あのひとの本棚。
     
第25回 平田裕香さんの本棚。
   
  テーマ 「同世代が共感できる5冊」  
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私、今年で26歳になるんですが、
このくらいの年代ってけっこう結婚を考えたり、
それこそ子どもを授かることを考えたり、
人生のことをいろいろと考える世代だと思うんです。
そういう同世代の人たちが、
これからの生きかたのヒントみたいなものが
得られる5冊をマンガの中から選びました。
   
 
 

『うさぎ
ドロップ』
宇仁田ゆみ

 

『マイガール』
佐原ミズ

 

『ピースオブ
ケイク』
ジョージ朝倉

 

『α』
くらもちふさこ

 

『ソラニン』
淺野いにお

 
           
 
   
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  『ソラニン』<全2巻> 淺野いにお 小学館/530円(税込)
 

友だちに進められて読んだのがきっかけの
すごくリアリティのある作品です。
カップルがすれ違ったり、
理解し合ったりしながらも生活していくなかで、
思いがけない大きな事件が起こり、
どう立ち直っていくのかが描かれています。
そういうことが、
すごくストレートかつ正直に描かれてるんです。
「きれい事」はナシです。

私、子どものころ東京に引っ越してきて
多摩川の近くに住んでいました。
この作品の舞台となっている町田とか登戸とか
小田急沿線の近くの土地勘があるので
すごく世界観が共感できるんです。
描かれている町並みとか雰囲気が
すごく頭の中に入っているものと合致して
グンとこのマンガの世界が広がる感じがします。

作者の淺野いにおさんはこの作品以外にも
「おやすみプンプン」という作品を
描いていらっしゃるのですが、すごくリアルで、
そのまんま映像化できるような作品を描く
作家さんだと思うんです。
本当に自分の住んでいるところの隣の住人が
この主人公であってもおかしくないほど
リアルな感じでした。

読んでいるほうは驚かされます。
「えっ? そうくるの?!」って思うはずです。
私も呆気にとられました(笑)。



この作品みたいに
友だちから薦められることもあるんですが、
基本的に手当たり次第読んじゃうタイプ。
ジャケ買いならぬ表紙買いもしちゃいますし(笑)。
だから当たり外れもスゴく多いです。
そのかわり当たった作家さんは
ドンドン読んでいきますね。
じつは一時期、あまりに増えすぎちゃったので
ちょっと止めてたんですけど、
今年のお正月に読みあさっちゃって。
もう取り留めもないことになってます(笑)。

   
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  『α(アルファ)』 くらもちふさこ 集英社/620円(税込)
 

これは、役者さんたちがお芝居を作り上げていくお話です。
じつは連載時は「α」としてお芝居のみが連載され、
「α」終了後に「+α」として
そのお芝居を作り上げていく様が掲載されました。

劇団経験者の人たちと、
鳴り物入りでその劇団に入ってきた女の子との
価値観のズレだったり、見解の相違だったり
経験してきた道が違うことのコンプレックスなどを
克服しながら1本のお話を演じる、という内容です。
4人いる登場人物のうち、それぞれ立場が異なるから、
誰かには感情移入しながら読めると思います。
4人4様のお話があると言えます。



当時、高校生だった私は
もうすでに芸能界にはいたんですけど、
あんまり何も考えずにお仕事をしていた節がありました。
成功しようと思っていたわけでもなく、
いかに与えられたお仕事を自分なりに答えを出すか、
ということばかり考えていたわけです。
「なんかもっと先を見て動かなくちゃいけないな」、
「自分の見聞を広げたい」と思っていたときに
この作品に出会い、そしてすごく感化されました。
自分の視界がバッと開けるような感じだったんです。
人生においてすごく大きく意味のある作品ですね。

だから、もう絶対、俳優さん、女優さん、
もしくは、それを目指している人には
読んでもらいたいですね。
ファンタジーからホラーまで、
おもしろい描写がたくさんあるので、
映像作家を目指している人なんかにもお勧めですよ。

あ、そうそう、この作品って、
まだ一度も映像化されたことがないんです。
もし、映像化されるときがきたら私、絶対出たいです!

   
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  『ピースオブケイク』<全5巻> ジョージ朝倉 祥伝社/980円(税込)
 

まえの2冊が親子ものだったので、
ここらへんで「ザ・恋愛もの」みたいな作品を(笑)。

ジョージ朝倉さんは
私の大好きな作家さんのひとりなんです。
この作品は主人公が25歳くらいのフリーター。
で、少女マンガだと「恋の始まりかた」や
「終わりかた」を描いた純愛作品が
最近の流行だったりするんですが、
この作品はまったくの逆。
略奪愛がメインのお話なんです。
略奪されたほうも最終的には略奪し返したり。
もうまさに略奪に次ぐ略奪(笑)。

略奪されたことで傷つくんですけど、
素直に自分を正当化して、
すぐにほかの男の子に切り替えたりするわけです。
傷つきかたが小ズルいとでも言いましょうか。
でも、けっきょく、
みんな自分が好きだし、幸せになりたいから、
どう幸せになれるのかを模索しながら生きていると思うので、
こういう部分ってけっこう共感できる部分だと思います。



あっ、でも実際に私がこういう恋をしてきたかというと
それはまた別の話なんですけどね(笑)。
もちろん、こういう恋がしたいわけでもないです。
でも「恋空」みたいな純愛作品を読んで
「キュン」となりつつ、
こういう話を読んで「ありそうありそう」とか
「等身大の恋だな」って焚きつけられたりしますね。

なんかこの作品自体がオシャレなんですね。
そう思わせるフレイバーが
いたるところに散りばめられている。
こういう作品を通じて見ると、
いろいろなことがオシャレに見えてくるんです。
たとえば、劇中で主人公が
お弁当箱にご飯だけ詰めて持っていって
バイト先でレトルトカレーを温めて食べる、
というシーンがあるんですけど、
それがなんかスゴくオシャレに見えたんです。
「あ、そういうのアリなんだ!」って(笑)。

   
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  『マイガール』<現2巻・刊行中> 佐原ミズ 新潮社/530円(税込)
 

佐原ミズさんは3つくらいペンネームをお持ちで
私が最初に出会ったのは
「夢花李(ゆめかすもも)」というペンネームで
描かれていた「同細胞生物」という作品でした。
この作品は少年誌での連載なんですが、
すごくかわいらしい絵を描く方なんです。

「うさぎドロップ」と同じくお父さんと娘のお話です。
主人公の学生時代の恋人が留学先で出産するんですけど
他界してしまい、子どもを引き取るっていう内容です。
23歳、独身、子持ち。
同世代なんですよね(笑)。



でも、こっちはこう、言葉が悪いかもしれないんですが、
お話が「きれい事」なんですよ。
登場人物の言葉ひとつひとつが「きれい事」のようで、
読んでいて「そんなわけないよ」って思えちゃうんです。
ですけど、よくよく考えると、
「きれい事」って大事だなとも思えるんです。

たとえば、人から受ける親切を「悪い」と思って、
かたくなに断っちゃうことってありますよね。
まさに「きれい事」のように心配してくれている。
でも、それって何か見返りを求めて
親切にしているわけじゃないんです。
本当に心配してくれているから言葉をかけてくれている。
だったら「ありがとう」とひと言伝えて
助けてもらったほうが断然いいと思います。

私は、すごく意地っ張りだったり、
意固地になってしまう部分があるんです。
ひとりで何でもできるようになって
生きていきたいと思っていたほど(笑)。
そんな私を見て、「なんとかしてあげたい」と
思ってくれた人はたくさんいたんだけど、
そんな人たちの親切を無下にしてきたんです。
自分に余裕がないからなんですよ。

だから、この作品の中に出てくる言葉が
そのまま自分に響くんです。
自分の性格から
すべてを受け入れることはできないのですが、
ときにはそんな「きれい事」もいいかな、って思えます。

   
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  『うさぎドロップ』<現5巻・刊行中> 宇仁田ゆみ 祥伝社/980円(税込)
 

他界したおじいさんが残した小さな女の子を
孫である三十路くらいの主人公、大吉が
引き取って育てていく、というお話です。

その子に対する周囲の大人たちの反応が、
難癖をつけたり、他人事のように振る舞ったりと
まったくもって大人らしい態度をとらないことに
憤りを感じた大吉が、勢い余って
「自分が引き取る」と言ってしまったのが
物語の始まりです。
でも、女の子の成長とともに周囲の大人たちも
成長していって、
彼女を気にかけてあげたり、うち解け合ったりと、
徐々にその子に関心を向けるようになっていくんです。



子どもを育てるなんて、そんな簡単なことじゃないし、
自分を犠牲にしないと成り立たない部分も多いわけです。
ましてや本当の自分の子どもでもない。
でも、この作品では、そんな重くなりがちなお話を
ドロドロとしたものとして描かれているわけでもなく、
かといって、お涙頂戴ものでもなく、
意外とサラっと描かれているんですよ。

宇仁田ゆみさんがお描きになられる絵は
とってもかわいらしいのですが、
同時にお話がとてもリアルに感じられる絵だと思うんです。
それだけに感情移入がしやすくて、
つい、のめり込んで読んじゃいます(笑)。

私も四捨五入したら30ですし、同世代として
大吉さんに感情移入しながら読んじゃいますね。
孤独な女の子をワーワー言い争いながら
押しつけ合うなんてことは、私だってしたくない。
でも、大吉さんのように引き取ることができるか? 
と問われれば、それもまたそうじゃないと思うわけです。

少女マンガなんですが、
ぜひ男性の方に読んでいただきたいですね。
大吉さんにどう感情移入するかを楽しんでみてください。

 
平田裕香さんの近況

タレント、女優として活躍中の平田裕香さん。
そんな平田さんがお芝居に挑戦しました。
その名も
「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」。

映画版「踊る大捜査線」シリーズや
「UDON」、「少林少女」を手がけている
本広克行監督が演出を手がけています。
そもそも、この「FABRICA」は本広監督が
ジャンルを超えた表現プロジェクトを実施すべく
生まれたレーベルのこと。
3部作の舞台として作られており、
1章は「FABRICA 10.0.1 -LIFE FILM-」、
2章は「FABRICA 12.0.1 -BABY BLUE-」、
そしてその最終章である
「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」に
平田さんはご出演されています。
その「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」が
DVDとなってリリースされました。

「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」


3675円(税込)
発売元/ポニーキャニオン


Amazonで購入



この「FABRICA」が2度目の舞台出演となります。
最初に立った舞台は、いい経験にはなったんですが、
自分の中で不完全燃焼で終わってしまった
という心残りな部分があったんです。
そもそも「FABRICA 10.0.1 -LIFE FILM-」と
「FABRICA 12.0.1 -BABY BLUE-」を観て、
すごくおもしろかったんですよ。
「私も、あぁいう舞台に出たい」って思ったんです。
そうしたら、「次のキャストを募集します」という
チラシを見つけて、事務所の人に
「このオーディションを受けさせて欲しい!」って
お願いしたんです。

なるほど。
しかも平田さんは、激戦のオーディションを
勝ち抜いて見事出演の座を勝ち取ったそうです。
どうしても出たかった舞台「FABRICA」。
どのあたりに魅了されたんですか?



そもそも「FABRICA」のテーマが「実験室」なんですね。
1章、2章と舞台セットがすごく変化するんですよ。
白い六角形や台形の箱を活用して、
キャストたちも舞台作りをしていく。
さらに舞台上での演技が舞台芝居ではなく、
まるで目の前でふつうのドラマが繰り広げられているような、
ごく自然な演技で物語が進んでいくんです。
私が観た舞台はお通夜のシーンから始まるんですけど、
そのお通夜の会場に
自分もいるような感覚になったんですよ。
舞台を観ているんじゃなくて、
その場にいっしょにいる感覚、とでもいいましょうか。
その感覚がすごく気持ちよかったんですね。
だから私もそういう感覚を
お客さんに味わわせてあげたい、と思ってました。
そうしたら、観に来てくれた知り合いなんかも
「どこまでが芝居だったの?」って(笑)。

どこまでが演技なのかわからない舞台。
それはまさにその場にいるような感覚ですね。
さて、その演出を手がけた本広監督はどうでした?

監督は最初、1回通してお芝居を観たあと、
「ここはこうしよう」、「こっちはこう」という感じで
何度も何度も繰り返して
いっしょに作り上げていきました。
本当、「FABRICA」は本広監督の実験室なのかな?
って思えるくらい(笑)。
でも、みんなその実験を楽しんで作り上げていきました。
変化と調和がうまくミックスした感じですね。
稽古中の様子はDVDの映像特典として収録されています。
この「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」が
完成していく様を、ぜひご覧になってくださいね。



あ、そうそう。
じつは舞台上で生着替えがあったんです。
カーテンがシャーって閉じて、バーッと着替えて、
ジャンと出てくるような流れだったんですけど、
カーテンが壊れててちょっと閉まらなかったりとか、
ファスナーがなかなか上がらなかったりとか、
いろいろなアクシデントもありました。
DVDには? それは観てのお楽しみということで(笑)。

平田裕香さん、楽しいお話をありがとうございました。
DVD「FABRICA 11.0.1 -LOST GARDEN-」は
税込3675円で発売中です。

最後に、平田裕香さんが
アメリカでエミー賞にノミネートされた
webドラマのリメイクに出演されるそうです。
タイトルは
「Tokyo Prom Queen Season2」。

6名の大学生たちの交錯する恋愛関係、秘密、
そして裏切りがスリリングに描かれています。
パソコンはもちろん、携帯電話でも試聴可能だそうです。
詳細はhttp://www.promqueen.jpまでどうぞ。

平田裕香さんの公式ホームページはこちら

 

2009-03-06-FRI

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