌』の字が使われた時だけ
 『オレはバイ菌じゃない、
  ショウキンコウじゃない』と
 訂正することにしている」
私もこの名を使い始めて27年、毎年必ず、
しかしなぜか家族の中で夫宛てに限って、
バイ菌マン宛てのダイレクトメールや
年賀状が届きます。
(ただしくはオソノエ)
先日、婚姻届を役場に提出しました。
日曜日だったので、
警備員のおじさんたちが対応してくれて、
間違いがないか見てあげようね、
の後の第一声。
「えー、大木さんね」
木本です‥‥。
(キモトヨメ)
名前にかぎらず、
さまざまな「言いまつがい」を
私たちは24時間つねに募集中です。
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それじゃ、また、明日ー。

イラスト:しりあがり寿


2009-07-29-WED
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN