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糸井重里

・同じ内容のことばでも、言い方によって
 いろいろとちがった感じが伝わるものだ。
 たとえばね、
 「わたしは、彼を信じられません」というのは、
 ずいぶんと強い意味を持ったことばだ。
 これを、怒ったように言うと、
 ほんとうにそう思って言ってるように聞こえるだろう。
 「わたしは、彼を信じられません」と、
 平坦に小さな声で言ったときには、またちがう感じ。
 そう思ったという内容は伝わることだろうが。
 にやにや笑いながら、同じことを言ったとしたら、
 冗談に聞こえるかもしれないし、
 なにか見下しているようにも思われるかもしれない。
 泣きながら「わたしは、彼を信じられません」と
 言ったときには、これもずいぶん本気に聞こえるだろう。

 「わたしは、彼を信じられません」ということばは、
 みんな同じなのだが、言い方によって伝わるものがちがう。
 感情を込めて「怒って言う」「泣きながら言う」と、
 真剣に言っている、本気で言っていると伝わりやすい。
 ここまで読んでくれた人は、「ま、そうだろうね」と、
 同感してくれているかもしれない。
 しかし、重要なのは、ここからだ、次の行で書くことだ。

 だから、人を騙そうとする人も、怒ったり泣いたりする。
 「わたしを疑うのか!」「おまえこそ嘘をついている!」と
 怒りを爆発させるように怒鳴っている人がいたら、
 また、「わたしは騙された!」と泣いている人がいたら、
 通りすがりくらいの、事情をよく知らない人なら、
 その怒ったり泣き叫んだりしている人に、
 一気に同調してしまうかもしれない。
 あれほど怒っているのだから真剣だ、
 あんなに泣いているのだから本気だろう、と。
 感情を爆発させる表現というのは、そんな強さがある。
 でも、人を騙そうとする人も、
 そういう表現の技術を悪用することが多いのである。
 「怒鳴り」やら「叫び」「嗚咽」「涙」には注意したい。
 いまの時期、あちこちで怒鳴っているのがきつい。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ほんとに怒っているときその怒りを信用される人でありたい。

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