あのひとの本棚。
     
第29回 小田島等さんの本棚。
   
  テーマ 「80年代ポップイラストレーションの手引きになる5冊」  
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あんまり悩まず、直感的に5冊を選んできました。
『1980年代のポップ・イラストレーション』という、
自分が監修をした本が出版されたのですが、
その本にちなんだセレクトと言えるかもしれません。
ぼくをイラストレーターという職業へ導いてくれた、
尊敬する方々の本を5冊、紹介いたします。
   
 
 

『お父さんの
ネジ』
渡辺和博

 

『郵便ポスト・
モダン』
スージィ甘金

 

『ニューヨークの仕事場から』
ペーター佐藤

 

『近代美術史
テキスト』
中ザワヒデキ

 

『モンスター・
リミックス』
テリー・
ジョンスン

 
           
 
   
※現在入手困難な
 一冊となっております
 

湯村輝彦さんの本です。
「テリー・ジョンスン」っていうのは、
言わずもがな湯村さんのペンネームですね。

湯村さんの本っていっぱあるんですけど、
きょうはサインをしていただいたこれを持ってきました。
なんでサインが入っているかというとですね、
ぼく、専門学校のときに
なんやかんやで結局スージー甘金さんのところで
バイトさせてもらうことになったんですよ。
夜間部だったんです、桑沢デザイン研究所の。
昼間はスージーさんとこ行って、夜に学校へ行って。
で、ある日ですね、
テリーさんところが引っ越しだから手伝いに行きなさい
って言われて、行ったんですよ。
そのときこれに、サインをいただいたんです。
まあ、それだけのことなんですけど(笑)。
未成年にとったら大事件ですよ。

サインのことはともかく、
この本は、本といってもポストカードなんですよ。
テリーさんって、こういう「珍品」をつくるのが
とても上手じゃないですか。
この本も、この珍品っぷりが好きなんです。
かっこいいですよねえ。
ぼくもわりと珍品っぽい本を出してるんですけど、
それはテリーさんの影響なのかもしれないです。

今はテリーさんがいるのが当たり前の世の中なので、
こんなにすごいテリーさんのことを
わざわざすごいって言わない感じがあるじゃないですか。
でも、よくよく考えたら、
やっぱりほんとにすごいわけです。どう考えても。
テリーさんいわく、
「米屋のオヤジが描いた絵は味わい深い」。
こういうことを前面に出しちゃったっていうのは、
革命ですよね、大衆革命ですよ。

でも、最初に湯村さんの絵をみたときの
ぼくの印象は、あんまりよくなかった‥‥
というか最悪だったんです(笑)。
『事件記者チャボ!』っていう
水谷豊さんのドラマがあったんですよ。
たしか1984年ころかな、ぼくは小学生でした。
それでエンディングテーマを水谷豊さんが歌ってて、
その画面に、へったくそな絵が出てるんです(笑)。
なんだろう? と思って、お姉ちゃんとふたりで、
「なんだろうねー、へただねー」って(笑)。
なぜこれが、このテレビというね、
たいへんなメディアのしかもゴールデンタイムに、
出てくるんだっていうのがほんとに不思議だったんです。
画面にはたしか、
「アニメーション/湯村輝彦」
って書いてあったと記憶しています。
名前はずっと覚えてました、
湯の字が強烈な印象だったので。
それから数年後、スージーさんの
『郵便ポスト・モダン』を手にした中学生のぼくは、
その本の中に、湯村輝彦の文字をみつけるんです。
「これは! 事件記者チャボの!」
しかもスージーさんの親玉みたいな人なんだってことが
調べてるうちにだんだんわかってくるんですよ。

それでも、テリーさんの絵には、まだピンとこないんです。
中学生ですからね、わからないんです。
「リキみたくない」って感覚がまずわからない。
リキみたいじゃないですか、中学生って。
元気いっぱいだし。
プラモデルとかもまだ好きだから
「構築したい」っていう気持ちも強くて。
なんでわざわざ絵を崩すのかって‥‥ねえ(笑)。

ですから、おとなになってからなんです。
湯村さんのすばらしさが
じわじわとわかってきたのは。

ぼく自身の中では、
湯村さんとピカソをよく並べて考えるんですが、
ピカソは子どもの絵のハートを
大人っぽく仕上げてるんだと思うんですよ。
で、湯村さんのほうは、
大人の価値観の中に子どもの心があるっていうところが
ピックアップされている気がして‥‥。
やっぱりぜんぜん違うんですよね、ピカソとは。
で、ヘタうまはもちろん、
キュビズム級の革命なんだと思っています。

   

※現在入手困難な
 一冊となっております。

トムズボックスのHPは
こちら
 

現代美術家、中ザワヒデキさんの作品というか、
すべて手書きの近代美術読本です。

これはね、おもしろいんですよ。
副題が、
「印象派からポストへたうまイラストレーションまで」
となっているんですが、まさにそういう内容なんです。
現代美術というのは、
印象派からはじまっているって言われているんですね。
それが脈々と変化していって、
日本においてはヘタうまに分岐してきたのではないかと。
だから80年代のヘタうまは、
現代美術として語ってもいいんじゃないかっていう、
すごく大づかみに解説すれば、
そういう説が展開されてる本なんです。

ぼくがこれを手にしたのは高校生のときでした。
中学のときにスージー甘金さんの
『郵便ポスト・モダン』に夢中になって、
高校になってからは、これを何度も読んだんです。
あれは1989年だったかな、
当時のぼくにとっては参考書でしたね。
これで勉強して、
わからないところは図書館と本屋で調べる
っていうのをひたすら繰り返していました。

これ、すごいのは、
例えばゴッホの絵が紹介される部分では、
中ザワさんが手描きでゴッホを描いてるんです。
ヘタうま調の模写ですよね。
この本の図版はぜんぶそう、中ザワさんの手描きなんです。
あとこの、ルーチョ・フォンタナという美術家の
空間概念の章では実際にページの一部に
数センチの切り込みを入れて解説してあるんです。
一冊ずつ手作りでそれをやってるんですよ。

中ザワさんて、おもしろいこといっぱいされてるんですよ。
わりと早くからコンピューターで絵を描いて、
90年代の最初には、「日本初のヘタうまCG」、
「バカCG」を定義しました。
現在は中ザワさん、「脳波で絵を描く」
っていうのをやっているそうですよ。

じつはこの前、
その中ザワヒデキさんにサインをいただいたんです。
しかもこの、『近代美術史テキスト』に。
『1980年代のポップ・イラストレーション』の
出版を記念してトークショーをやったんですが、
そのときのお相手が、
中ザワヒデキさんとスージー甘金さんの
おふたりだったんですよ。
中学・高校という青春時代に
何度も読み返した本をつくったおふたりと、
ぼくがトークショーでお話しできるなんて‥‥。
がんばって本を作って、よかったです(笑)。

   
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※現在入手困難な
 一冊となっております
 

ペーター佐藤さん。
「パルコ」のポスターや「ミスタードーナツ」の
商品パッケージで有名なイラストレーターです。
この本は1994年に
49歳でお亡くなりになったペーターさんが、
ニューヨークに滞在してる間に書いたエッセイ集です。

内容的には、
80年代ニューヨークのデザインの現場を伝えてくれたり、
あとは日常の街歩きや、
お買い物のこと等が書かれていたりします。
文章が上手で、やさしくて、
描かれるエッジィな世界観とは裏腹に、
なにか人情味みたいなものを感じさせてくれます。
自分で撮ったポラロイド写真もたくさん載ってて、
やっぱり上手いんです、何気ない写真も。
トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンとか、
音楽評論家の今野雄二さんといっしょに写ってたり。
「ミスター・チャオ」っていうチャイニーズレストランに、
いろんな人が集まるんですよ。
このお店は映画『バスキア』に出てきますよね。
あと『ウォーホル日記』にも出てくる。
そういう人々が集まる場所の
熱気みたいなのが伝わってくるんです。

自分が監修した本の話になって恐縮なんですが、
『1980年代のポップ・イラストレーション』には
もちろんペーターさんの作品を入れないと、
ということになって、
ご遺族とスタッフのかたにお会いしたんです。
原宿に『ペーターズ・ショップ&ギャラリー』
という場所があるんですが、
そこで膨大なファイルをみせていただきました。
全作品、ほぼコンプリートで
美しくファイルされていました。
あらためてみせていただいて‥‥
「やっぱり好きだ」って思いました。
なにしろ、とにかく、絵が上手い。
「こんなに上手かったら、食える!」って、
ばかみたいなこと思いましたから(笑)。
いや、そんなの当たり前ですよ、当然なんですけど、
あれだけ上手い絵を目の当たりにしたら、
「これは、食える!」
って思っちゃったんですねえ。
月並みですが、ほんとうの天才の仕事だと思いました。

あと、そう、それとですね、
これは言おうかどうか迷ったんですが‥‥。
ぼく、「霊」とかそういうの信じてないですよ?
信じてないんですけど、
膨大なファイルを何時間もみていたら、
「ペーターさん、ここに来てる」って感じちゃったんです。
渡辺和博さんの奥さんがおっしゃってたのと、
きっと同じ感覚ですよね。
自分が監修する本にペーターさんのどの作品を収録するか、
ぼくは選んでいるわけですよ。
で、「これにしようかなあ」って思うと、
「そうそう、それそれ」と、教えてくれたような‥‥。
すみません、へんなこと言って(笑)。
でもそのときペーターさんから、
「よくわかってくれてるね」
と言われたような気がしたのは、ほんとうなんです。
長い時間ずっと作品をながめていたので、
作者と同化しちゃったのかもしれないですね。
自分がペーターさんになったような気になって。

そう、あと、それから
『1980年代のポップ・イラストレーション』では
近田春夫さんに、ペーターさんについての
コラムを執筆していただいてます。
これがね、いいんですよ。
シャイで、イカしてて。
この文章を読むと嬉しい気分になれます。
それもぜひ、という感じです。

   
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これ、1986年の、その当時に買ったんですよ。
中学のときです。
中学生ですから『北斗の拳』とか『キン肉マン』を
やっぱり読んでました、周囲も読んでますからね。
学校で『キン肉マン』のワザをかけられるんですよ、
それがもう、嫌で嫌で(笑)。
「何かが違う、早くおとなになりたい、
 でもいまはキン肉マンしかしらない」という状態で。

そんなある日、本屋さんにいったんですね。
そしたら漫画コーナーのはじのはじに、
へんな漫画ばかりのコーナーをみつけたんですよ。
手に取ったのが、この本でした。
なんかねえ、妙な絵だなあと思いましたねえ。
赤塚不二夫 、藤子不二雄漫画の絵のようだし。
「郵便ポスト」って書いてあるし、
「モダン」ってなんだ?
スージィ、アマキン? って(笑)。
中学生だからよくわかんないんですよね。
でも、なぜか強くこれを読みたいと思ったんです。
「釣り竿を買う」と嘘をついて
親からお金もらって買いました(笑)。

そうして手に入れたこの一冊から、
ぼくはスタートしているんですよ。
文化への目覚めというか。
これを読みはじめてまず、
ポストモダンていうのがなんだかわかってくるんです。
いま思えば、中学生でポストモダンがわかっちゃうって、
すごい経験だったんですよね。
それで、その翌年に
アンディ・ウォーホルが亡くなるんです。
新聞とか雑誌にポップアートの情報があふれてきて、
それを切り抜いて集めたりしていました。
この本にはポップアートの解説も載ってたので、
興味をもったんですね。
本に出ていることでわからないことは、
図書館にいって調べました。
トム・ウェッセルマンとかリキテンシュタインとか。
こういう絵具で描かれている筆致は
ジャスパー・ジョーンズの引用だ、とか。
そういうことがめきめきわかってくるんですよ。

あとは音楽のこと。
この本にはロックのワードがいっぱい出てくるんです。
ロキシーミュージックがどうとか、トムトムクラブとか。
当時はMTV全盛期だったんで、
こういう国内の下世話でお洒落なイラストブックと、
深夜のピーター・バラカンの番組を
行ったり来たりするのは、ほんとに興奮しましたね。

もう、この一冊でたのしくてたのしくて。
学校にいけばまだ「アタタタタタ!」とか
北斗神拳をやられてるんですけどね(笑)。
でも、「家に帰ればスージーさんが待ってる!」
そういう中学時代でした。

それでぼく、中2のときスージーさんに会うんですよ。
原宿のギャラリーで個展をやってるというので、
学校帰りに行ったんです、学生服で。
生まれて初めてギャラリーて場所へ行くんです。
まさかご本人がいると思わないじゃないですか。
いたんですよ。
ちょうど技術家庭の授業で使った木の板を持ってたので、
「これにサインください」って(笑)。
ちゃんと描いてくださいましたよ。
もう、ドキドキで。
その場に小林克也さんと安斎肇さんもいたんです。

自分がいちばん敏感なころに、
この本に出会って、いろんな文化にどんどん興味を持てて。
いや、 ほんとうに運が良かったと思っています。
そんな意味で、
ぼくのスタートになった一冊ですね。

   
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2007年にお亡くなりになった
イラストレーター・エッセイスト、
渡辺和博さんの追悼本です。
ええと、560ページですか、
とても分厚い本で、ナベゾさん(渡辺和博さんのこと)の
漫画作品の名作選のような内容で、
赤瀬川源平さんと南伸坊さんが
実際にお葬式で読まれた弔辞も収録されています。
あとは、南伸坊さん、みうらじゅんさん、
リリー・フランキーさんの座談会も。

お話がね、やさしいんですよ。
市井の人々の暮らしの細部というか、
なんでもないようなことなんですけど、
なんでもないことが、すごくちゃんと描けてるんです。
そういうのって、
できるようでなかなかできないんですよ。
でも、それでいて、何かを破壊しようともしている。
怒っているというか、
壊そうとしている気配を感じるんです。
同時に、空気みたいに通過してってもいるんですよね。

最初にナベゾさんを知ったのはたしか小学生のころで、
『笑っていいとも』に出てましたよね。
プレッピーファッションで、いつもお洒落で。
タモリさんがすごいつっこむんですよ(笑)。
そんなナベゾさんのイラストを初めてみたのは、
中学になってからでした。
そのときはすぐに反応しなかったんですよ。
「大人っぽいな」っていうか、
「おれのわかんないことだな」っていうか。
それがだんだん、だんだん、なんでしょうね‥‥
もう、時間をかけて染み込んできたんです。うん。
まだ今日も、染み込んできていますから。
‥‥なんだか、ナベゾさんのよさを、
ぜんぜんうまく言えてないですよね(笑)。
こんなに好きなのに、うまく言えないのは、
まだわかっている途中だからかもしれません。
ナベゾさんの魅力を
これからぼくはもっとわかっていくんだろうな、
っていう気持ちがありますから。

『1980年代のポップ・イラストレーション』に
ぜひナベゾさんの作品を掲載させて頂きたいと思って、
ご遺族の奥さまに作品原稿を借りにいきました。
東京の西の方のファミレスで奥さんと待ち合わせて、
作品を持ってきていただいて。
そしたら、そこで、奥さんが涙されたんです。
うちの和博の原画が山ほど家にある。
なかなか整理がつかない。
これらがいつか再評価されるような日が来るのか。
ぼくなんかに、そう聞いてくるんですよ。
それで、ぼく、
ほんとはそんなたいそうな男じゃないんですけど、
「ぼくがどうにかします」と言っちゃったんです。
奥さんになにか言ってあげないといけないって思って。
「ぼく何でもやりますから、
 引っ越しでも何でもぼく、手伝います。
 あ、そういうことだけじゃなくて、
 何かできるようがんばります」みたいな事を。
奥さんは、
「ああ、うれしい。ありがとうございます。
 なんだか今、ここに和博が来てる気がする」
って、涙されて。
ぼく、どうしようと思って、とっさに、
「あ、じゃあ奥さん、席をつめないと、
 ほら和博さん来たんで、つめてください」
そう言ったら、奥さん、笑ってくれました。

ほんとうにいつか、
ぼくの力でできる「ナベゾさんのこと」を、
企画してできたらなと思っています。

 

イラストレーター・デザイナーの小田島等さん。
CDジャケットや書籍のデザインを数多く手がけながら、
漫画や音楽などの表現活動も行われています。
「ほぼ日」で以前ご紹介した、
糸井重里作詞、ムーンライダーズの名曲、
『ゆうがたフレンド』のジャケットは、
小田島さんが描かれた作品です。


そんな小田島等さんが、
1980年代のイラストレーション・シーンの魅力を
たっぷりと紹介する一冊を監修されました。


『1980年代のポップ・イラストレーション』
小田島等(監修)
アスペクト/3360円(税込)

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手にとって、拝見してみたら‥‥。
まず、そこに収録されている
イラストレーター陣の豪華さにびっくり!
敬称略で、お名前を連ねさせていただければ、
湯村輝彦、スージー甘金、空山基、渡辺和博、上野よしみ、
霜田恵美子、鴨沢祐仁、太田螢一、蝦子能収、根本敬、
吾妻ひでお、山口はるみ、永井博、鈴木英人、
ペーター佐藤、日比野克彦、田代卓、ナンシー関。
という、そうそうたる顔ぶれ。
これだけの方々の作品が、美しいカラー図版で、
それぞれにたっぷり収録されています。
また、コラムやインタビューページもかなりの充実。
さらに、80年代イラストレーションに影響を受けた
クリエーターたち(現在、第一線で活躍の方々)が描く、
トリビュート作品も収録されいます。

小田島さんは、
「監修」という立場で、
なぜ、この本を世に出そうと思い立ったのでしょう?
まずは、その理由をうかがってみました。

「とある美大で、
 学生さんたちの前で話をする機会があったんです。
 当然イラストレーションやデザインの話になりますよね。
 それで、過去の、80年代のイラストレーションの
 話題をしはじめたら、なんか、こう、
 生徒の食いつきが急に悪くなったんです。
 急に距離ができてしまって。アレ? と思いまして。
 100人くらいの教室が水を打ったようになっちゃって。
 深く訊いてみると80年代のイラストレーションのこと、
 みなさん知識がなかった。
 で、ためしに佐藤可士和さんを知ってる人って訊いたら、
 100本の手がみごとにサーッと挙がって(笑)。
 いや、今をときめく佐藤可士和さんのことを
 美術系の学校の生徒が知っているのはもちろんのこと、
 当然なんですけど、そのギャップに驚いちゃって。
 そうかあ、知らないんだぁ‥‥。
 いまの20才くらいの子たちって、
 ネットで情報を得ることがふつうになってますよね。
 ところが80年代のイラストレーションについては、
 きちっと情報がネットにスライドしてないっていうのが
 あるんじゃないかと思ったんです。
 それならば、本というかたちで、
 動かぬ証拠をちゃんと作んなきゃと思ったのが、
 ほんとにいちばん最初のきっかけでした。
 だから学校にある図書館なんかにコレ、
 おいてほしいんです」

なるほど。
ということはやはり、若い人に向けられた本なんですね。
タイトルに「1980年代の」とあるので、
ついつい「懐かしい!」「ああ、やっぱりいいなあ~」
という気持ちでページをめくってしまいましたが、
そういうことのためにある本ではなくて‥‥?

「いえ、懐かしく感じる方は当然いらっしゃるでしょうから
 それは自然に楽しんでいただければと思います。
 ただ、ぼく自身は85年に小学校卒なんですよ。
 80年代というものを半分知ってて、
 半分知らないという状態。
 だから懐かしいという気持ちもあんまりないんです。
 なんていうんでしょう‥‥
 いま、絵を描いている若い人たちに、
 見えていないルーツを知ってほしい、というか。
 たとえば"ヘタうま"ってことばがありますよね?
 ことばとして一般化してると思うんですが、
 これのルーツは湯村輝彦さんなわけじゃないですか。
 それを知るだけでも意味があると思うんですよ。
 いま自分が、流行や時代の空気を感じながら
 無意識に描いているつもりの絵には
 過去からの連鎖があるんだ、という‥‥。
 ですから、ある年齢から上の方には
 たしかに懐かしい本なのかもしれないですが、
 "懐古的な本"だけではないんです、
 ということはちょっと言っておきたいなあと思います。
 それから、絵に詳しい子、愛好者って、
 いる場所にはもちろん数多くいるんですよ。
 クイックジャパンなんかの読者だったり、
 クラブなんかへ行くような子だったり。
 イラストレーションに対する熱は、
 そういう子たちに手渡されたような気がしています。
 今は美大生、専門生が
 すこし弱いような気がするんですよね。
 この本では18名の作家さんの絵を紹介しましたが、
 もちろん掲載したかった方はまだまだたくさんいます。
 しかし今回は紙面の問題で18名が限界でした。
 この本をたくさんの方が手にしてくださったら、
 第2巻、3巻を出して、
 今回できなかった部分を補完していけると思うので、
 どうかひとつ、よろしくお願いします(笑)」


※このページに登場するイラストは、書籍の表紙以外、
 すべて小田島等さんに描きおろしていただきました。

 

2009-05-16-SAT

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