その1963

あるとき、耳に飛び込んできた、
あまりにも意外な、ひとこと。
そんなバカな! ありえない!
私は思わず、自分の耳を疑った。
疑って、よかった。
だってそれは「聞きまつがい」だったのだ。
どうやら私たちの日常は、
「聞きまつがい」に満ちている。
そんなわけで「聞きまつがい」の特集です。
どうぞ、最後までお楽しみください。

ある野外のコンサートイベントで、
遅れて席に着くと、
隣にいた小さな女の子の
「次は『お尻にカイロ』だって」
という声。
「お尻にカイロ????」
演奏が始まった曲は
『星に願いを』でした。
(小さな作詞家)
朝、登校して教室に入るなり
友達がいきなり
森進一のCD、貸して!」
と言ってきたので、びっくりして、
「‥‥え、持ってないけど‥‥好きなん?」
と聞くと、きょとんとしている。
どうやら
「もう一日(いちんち)CD貸して」
と言っていたらしい。ああ、びっくりした。
(高校一年女子ですから)
「ねぇねぇ、
 親の血液型って知ってるもん?」
「え? 親のケツの拭きかた?
(茜)
駅のホームで電車を待っていたときのこと。
シチュエーション以外での
 喫煙はご遠慮下さい」と聞こえ、
どんなシチュエーションだと思っていたら
「喫煙所」の聞きまつがいでした。
(非喫煙者)
夫がキッチンから声をかけてきた。
「パンは吊るすんだっけ?」
一瞬固まる私。
いや、吊るさないでしょう‥‥。
どうしたものかと固まったままでいると、もう一声。
「アルミのやつ」
ああ、「缶はつぶすんだっけ?」か。
うん、そう。アルミ缶はつぶして出すんですよ。
(つるまご)
総武線に乗っておりました。
車内アナウンスが
「次は〜警視庁、警視庁」と。
自分の頭の中で
警視庁の庁舎を思い浮かべながら、
「総武線に『警視庁』はないだろう、
 あれは『桜田門』だし〜」と。
聞きまつがいとわかりつつも、
何を聞きまつがったのかとしばし混乱。
あ、「錦糸町」ね‥‥似てるでしょ?
(千葉県民)
高校生の頃、朝バスに乗っていたら、
3歳くらいの男の子がお母さんに
「だいこん! だいこん!」
と、ずーーーっと訴えていました。
そんなに大根が食べたいのかな?
こんなに小さい子で、大根が好きって珍しいかもー。
その日、家に帰って、同じバスに乗っていた姉に、
「今朝、バスに小さい子が乗ってたよね」
と言うと、姉は
「あぁ。抱っこ、抱っこって言ってた子ね」と。
そっかー! 「抱っこ」ね。
(大根おろし)
昨日、友人とその赤ちゃんに会いました。
生後3日目に産院で会った以来の赤ちゃんは、
3ヶ月を迎えて
別人のように大きくなっていました。感激して、
「今度会うときはまた変わってるんだろうね」
と言うと、
「そう、やる気だしたら
 変わっていくよ〜」
との友人の答え。
やる気の問題なのか? と思ったら、
「歩き出したら」の聞きまつがいでした。
(やる気はいつもあると叱られた)
ニュースを見ながら私が、
「リチャード・ギアって
 仏教徒なんだって〜」と言うと、
夫が「カッパドキア?」と。
(カブのおかたん)
「聞きまつがい」「言いまつがい」
その他、どのような「まつがい」でも
私たちにお送りくださいませ。
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やってみると、意外に簡単でたのしいですよ?
それでは、また、明日ー。

イラスト:しりあがり寿


2009-06-30-TUE
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN