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ほぼ日刊イトイ新聞

2023-06-06

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・唐突に言いますけど、大谷翔平はすばらしいと思います。
 大投手だけでなく大打者で、「二刀流」と呼ばれています。
 すごい選手二人分の活躍をひとりやってるわけです。
 ほれぼれするようなヒーローで、しかも愛嬌を感じさせる。
 将棋の藤井聡太七冠も、ほんとにすばらしいです。
 冠ひとつ持つだけでも大変なのに、それを7つですよ。
 しかも、若くしてということもすごいです。
 どちらも驕り高ぶった感じがないのもいいですよね。 
 ここまで、ぼくの素直な気持ちなのですが、
 実は、これから書くことの前フリです。

 大谷翔平がひとりだけいても、二刀流はおろか
 野球というゲームそのものが成り立ちません。
 あの豪速球も捕手のミットに向かって投げてるわけだし、
 三振してくれる相手打者がいなけりゃ奪三振もない。
 ホームラン打つにも、相手投手が投げてくれなきゃ、
 バット持って強く振ってもどうにもなりません。
 二刀流の大活躍はすごいけど、チームの他のメンバーや、
 相手チームや、ベンチや球団や、観客、ファン、野次馬、
 そういう人たちがつながっていてこその大谷翔平です。
 藤井聡太七冠にしても、その輝く冠は、
 とても将棋の強い前王者から「奪取」したものです。
 高度な対戦相手がいなかったら対戦はできなかったのです。
 七冠それぞれに、勝っては負けた人の名が刻まれています。
 いずれいずれは、藤井聡太という名もそうなるのでしょう。

 ひとりでたくさんのことをやれるって、
 わりと憧れられたりもするのですが、実際には、
 ひとりでできることって、ほんとに限られているんです。
 どんな仕事でも、たぶんそうだと思うのですが、
 「なんでもひとりでやれる」のは自慢にはならなくて、
 それは「いいなかま」とのチームがつくれてない、
 ということであるかもしれないわけです。

 ひとりでいられる覚悟は、ほんとうに大切なものですが、
 その「ひとり」が無限につながっているという想像力と、
 だれもが、じぶん以外の「ひとり」なのだという事実を、
 忘れちゃぁなんねぇぞということです。
 25年も、毎日、こうやってぼくが「今日のダーリン」を
 書いてこられたのも、ひとりでやれたのじゃございません。

この日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
今日からまた、のびのびした新人のような気持ちでやります。


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