ほめ道を往く。
「ほめられて伸びる派」のためのページ。

単行本も発売され、絶好調の「ほめ道」。
今回は、季節柄、お世話になった方も
多いのではないかと思われる
「懐中電灯」をテーマにお届けします。
そう、きっかけは台風です。
フランソワーズさんの住む広島を台風が直撃し、
どうやら「懐中電灯」について、
深く深く考えてしまわれたようです。
例によって脱線しまくりながら、
「懐中電灯」をテーマに広がる無限のイメージ。
地味に、防災についても、
考えさせられる内容となっております。



第七十一回
懐中電灯をほめる。
〜台風の夜に思うこと〜

みなさん、台風大丈夫でしたか?
わたしの住む広島はワリと直撃でした。
ですが、今回は去年ほどの被害はなかったので
ホッとしています。

そんな「台風上陸」のニュースに
わたしたち主婦は当日の朝から大忙し。

まず、午前中に買い物を済ませておかないと
いつ「外出不可能」やら「スーパー早仕舞い」やら
「道路冠水」やら「通行止め」になるかわかりませんし、
なにしろ一番怖いのは
「商品品切れ」ってやつだったりするわけで。

何の商品が品切れするかわっかるかなー?
主婦の人はわかるだろうけど‥‥。
「電池」
「水」
なのです!!

その日、わたしは朝の9時半に
近所のスーパーに行きました。
横殴りの雨、激しい風の中
駐車場はいっぱい。

なんとか車を停めて
車から降りて傘を差してる間に
かなり濡れます。
必死でスーパーの入り口に到着して
傘を畳んで、かごに手をやったとき
店内から買い物を済ませた
お向かいのママさんが出てきて‥‥。

お向かいのママ「あら、岡崎さん(わたしの名前)」

わたし「あ! 来るね、台風」

お向かいのママ「電池買ったわよ」

わたし「ああ‥‥。電池‥‥」

お向かいのママ「だって懐中電灯とかラジオとか」

わたし「あー、でも電池どのサイズかわかんないわ‥‥」

お向かいのママ「ダメじゃん、停電したとき困るよ」

わたし「まあ、いいや。バイバーイ」

わたしはさほど気にせず、店内をまわり
レジに並びました。
レジは長蛇の列。
スーパー大繁盛。

でね、その列の先に乾電池コーナーがあったの。

どこにでも乾電池コーナーってこの場所にあるよね。
あと、100円ライターと使い捨てカメラも。

レジ横ってどうしてつい買いたくなるんでしょう?
最後の最後で並んでいる数分、
つい、手が伸びてませんか?

他の場所で見ると買わないものも
あそこにあると
「買ったほうがいいかな」という気分になるでしょ?

「くっつかないしゃもじ」も
「洗剤のいらないスポンジ」も
あの場所にあったからこそ買ったのです!

あのレジ横という場所は
「買い物が済んだ」安心感と
「もうすぐ支払い」というタイムリミットが作る
ちょっとした人の「混乱」を
きっとうまく利用しているんじゃない?

要するに、乱暴に言うと
「火事場のバカちから」なのよ!
「火事場泥棒」じゃなくて!!

たった100円のライターで
「火事場のバカちから」なんて大袈裟だ、
なんて言っちゃいけません!

わたしたちは、売り場でさんざん
「一円でも安いもの」を
吟味してカゴに入れてきたのですから!

辿り着いた場所で、
ああ、最後の最後で、
疲れきったわたしたちの頭脳の混乱に付け込む。
怖い場所なのですよ
「魔がさす」場所なのです!!
思いがけない力が出てしまう場所なのです!!

何かの試合をするのなら
是非、レジ横で開催してください!!
実力以上の力が発揮できます!

次回のオリンピックは「レジ横」で開催されます!
うそです!

まあ、それはいいので戻りますが。

そのレジ横で何気に先ほどの会話を思い出し、
「電池買っとこうかなー」と思い
「うちの懐中電灯って単何?」と考え
「たぶん単2だろう」言う結論になり
とりあえず買おうと思ったのですが‥‥。

ない!

どこどこどこーーー???
手に入らないのか? 電池!

そう思うと、
さっきまで「まあいいや」と思っていたくせに
探しましたよ、もう必死で!
「今日の買い物の目的は電池なのよ!」くらいの勢いで!

すると、別の場所にありました。

ホッとして買って帰り、
家に着いて乾電池を冷蔵庫の中に。

ですがね‥‥。

「懐中電灯」

実際、今日使うことになるかどうかは
わからないわけですよね。
要するに、電池は「もしものため」でしょ。
普段は「懐中電灯」なんて使わないじゃないですか。
そんなに‥‥。
なのに「単2」なんてこれまた使い道の少ないサイズ。
なんていうか、不謹慎ですが
「停電になってくれ! 頼む!!」みたいな悪の心が
わたしの心に芽生えるわけで‥‥。
ああ、なんと言う矛盾。

最近は防災グッズも発達して
「ラジオ付き懐中電灯」なるものもございますが
これはこれで、また矛盾を持ってまして。

全部がそうじゃないでしょうが
わたしの親戚のうちにある「ラジオ付き懐中電灯」って
なぜか「充電式」なんですよ‥‥。

ですが、「もしものときのために充電」って
よっぽどマメな人でない限り
そんなにしないんじゃないでしょうか?

現に、その親戚。
いざ停電のときに
準備万端整えて買っておいた「ラジオ付き懐中電灯」を
いそいそと持ち出し、勇んでスイッチオン!!

「あれ〜? なんで点かないの?」

「おかしいね〜」

「電池ないんじゃない?」

「‥‥ああ、これ充電式じゃん」

そういいながら、思わずコンセントに差し込んだそうです。

うーーーーん‥‥。

ジレンマだーーーー!!

わたしはそこで
「懐中電灯と矛盾とジレンマの法則」に気付いたわけです。

ああ‥‥。
なぜ、神はわたしたち人間を
いつもお試しになるのでしょう?
「お試し期間」なのでしょうか?

ですが、この物事の
「矛盾」や「ジレンマ」を
気付かせてくれた「懐中電灯」。

「懐中電灯」とは暗闇に小さな光をくれて
その小さな光に人々は希望や勇気をもらってきたはずです!

ネオンや家にぶら下がっている電球とは違い
「懐中電灯」とは「心細さ」に灯す「光」ではないのか?

だから「懐中電灯」の光は
そんじょそこらの光とはワケが違うのですよ!

これまでも、幾人もの人に「安心」を与え続け
危機を救ってきたのです。
素晴らしいですね「懐中電灯」!!

そんな「懐中電灯」に感謝するならまだしも
「矛盾」や「ジレンマ」を感じるわたしは
本当に愚かとしか言いようがありません!

そんなわけで先日よりいささか反省中でございます。

「ジレンマ」と言えば
信号前の「ジレンマゾーン」
あなたは止まれますか?

そんなわけで
日ごろから、防災には心掛けたいですね!

台風で被害に遭われた方々に
心からお見舞い申し上げます。

また、お会いしましょう♪




むー、たしかにジレンマ!
思えば、すべての防災グッズとは、
「備えたけれど、使いたくない」という
あらかじめの矛盾を内包しているのかもしれません。
いや、そんな大げさな話ではないのかもしれません。
ちなみに、読み終えて、
「乾電池はほんとうに単2だったの?」
ということと、
「乾電池って冷蔵庫にしまうものなの?」
という2点が印象に残りました。
ちなみに、うちの乗組員のりかさんは
「乾電池は冷蔵庫に入れたらアカン!
 かえって持ちが悪くなる!」
とおっしゃっておられました。
ですので、フランソワーズさん、
いますぐ乾電池を冷蔵庫から出してください。
以上、業務連絡でした。
次回の「ほめ道」をおたのしみに。

イラスト:さとうみどり

2005-09-13-TUE


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