HARUOMI HOSONO DREAM DIARY
タヌキの神様
夢を見た・・・

僕は何か乗り物に乗って走っている。
バスのようだが・・・時間車というべきようなものだ。
未来に向かって突っ走るのだが、妙に静かだ。
・・・で、その座席は何故か階段教室だった。
段々になった座席はほぼ満席で、
皆どこかで知ってる顔が揃っている。
或る知人の女性が後ろ向きに寝こけて、
皆に寝顔を見られ、恥じている。
ぼくはといえば、隣の美人と話す。
ユマ・サーマンに似てはいるが、魅力は感じない。
いつ時間車を下りたのだろうか、
ぼくと仲間はバイクで延々と町から町へ突っ走る。
狭い道に行き交う車をよけ、
待ちあわせの坂の上を目指す。
バイクを止めて仲間を待つが、
そこに到着しない者も多い。
消えてゆくのだ。
あの美人も来られなかった。まあ仕方ない。

そういえば時間車はどうなったのだろう。
噂によれば、ある男は時間車に一人乗ったまま、
遠い未来へと旅立ったらしい。
その世界には二人の老賢人がいるのを見たということだ。
バイクの旅を終えて宿に入ることになった。
一夜の宴は終わり皆寝たのだろう。静かだ。
広間で寝ているのは占い師の女性だ。
彼女が連れてきた子猫がさっきからずっと見当たらず、
彼女を呼び起こして、子猫を探すよう忠告する。
しかし声はすれども見当たらない。その時・・・

廊下の戸を締めると風が急に巻き起こり、
戸がバタンと閉じた瞬間、何ものかの気配。
ゾっとしているところに、
宿の玄関先に猿を連れた
神楽漫才師のような男女が訪ねてくる。
棟梁らしき着物姿の男が、
「来年は時間を合わせて一緒に行進しましょう」
と言うのだった。

そして表の広小路で猿を中心に据えた
神楽の行進が始まった。
外国から若い女性が招かれて猿を演じている。
猿は女神のような崇高な存在らしい。
インドのシタールバンドが道の傍らにゴザを敷き、
その上で熱い演奏を繰り広げている。
あまりにも盛り上がって、とうとうシタールが崩壊し、
演者も燃え尽き横たわってしまった。

あたりに霧が立ちこめモヤモヤしている。
〜この世の謎を一言で解き明かす何か大事な言葉、
その言葉を霧が包み込み忘却の彼方へ連れ去る。

(2003/11/07)

イラストレーション:石井聖岳
解説
この夢を見た翌年〜2004年は申年で、
伊勢の猿田彦神社では猿の神事が行われた。
夢というのはそういうものだ。
相互作用っていうのか、干渉のようなね。
で、「大事な言葉」なんていうのも、
ぼくの夢には時々出てくる。
中には言葉や字だけの夢もあった。
はっきり覚えてることもあれば、
この夢のように思わせぶりのもある。


このごろのハローミ
とはいえ、最近は全然夢を見てない〜というより
覚えていない。
この連載の夢などは、
たいていダラダラと午後までまどろんでいるような、
ナマケている時に見たものが多いので、
忙しくて電話などで起きる時は夢も消し飛んでしまう。
夢日記とはつまりナマケモノ日記の別名だ。

2006-08-03-THU
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