ほぼ日カルチャん

STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示

ミュージアム

0154

「STEPS AHEAD !」

みつい

0154

ブリヂストン美術館といえば、
藤島武二、青木繁、黒田清輝、ルノワールに、ピカソ。
いつ行っても名品に出会えるすてきな美術館でした。

その「ブリヂストン美術館」が名前を新たに
「アーティゾン美術館」として生まれ変わりました。
開催中の「STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 」は、
新収蔵品を中心とした展覧会です。
生まれ変わる準備をしていた休館中のあいだに
コツコツと増やしていたコレクションのうち、
初めてお披露目するものがたくさん出品されている。
と聞けば見ておくしかない展覧会です。

びっくりしましたー!
日本の近代洋画と印象派のイメージが強くあったので、
え! こんなにコレクションの幅があるのか!
と素直におどろいて、たのしんだ展覧会でした。

これぞ石橋財団のコレクションだ!
という名品ぞろいの贅沢な部屋からスタートし、
14章にわたって世界の名品がぞくぞく登場します。
そのなかの新所蔵作品の多さに、ただただ脱帽です。

会場前半に特別章として
「芸術家の肖像写真コレクション」の部屋が登場します。
この部屋が、とてもおもしろい!
その名のとおり、芸術家たちのポートレートが
87点展示されています。

美術館で作品を見る時に、
あまり気にしたことがなかった
芸術家の顔を見ることができます。
よく知っている名前の作家も、
よくよく考えたら、顔はわからない人ばかりです。
思っていた通りだったり、意外な印象だったり、
作品リスト片手に、
クイズに答える気持ちで見ていくと
とてもたのしいです。
なかなか難問で、当てられたのはわずか6人‥‥。
もう一回チャレンジしたいです。

この部屋をじっくり鑑賞してから、
展示会場を見て、はじめて気づいたことがあります。
主要作品の横の解説パネルには、
解説文とともに作家の肖像写真が入っています。
作家の肖像写真に着目していることが
解説パネルからも感じられました。

肖像写真の展示室を出てすぐに展示されていたのは、
パウル・クレー「数学的なヴィジョン」です。
淡い色合いと繊細な線、記号で校正された一枚です。

△解説パネル(部分)

作品の隣には肖像写真入りの解説パネルがあります。
展示作品の製作年とほぼ同時期のお写真ですが、
クレーさん。思ってたイメージと全然違いました。
もっと、線の細い青年が描いていると思っていたので、
びっくりしました。

教科書に登場する画家や彫刻家は雲の上の人で
自分とは全く違う世界で
生きてるような気がしていましたが、
こうして顔を見ることで
あたりまえのことですが、
自分と同じく本当に生きてた人なんだ、
ということがわかって親近感が湧きました。

芸術はそのものを感じるままに楽しめばいい。
という意見もあると思います。
けれど、作家自身のことを少し知るだけで、
さらに鑑賞はたのしくなるかもしれない。
そんなことを感じた出来事でした。

近年、収集をはじめられたデュシャンのコーナー
「デュシャンとニューヨーク」の章に、
わたしの好きなジョセフ・コーネルの作品も
たくさんあって感激しました。
作品はどれも新収蔵です。

コーネルさんはアメリカの作家です。
小さい作品が多いですが、小さな世界の中に
たくさんの夢に溢れていて、好きな作家さんの一人です。
なかなか海外に行くのも難しい状況が続く中、
日本で観れる作品が増えることはとてもうれしいです。

△ジョセフ・コーネルの作品展示風景

今回の出品作のひとつ
「無題(今から5万年後)」が
私はとても気に入りました。
北斗七星がそれぞれの星の動きにより、
5万年後にどんな形になるかを予想したコラージュです。
今から五万年後の星のゆくえ‥‥。
いままで考えたことはありませんでした。

生涯、自宅のあるニューヨークから
出ることがなかったと言われているコーネルさんですが、
この1作からも
頭の中の世界は無限に広がっていたことを改めてしりました。

今よりずっと自分のまわりの情報が少ない時代に
生きていたコーネルさんの世界はとても広かった。
この小さい作品を見ているだけで、
物理的な距離だけが人を豊かにするのではなくて、
心の冒険でいくらでも豊かになれることを教わりました。

他にも見どころはたくさんありまして、
だいぶ長い時間美術館に滞在しました。

日本の抽象画の代表的なグループ
具体美術協会の作品を集めた「具体の絵画」の章や、
「瀧口修造と実験工房」の章に登場するミロの作品、
「アンリ・マティスの素描」に登場する孫娘の素描も
いろいろ考えることがあり、どれもすばらしい作品でした。

展示内容が多岐に渡りますし、
充実の内容の音声ガイドも無料で聞けるので、
時間に余裕を持ってお出かけになるのがおすすめです!

基本情報

STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示

会期:2021年2月13日[土] – 9月5日[日]
会場:アーティゾン美術館
休館日:月曜日(5月3日は開館)*5月11日以降の休館日、及び最新情報は公式ウェブサイトでご確認ください。
開館時間:10:00 – 18:00(毎週金曜日の夜間開館は、当面の間中止)
(入館は閉館の30分前まで)
入館料:ウェブ予約チケット1,200円、当日チケット(窓口販売)1,500円、学生無料