HARUOMI HOSONO DREAM DIARY
タヌキの神様
イラストレーション:石井聖岳
※以下はテキストのみのバージョンです。

夢を見た・・・

僕は人間自動車だ。
デジタル式の方向指示器を頭に付けてぶっ飛ばす。
東京のど真ん中の大通りをスイスイと走り抜けていく。
タクシーが歩行者だと思って抜こうとするが、
それより早いので「???」という声が聞こえて来る。
止まるときはそのまま速度を落とせばいい。
走りから歩行に移るだけだ。

こうして東京中の道を駆け抜けていく。
車と並んで左折、右折し、徐々に道が狭まっていく。
まるである地点に導かれていくような感覚。
そしてその地点に着いた。
そこは狭い階段がある薄暗い旅館だった。

今日は皆が集会する日だったのだ。
階段を上って狭い廊下の果てにある納戸のような部屋。
そこに行くと皆がいた。
なにやら阿片窟のような不穏な空気。
だが実際はそうでもなかった。
あれ? お爺ちゃんだ。
麻のスーツに蝶ネクタイ。
お爺ちゃんが夢に出て来たのは初めてだ。

古びたエレベータで上がって行くと
坂上の古い小さな商店街。
左側を歩いて坂を下っていくと、向こうから数人の女性達。
一瞬目の合ったその中の一人が知人だったので、
悪戯心が出て咄嗟に店の陰に身を隠し、
彼女が通る時に「ワッ!」と驚かしてみせた。
その始終を知っていた彼女も、
ぼくの勢いに驚いてしまったようだ。
そのままぼくは振り返りつつバイバイをして
坂を下り始めたが、
彼女はその場に立ち止まってぼくを見送る。
その顔は不思議に満ちて、
ははん、ぼくを好きになったに違いない。
いや絶対そうだ。
その美人の彼女、誰かに似てるがその誰でもない、
好きになってもいいタイプだ。

(2004/07/05)
解説
蝶ネクタイのお爺ちゃんとは、
母方の祖父である中谷孝男という人物だ。
ピアノの調律の傍ら、
ピアニストのマネジメントもやっていた。
いつも臙脂色の蝶ネクタイとステッキで出かけていく。
子供の頃、その調律の音色が心地よくて、
側で見ていたものだ。
しかし夢はどんどん勝手な方向へいくもので、
恥ずかしい「下げ」で終わる。

このごろのハローミ
団塊パンチという雑誌の最新号に、
川添象郎+ミッキー・カーチス+ムッシュの
3者鼎談が載ってます。
これがまた読んだら途中でやめられないほど面白いんです。
ぼくにとっては唯一の先輩格にあたるご三名は、
奔放で開放的な時代の空気を思いきり吸ってたんです。
モノ凄い話にドキドキしながらも、
3人の個性が絶妙な間を生んで大笑いしました。
そんな目茶苦茶な先輩たちは
〜尊敬すべきかどうかは
自信がなくなりますが、
愛すべき無頼派ではあります。


2007-02-01-THU
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