あのひとの本棚。
     
第24回 YMCKさんの本棚。
   
  テーマ 「煮詰まったときの5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
音楽業界という、一般の人から見ると
特殊だと思われそうな業界で仕事をしてるんですが
ぶち当たる壁や悩みや逃げ出したくなるような気持ちは
普通の会社員の方々と
そんなに変わらないものなんじゃないかと
思っていて、そんなときに、
僕たちがついつい手に取ってしまう本を
5冊ご紹介します。
   
 
 

『ダンス・ダンス・ダンス』
村上春樹

 

『秘密』
東野圭吾

 

『ぼっけえ、
きょうてえ』
岩井志麻子

 

『九龍城探訪~
魔窟で暮らす
人々』
グレッグ・ジラード、
イアン・ランボット

 

『定本
ネコマンガ』
デスノバ

 
           
 
   
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  『定本ネコマンガ』デスノバ講談社/580円(税込)
 

僕、ネコ好きなんですよ。
僕だけじゃなくて、
YMCKは、偶然3人ともネコが好きなんですけど。
この本は、
「あ、ネコだ、かわいいな~」という感じじゃなくて、
ネコの写真に勝手にキャプションとかセリフとかをつけて
マンガのように見せるという、
ネコをちょうどよく遊んでるオモシロ本です。

「なんとかだニャー★」みたいな
そういうものとは無縁な本なんですけど
ネコのツンとしたところを生かした
やさぐれたセリフがついてたり、
そっけない感じの扱いがなされていたり、
そのへんのちょっと斜に構えた感じのコメントなんかが
非常に効いてるんですよね。
そうやってあえてそういうやさぐれた扱いをしてることで、
「やっぱネコってかわいいな」って
結局、かわいいに戻ってくる(笑)。

実際、僕の場合、パソコンで作業をしていると、
時間のかかる処理とかがあって
その時手に取って、パラパラとめくって
気分転換するのにちょうどいい本なんですよね。
頭休めるのにちょうどいい癒し系の本。
読むっていう感じとはちがうかもしれないけど
いつもデスクの横に置いて、作業してます。
一番好きな写真は、これなんですけど、




ま、なんてことないんですけどね、
グッと来るのはこの、何かわかんないけど
下向いてギュッと目つぶってる表情。

僕も野良ネコとかの写真を撮ったりするんですけど
ネコってとにかく予測不可能なところがあるんです。

歩いてて、とつぜんゴロンと
「なんでそこで寝るの? 」とか
「こっち寄ってくるのかなー」
と思ったら
「‥‥来ないっ」みたいな(笑)。
その意外性が好きなんですね。
それで、この本はネコの写真が
とにかくいっぱいあるわけなんですけども、
そういう意外なしぐさを追ってると、
写真をどんどん撮っちゃう理由というのが
すごいわかるんですよね。
「あ、そこ入る? そこ入る? 撮っとこう」
っていうのがもう毎日のように起こるから。

さみしいことに、最近引っ越したら、
あまり周囲にネコのいないところになってしまいまして
それでまた、この本を見て
「ああ、やっぱりネコいいよなあ」って(笑)。
もう、僕の中では、ど真ん中ストレートに
仕事で行き詰った時に、読む本です。

   
Amazonで購入
  『民子』 浅田次郎角川書店/1,575円(税込)
 
こちらは、「定本ネコマンガ」とうって変わって
切ないというか、ノスタルジックな写真集という感じです。
2冊ともネコの写真が白黒なんですよね。
僕の場合は、ネコが好きだからネコの写真を見てるというより
ネコのいる家というか、ネコの育っていく過程とか、
街というか、そのネコを含めた
生活全体みたいなのが好きで
そういう空気感が好きだなぁと思って
本を開いては、そういう生活に憧れてます。
   
Amazonで購入
  『九龍城探訪~魔窟で暮らす人々』グレッグ・ジラード、イアン・ランボットイースト・プレス/3,675円(税込)
 

怖い本と同じぐらい
廃墟だったりとか工場地帯とかが
すごく好きというか、
そういったもののフェチみたいなんですよ、わたし。
それはメンバーも知ってて、
この本は、Nakamuraから
誕生日プレゼントにもらった本です。

九龍城というのは、香港にかつてあった
スラム街なんですけど、
ただのスラム街じゃなくって
増築に増築を重ねたビル街なんです。
14階建てぐらいのビルがつながってて
中に入ったら出られないという話もあるぐらい
迷路のような廊下につながっていたという。
いまはもう取り壊されていて
実物を見ることはできないんですけど
この本だと、
九龍城に人が実際生活していた様子が
インタビューと写真でわかるんですね。
そこは中国でも香港でもない
両方の法律で縛られてない場所で
中には、たくさん人が住んでるんですけど
外からは、なにが起こってるか
わかんないようなところで。



そんなところに住んでる人や
他にはない風景の写真を眺めてると、
不思議な気分に浸れるんです。
廃墟もそうですし、工場地帯もそうなんですけど、
ちょっと切ないような
行ったことないのに懐かしいような
そんな感じにトリップできるんです。

映画とかSFとかでしか観たことないような
近未来的な独特の雰囲気も感じとれて
十何年か昔のことなんだけど、
ちょっと未来っぽさも感じるんですよね。
サイバーパンクの香りがするというか。
その雰囲気のある写真がすごく気に入ってるんです。

何かに行き詰ったりとか
緊張でワーッとなった時とかにはもう、
パッとこの本を開いて眺めるだけで
目の前にある現実から一瞬でも離れられて
やっぱり非常にいいなと思いますね。

   
Amazonで購入
  『ぼっけえ、きょうてえ』岩井志麻子角川書店/500円(税込)
 

わたし、怖い本、大好きなんですよ。
この本は、2008年の夏に
「ちょっとひんやり」する本を探し求めて
出会った本なんですけど、
『ぼっけえ、きょうてえ』みたいな
日本の昔の怪談話の雰囲気を持った本というのは
怖い本好きのわたしにとっても
いままであまり読んだことない感じで
ちょっと新鮮な本だったんです。
いつもはノンフィクションとか
サスペンスものとか読んでいて、
もっと現実味のある、寝れなくなるような
怖さを感じるものもあるんですけど、
これはそういうのと比較すると、
怖いのは怖いんですけど
まあ「ひんやり」という感じです。

構成としては、4つの短編からなっていて
タイトルにもなってる1つめの
『ぼっけえ、きょうてえ』は、
昔の遊女が、お客さんに、眠る前にするお話で、
「これ聞くと眠れなくなっちゃうけど、いいの?」
と言いながら岡山弁で話しはじめるんですけど、
わたし、神奈川出身なので、
なんというかリアリティを感じて怖いというより
物語として、ちゃんとちがう世界を覗かせてもらって
「はぁー、怖かった」という感じなんですよね。

本を読む時はよく
お風呂に入りながら読むんですけど、
浴槽につかって、
リラックスしながらたのしんで読めたので、
あ、これならちがうところでも読めるかなと思って
いつもカバンに入れて、
ライブの前に取り出して、控室とかで読んでます。
神経が高ぶって緊張してるときに怖い本を読むと
逆にほぐれる感じがするんですよね。
「うわぁー、コワーーいっ」みたいな。 
緊張でのガチガチから、一気にポーンと
別のところに飛んじゃうので、
そういう意味で、すごくいいです。

内容的には、表題作以外の話の後半の方が
どんどん怖くなっていまして
人間の持つイヤな部分と
怪談部分とがあわさって、
新しい怖さを見つけたみたいな感じでした。
口絵も怖さだけじゃなくて、色気もありますし。



たのしめる人は限られるかもしれないですけど、
いまと時代背景とちがって、
昔の話っていうところが、
こうあんまり現実味がなくって
非日常に一瞬にしてトリップできるという意味で
すごくおススメです。
「ちょっとひんやり」したい時に、ぜひ。

   
Amazonで購入
  『秘密』東野圭吾文春文庫/700円(税込)
 

これは、父親と娘と母親の
ある3人家族の話なんですけど、
娘と母親が雪山に出かけるんです。
そこで、乗っていたバスが事故にあい、
母親の魂が娘にのりうつってしまって、
娘の体で母親の魂を持った女性と、
その夫というか父親が
ふたりで生活していくという話なんです。
うーん‥‥。先に紹介した
村上春樹さんの『ダンス・ダンス・ダンス』と比較すると
説明しやすいストーリーだと思ったんですけど
これはこれで、すごい複雑な話ですね。



僕は、まだ結婚してないんですけど、
読んでる時の立場としては
外見的には娘さんで
中身は奥さんという人と生活する
お父さんの気持ちで読んで
途中「どうすんだぁっ!」って本気で悩みました。
東野さんの作品は、
ものすごくかっちりとしたストーリーがあって
とにかく続きが気になってしょうがないんで、
仕事の合間の安らぎとか息抜きというよりも
ひたすら没頭して読んでます。
感情をどんどん移入していって
自分の気持ちというか気分を高まらせていって、
それでストレス発散というか、
もっというと感情を爆発させてます。
他の作品もそうなんですけど、
東野さんの作品は、
最後の数ページで、読者を裏切るんです。
いい意味で。
だから、この作品もエンディングについては
触れられないんですけど
絶対にストレートに終わらせてくれないのが
東野さんの魅力だと思っていて
この『秘密』という作品も
まさにその最後のたたみかけるような展開に
のまれていく感じになるんですよね。
最後の数ページで
「そうだったんだ!」という驚きがあって
それがわかった瞬間に、
いままで読んでたことが
また、ものすごく切なくなるというか、
それでまたもう一回はじめから読んでしまう。
いつのまにかハードリピートしてる
そんな感じの本です。

   
Amazonで購入
  『ダンス・ダンス・ダンス』(上下巻)村上春樹講談社/680円(税込)

 

この本を僕がはじめて読んだのは、
10年ぐらい前、大学生のときになるんですけど、
そのとき文庫本で買った本が
もうボロボロになるぐらい何回も読んでます。
村上春樹さんの本で最初に読んだのは
『ノルウェイの森』なんですが
その時に、登場人物たちの会話が、
とにかくひたすらステキだなと思いまして。
だから、ストーリーというよりは、
村上さんの作品は、
とにかく登場人物たちの会話をたのしんでます。

小説って背表紙のところに
軽くストーリーが書いてありますよね?




この話は、それを読んでも、
どんな話かよくわかんないんですよ。
それで、僕は本を選ぶ時、
キャラクターの会話を読むんです。
その会話が面白いか面白くないかで
自分が好きそうな小説かどうかを判断するんですけど、
村上春樹さんの作品は、それがすごくて。
読んでいるときに、
人が会話をしてる感じが頭の中に出てくるし、
読んだあと、自分のしゃべり方が
村上春樹(作品調)になるぐらい影響を受けまして
僕、昔は自分のことを
「俺」って言ってたんですけど
村上春樹さんの作品を読みはじめてからは、
「僕」になりました(笑)。
まあ、そういう意味で影響を受けてます。

この小説の中に
主人公たちがハワイに行くシーンがあるんですけど、
けっこう尺を長くとってるわりには
ストーリーがぜんぜん進まないんですよ。
そのハワイでの何でもない生活の期間というのが
読んでてものすごく安らぐんです。
仕事で追われてたりとか、疲れてる時とかに、
擬似的にハワイで
のんびりしているような気分になれるんですよね。
それも多分、村上さんの会話のテンポのよさとか
状況表現の上手さだと思うんですけど。
だから、僕はそこばっか読んでますね(笑)。
ただラジカセをひとつ買って、
砂浜でそのラジカセを聴きながら
1日過ごすだけ、とか書いてありますからね。
そんな何でもない描写を
こんなに面白く書けちゃう方は、
そうはいらっしゃらないと思います。
この話は 『風の歌を聴け』
『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』
の「羊三部作」の続編にあたるんで
その流れを全部読まないと
村上作品はわかんないよという人も
いるかもしれないですけど
僕は、とにかくこのハワイのシーンと
登場人物の会話が好きなんですよね。

 
本木克英さんの近況
男女3人からなる
8bitポップユニットYMCKさんの
人気のきっかけとなったのは
2004年の1stアルバム
『ファミリーミュージック』

発売当時、ヴィレッジヴァンガードで
ヘビーローテーションされていましたので
YMCKさんのお名前は知らなくても
「ああ、この曲!」
という人もいらっしゃるかもしれません。
YMCKさんのくり出す
レトロゲームさながらの8bitサウンドは、
ファミコン世代はもちろんのこと、
10代~20代を中心に幅広い支持を受けています。
2009年もスウェーデン、アメリカ、
フランスにてツアー中!と、
なかなか国際派ですね。

2009年1月21日に発売されたばかりの
最新アルバム『ファミリークッキング』のことを
こんな風に紹介してくださいましたよ。

とにかくたのしいものを作りたかったんです。
1stの『ファミリーミュージック』、
2ndの『ファミリーレーシング』
YMCKの作品は、
たのしいイメージに思われがちなんですけど
そのあとの『ファミリージェネシス』
かなりシリアスだったのと、
つづく『YMCK SONGBOOK』
70年代フォークの中でも
けっこうヘビーな曲のカヴァーアルバムで
僕らにとっては、
そのつくってる期間がけっこう長かったんですよ。
それで、
「わぁー、最近ちょっと真面目すぎだなぁ」というのと
「ここらで、バーンとはじけたやつを作りたいっ!」
という思いが爆発して、
『ファミリークッキング』ができました。



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そのタイトルの通り、
「クッキングをしながら聞く」
という感じの曲ばっかりなんですけど
どのくらいクッキング向きのアルバムかというのは
1曲目を聞いていただくのが早いかと。

(クリックすると音が出ます)




(アルバム:『ファミリークッキング』より「おもちゃの兵隊のマーチ」)

まさに、「クッキング」な感じだったでしょう?
これを聴きながら台所に立つと
たのしく料理ができること受け合いです。

余談ですが、YMCKのメンバーは
3人ともよく料理をするんですけど
僕の得意料理は「グリーンカレー」


わたしは「豚の角煮」。
僕は「きんぴらでーす」。


YMCKさん、ありがとうございました!

同日に発売された
初の映像クリップDVD『ファミリーシアター』から



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試聴コーナーを準備しました。
1日1曲ずつお聞きいただけます。

1)メンバーからのメッセージ + 新曲「カレーだよ!」 2)「DOWN TOWN」
3)「Go YMCK, Go!」 4)「パニックレーサー005」
5)「Magical 8bit Tour」  


なお、CD+DVDの初回限定版には
「YMCKの仰天レシピ本」のオマケがついているとか。



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5000枚の限定生産ですから、
ご興味のあるかたは、お早めにどうぞ!

なお、ニンテンドーDSiのDSiウェアにて
2009年1月28日より発売の「PiCOPiCT」の音楽も
YMCKさんが担当しています。
これからのご活躍がますますたのしみな
YMCKさんのホームページはこちらからどうぞ。

 

2009-01-30-FRI

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