お気に入り記事の保存はアプリが便利!

ほぼ日刊イトイ新聞

2020-11-25

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・昔持っていて、読んだはずだったのだけれど、
 あらためて読んでみたくなって買った本がある。
 『茨木のり子の家』という。
 奥付にあるもともとの発行は2010年11月25日だ。
 それほど昔のものではなかった。
 そして、偶然にも今日と同じ日だ。

 なんだかいいと思って、まずはぱらぱらページをめくり、
 写真を眺め、詩をいくつか読んだりして、
 これは後でゆっくり読もうとしてそのままになった。
 無精なぼくにはありがちな、そういう不幸な本だった。
 探しても見つからないところに行ってしまったが、
 なにかきっかけがあって、
 「あの本、なんだったんだろう?」と気になり、
 あたらしく古書として手に入れた。

 茨木のり子という人の詩は、
 いくつかは「あのあれ」というくらいに知っている。
 こころの皮膚の薄いところに触れられたような詩。
 痛いし、少し怖いし、つよくて、やさしい。
 かんたんそうなことばが、生きものになってうごく。

 『茨木のり子の家』には、文字通り、家の写真があるが、
 詩もあるし、原稿用紙に書かれた文字もある。
 本棚や、ドアノブや、旅の記念のものや、
 詩人の描いた夫の似顔絵や、家計簿や、家の図面や、
 庭の柑橘系の果実や、家の主人のポートレイトや、
 なんだかなんでもあるようにさえ見える。
 おしまいのところには、じぶんが死んだときのために
 あらかじめ日付けを空欄にしてあるお礼状の写真がある。
 「このたび私  年  月  日  にて
 この世におさらばすることになりました。」
 ではじまっていて、
 「深い感謝を捧げつつ、お別れの言葉に
 代えさせていただきます。
 ありがとうございました。」で終わっている。

 この本をつくった人の意図は想像するしかないが、
 詩人であった茨木のり子と、詩人でなくても茨木のり子、
 その両方をまるごと一冊にしてみたかったのだろうな。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
家、詩、写真、詩人、生活、家族、紙、鉛筆、年月、別れ。


ここ1週間のほぼ日を見る コンテンツ一覧を見る