海鮮の魅力、知床鮨の話で盛り上がりましたが、
今回のおべんとう企画には、
もう一軒、ポイントとなるお店があります。

それは、この企画のきっかけを作ったとも言える、
「えぼし」というお店です。

‥‥「えぼし」にしたという人、
ちょっと手を挙げてみてくれませんか。
1、2、3、4‥‥14、15、16人です。
もう、驚異的な数ですよね。

まずは、この店のことをよく知る武井さん、
えぼしについて、少し説明してください。
そもそもは、茅ケ崎にあるお店なんです。

けっこうへんぴな場所にあるんですけど、
いつ行っても、超満員。

じぶんのところで漁船を持っていて、
刺身も、焼きものも、煮ものも、
「マグロの血あいのステーキ」みたいなものまで、
出す魚料理が、
本当に、ぜんぶ、すばらしく、うまい。
ははぁ。
糸井さんが、このえぼしの「金目鯛弁当」を買って
うなったことから、
今回の企画がはじまったのも、なるほどなぁと。
武井さん自身も、えぼしですか?
はい。メインは「しらす丼」にしました。
武井の弁当

お弁当:えぼしのしらす地のり青唐丼(630円)
その他:帆立ゆでつみれ、手づくり塩辛、昔ながらのプリン
どうでしたか。
ごらんのように、青唐辛子がこんなに入ってたら
辛いかもと思ったんですけど、そうでもない。

ニラを刻んだものに、
青唐辛子のしょうゆ漬けをまぶしているんですが、
とーってもおいしかったです、これ。
なるほど。
で、これだけじゃちょっとさびしいので、
副菜にほたてのつみれ汁。

ここにはですね、
キャベツがいっぱい入ってるんですけど、
ぜんぶ「芯」なんですよ。
芯を柔らかく煮込んだものが入ってて、
はぁー、じょうずだなぁと思いました。
ついでに塩辛とプリンも買って。
ぜんぶ食べ切れる気はしなかったんですけど、
いや、これもこれでうまかったです。
最終的な感想としては‥‥。
やっぱ、えぼしはよかった、と。
その他、えぼしにしたという人。
わたしです。
カサイさん、どうぞ。
武井さんから、えぼしの話を聞いたときから、
ここに行きたいってすごく思ってて。

茅ヶ崎で、海で、じぶんの船で獲って、
掘っ立て小屋みたいな店構えで‥‥だとか、
そんな話を聞いていますとね、
わたし、これまで
だいたい「東京の東側」にいた人間なんで、
湘南のほうに憧れがあって‥‥。
サザンの歌にも出てくるし。
今回は、予算が「2000円」なんで、
派手に「ハレ」で行くか、
「ケ」、つまり食いたいものを食うという
「実(じつ)」をとるか、迷ったんです。
その結果‥‥。
カサイの弁当

お弁当:えぼしののり弁当(630円)
その他:千疋屋の茂木びわの杏仁
えぼしで「実」を取ろうと。

ちょうど、目の前に金目の弁当が出てきて、
そのにおいがすごくよくて、やっぱりここだなと。
でも、選んだのは金目じゃないですね。
そうそう、もう一方で、
オレは「のり弁」という「王道」が食いたいんだという
きわめて実質的な欲求があったんです。

そこで、えぼしの「のり弁」を見てみたら、
シャケ、切り昆布煮、
いかゲソフライ、たまご焼き、大根煮‥‥
それらのおかずと、のり弁とのバランスが、
もう、たまらなかった。
カサイさん、完全に「実」を取ったわけだ。
ごはんとおかずのハーモニーが絶妙でした。

ちなみに「ハレ」の気分は、
千疋屋で、
長崎の「茂木のびわ」を買って贅沢して、
満足させました。
なるほど。他に、えぼしというかた‥‥。
べっかむ3の弁当

お弁当:えぼしの海鮮ビビンバ丼(735円)
その他:えぼしのかに玉とミニ南瓜プリン、なだ万のお茶
ぼくは、ちょっとチャレンジの気分で、
海鮮ビビンバ丼を選びました。

で、押さえとして、
好物のカニ玉を付け合わせにしました。
この海鮮ビビンバ丼は、
ぼくも食べたことありますが、どうでしたか。
「人気ナンバー1」と書かれていたんですが、
いまいち味が予想できなかったので、
最初は、探りを入れながら‥‥
でも、真んなかの温泉卵を混ぜたあたりから
ちょっと、自分を好きになって。
好きになりましたか。これを選んだ自分を(笑)。
はい、ああ‥‥これでよかったんだ、と。

ただ、海鮮ちらしとか、さっきの金目鯛とか、
えぼしの定番ものを選んでおけば、
もっと、
この店の良さがわかったかなとは思いました。
うん、ぼくもそういう感想を持ちましたね。

たとえば、えぼしの定番に飽きた人とかが、
ここにくるんですよ、きっと。

だから、お店のおばちゃんたちが、
これをすすめるのは、
自分たちはえぼしを知り尽くしてるからこその、
リコメンドなんだろうなって。

ほかに‥‥えぼしは? とみちゃんも?
冨田の弁当

お弁当:えぼしの金目しらす弁当(787円)
その他:カキヤスダイニングの5種ねばねばサラダ、
    きなこのブラマンジェ
はい。大丸のなかをぐるーっとまわったあと、
足が止まったのが、
この金目の弁当の前だったんです。

‥‥で、ハッと思い出してたんですが、
茅ヶ崎のあたりに住んでいた前の会社の上司が
毎日毎日、
お母ちゃんの特製弁当を持ってきていたんです。

そのお弁当、
ものすごーく美味しそうだったんですけど、
ちょうど
この金目の弁当みたいだったなぁって‥‥。
憧れの弁当に似てたんだ。
こんなふうに、いろとりどりのおかずが
ぎゅーぎゅー詰まっていて。

で、このお弁当も、食べてみたら
その「お母ちゃんの特製弁当」な感じがして、
お腹がいっぱいになって、
本当にしあわせな気分で、食べ終わりました。
これで800円しないのも、驚きですよね。
次は‥‥りかちゃん。これも、えぼし? 
リカの弁当

お弁当:えぼしの海老しんじょう・天豆御飯弁当(787円)
その他:えぼしの春雨と鳥団子のスープ、
    カーラ・アウレラのマンゴーカップケーキ
はい、海老しんじょう・天豆御飯弁当です。
何でこの弁当にしたかっていう、決め手は?
決め手は、はい、トマトです。
トマト。メインの海老しんじょうじゃなくて。
はい、だってこのトマト、肩が張ってて、
見るからにゴリっとしてて、
これは絶対あまーいトマトだと思って、
こういうトマトをお弁当につかうお店だったら
まちがいないなと。
なるほど。
しかも、海老しんじょうと空豆が大好物だったので、
わたしも、とってもとってもしあわせでした!
なるほど‥‥でも、
やっぱり予想どおり大人気でしたね、えぼしは。
茅ヶ崎の店には10年前に行ったきりですけど、
大丸の売り場も、まったく同じ。
むかし見たメニューが、いっぱいありました。

食べてみたら、味も変わってませんでしたし。
茅ヶ崎から、そのまま持ってきた感じ?
はい。そのまんますぎて、おどろきましたね。
ああ、これもえぼしの‥‥海鮮ちらしかな?
おっくんの弁当

お弁当:えぼしの海ちらし(945円)
その他:えぼしのマンゴー杏仁、
    メルヘンのフルーツサンド
はい。‥‥あの、ぼくは中華が好きなんですが。
それなのに、なぜえぼしに。
‥‥ええ、行きの電車のなかで、
田口くんと
「やっぱり中華だよね」と話してたんですが、
現場でハリさんと一緒になって、
ハリさんが
えぼしと知床鮨のあいだを行ったり来たりしながら、
どっちのほうが「ぷりぷり」だとか、
どっちのほうが「いいテリ」だとかと‥‥。
ええ、その話は聞いています。
‥‥ハリさんの、その、なんというか、
リビドーにも似た‥‥
ものすごい鮮魚偏愛を見せつけられているうちに
ぼくも、この海鮮ちらしを、
いつのまにか、手にとってしまっていたんです‥‥。
中華のはずが。
‥‥でも、これが、美味しかったんです!

我にかえったあとに気づいたんですが、
ウニやカニ、イクラという海鮮スターたちが
入ってないんです、この海鮮丼には。

でも、エビ・タコ・イカの庶民派トリオが
ぷりっぷりで、イキがよくて‥‥
スター不在をおぎなって余りある存在感‥‥。
じゃあ、ハリさんに感謝じゃないですか。
ほんと感謝してます。
ちなみに、中華といえば、
今回、ひとりだけ中華を選んだ人がいましたね。

チャーハン弁当にした、田口くん。
田口の弁当

お弁当:上海デリの上海デリ弁当[炒飯、酢豚](882円)
その他:千疋屋のマスクメロンロールケーキ
行きの電車のなかで、奥野さんといっしょで。
ああ、さっきの話だ。
奥野さんが「中華だよね!」って言ってたので、
「ああ‥‥中華か、いいかも」と。

店内をひととおり、ぐるっとまわったんですが、
やはり中華を捨てきれず、これにしました。
これ、チャーハン弁当ですよね。おかずは?
エビチリとチンジャオロースと、酢豚です。
フルセットですね。
自分の好きなものが、ぜんぶ入っていました。
とくにどれが美味しかったですか。
それが、酢豚でも、エビチリでも、
チンジャオロースでもなく、
一個だけ入ってた、
左下の、揚げた肉みたいなもの。

これがもう、スッゴイ美味しかったんです。
スッゴイ美味しかったですか。
これメインにすればいいのにってほどでした。
そうですか。

えー、今回の企画のポインととなるお店、
えぼしについて、ひととおり話が出ましたけど、
ちょっとここで、
ぼくに「弁松」について、言わせてください。

今回は、ぐっさんが選んでたかな‥‥?
ぐっさんの弁当

お弁当:弁松のたこの桜めし弁当(1302円)
その他:築地佃権のあげかま
はい。弁松は弁松でも、このお弁当は
大丸東京店だけでしか買えないんです。

実際、食べてみたら、
蛸めしの美味しさはもちろんなんですけど、
いろんな煮物のおかずにも大満足しました。
この弁当、ぼくもおすすめなんです。

というか、
ぼくの今までの人生のなかで
食べた回数がもっとも多い弁当屋さんが、
この弁松だと思うんです。

ぼくの弁当史における、ひとつの終着点と
言ってしまっても良いほどです。
一同 おおー。
最近では、いろいろ趣向を凝らした弁当が
出てきているかもしれませんが、
やっぱり、ぼくにとって
弁松はいまだに横綱、千代の富士なんですね。
一同 おおー。
「冷めても美味しい弁当」を完成させた、
京都の味とはちがう、江戸前のお弁当屋さん。

ひとつひとつのおかずが、
ほんとうにしっかりしていて、それ自体でうまい‥‥。
そうそうそう!
その弁松を猛然と追ってきているのが、
これまでずっと話してきた、えぼしなんです。
一同 ああー!
今、ぼくのなかで、
弁当のヌーベルバーグが起こりつつあるんです。

2009-06-11-THU



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN