その1467

すべての子どもたちは美しい名前を持っています。
ひとりずつひとつ、かけがえのない名前を。
しかし、その燃える命ともいえる名前は、
しばしば他者によってあっさりと
「言いまつがわれて」しまうのです。
たとえば、ほら、こんなふうに‥‥。
お届けしましょう、「名前の言いまつがい」。
どうぞ最後までお楽しみください。
ある時、友だちの久仁子さんは
荷物を送ってもらうために
電話で自分の名前を説明していました。
久仁子の「仁」を説明する時に、
「ジンです。仁丹の『ジン』」
と言ったところ、届いた荷物には
「久丹子様」
くたんこ‥‥?
(ひとぴょん)

初めて近所の小児科にかかりました。
受付は、おばさんというより
「おばあさん」に近い女性。
「お嬢さんのお名前は?」と聞かれ
「かんなです」と答えたら、
ものすごくびっくりした顔。
「どんな字?」と聞かれたので
「ひらがなです」と答えたら
「最近の子供はみんな変わった、
 凝った名前が多くてね〜」
と言いながら、
手元のカルテにこう書いていました。
「○○ぱんだ」
かんなですって!!
(パンダの母)

私の友人は「イデ ヤスヨ」さんという。
彼女が平仮名で名前を書くと、
「いでやすよ」を
「いやですよ」
読まれることが時折あるらしい。
そんな名前の人がいるわけないじゃんっ!
と軽くキレてしまうとか。
(ハヅキハハ)
私は辻田という姓なのですが、
なかなか伝わりづらい苗字で困っています。
電話で名を名乗っても、
一度で聞き取ってもらえたためしはなく
ふじたさん?」
「つじたです」
「はい、ふじたさんですね」
「たちつてと! つーじーた、です」
つちださんですか?」
「つじたですっ」
というやり取りが延々と続きます。
相手が訛ってたりすると
「つじた」と「つちだ」の
発音の区別がつかず泥沼化します。
宛名を間違われることも多く、
「述田」とか「迷田」宛の
郵便物が届くことが珍しくありません。
(ありふれた字なんだけど)
結婚して「鍛治梁」という
超レアな苗字になりました。
「かじやな」と読むのですが、
正確に呼ばれたことは一度もありません。
買い物するときとか、電話かけるときとか、
相手に名前を伝えることって
普段の生活でけっこうありますよね。
たいてい
「かじわら」「かじやま」
などと返されることが多く、その度に
「あ、それ、か・じ・や・なって
 読むんですよ〜」と訂正していました。
でも、この前ダンナと食事に行ったときのこと。
人気店のため、入り口のところにあった
名簿に名前を書いて待っていました。
そろそろ私たちの番かなあと思っていたら、
店員のお姉さんから明るい声で
「2名でお待ちの‥‥えー、
 『だんじはり』様〜、
 たいへんお待たせいたしましたぁ〜」
と声がかかったではないですか!!
かなりの大声だったので
周りの人たちにも当然聞こえており、明らかに
「誰? めちゃ変な苗字!」と思ってる顔つきで
皆さんきょろきょろしていました。
顔から火が出そうな私たち。
今度からこういう時には漢字じゃなく
カタカナで名前を書こうとかたく決意しました‥‥。
(独身時代はメジャーな苗字)
ウチのネコの名前は「ぼんた」と言います。
私の名前は「えりこ」です。
そして母はいつも
私の名前ネコの名前
間違えます。
「こら! えりこ!
 またこんなところにゲロ吐いて!」
「えりこ、食べなさいっ!
 ワガママ言わないで
 出されたものを食べなさい!」
「もう、えりこったら、
 夜中にフラフラと外を出歩いてるから
 ケンカに巻き込まれるのよ!」
「ま〜、えりこったら、
 今日は立派なウンチねぇ!」
と、近所に聞こえるぐらいの大声で言います。
きっと近所の人に
「あそこの娘さんは親の作ったものにケチをつけ、
 夜中に出歩いてケンカばかりし、
 家の中でゲロを吐いて立派なウンチをする」
と思われているかも‥‥。
(えりこ)
英語の授業中、騒いでいたA君に先生が、
「ちょっとっ! ケン!
と英語の教科書に出てくる
登場人物の名前を高らかに叫んでいた。
(y)
名前にかぎらずあらゆる「言いまつがい」を
私たちは年中無休で募集しています。
覚えているうちにぜひ投稿してくださいね。
じゃあやってみようかと心動かされた方は
下の「投稿する」ボタンをクリック。
心に残るそのエピソードをだいたいの感じで書き表し、
できあがったら送信ボタンを押してください。
『金の言いまつがい』と『銀の言いまつがい』
どうぞよろしくお願いしますー。

イラスト:しりあがり寿


2008-02-20-WED
もどる
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN