SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

社会のインターフェイス(前半)
囚人のジレンマ


世の中で禁煙の場所が増えてきました。
そのため「灰皿」が姿を消しつつあります。
今回は
「もしあなたが、誰かのたばこの火を消させたいのなら?」
という話です。



写真は、大型レストラン街のトイレ(大)のものです。
灰皿が撤去されたせいか、たばこをここに置いたまま
用を足す人が多いのでしょう、
焦げ、があちこちにあります・・。
防災の視点からすると、かなり危ない。

灰皿が置かれる理由は、二種類あります。
ひとつは、「タバコをすっていいですよ」という場所。
そしてもうひとつは、
「(ここから先は)タバコを消してください」というもの。
たとえばデパートの入り口などは、後者です。

禁煙になった場所からは灰皿を撤去する、というのは、
かなり正しい施策に思えます。
しかしこの焦げの多さを見て、
必ずしもそうとはかぎらないような気がしてきたわけです。

☆ ☆

私の携わっているソフトウェア界はちょっとかわっていて、
「人はマニュアルを読まないもの」「間違えをおかすもの」
という前提で設計がすすめられるようになってきています。
わかりやすい例でいうと、みなさんご存じの
「キャンセル」というボタンがそれにあたります。
このボタンがダイアログに
必ずつけられるようになったのは、
90年くらいからでしょうか?比較的、最近のことです。
その考え方でゆくと、
間違えて人が火をつけてしまいそうな場所には、
「それまでの慣習で、トイレに入ると
 たばこに火をつけてしまう人がいるにちがいない」
ということを前提として、
灰皿を置く設計を進めることになります。
でないと、とんでもなく大きい過ちが起きてしまうから。
「そんなこといったって、公衆の施設で
 たばこを吸うこと自体がまちがっている!!」
そう思う人も多いのではないでしょうか。

☆ ☆

オランダで、エイズの蔓延を防ぐための非常手段として、
路上の麻薬常習者に「新品の注射針を配布した」いうことが
ニュースとなりました。
もちろん、麻薬を打っていることそのものが悪い、
という理論で通せば
こんなことはナンセンスなのかもしれません。
でも、現実はそうもいかない。
本音と建て前が交錯するこういうケースを、
ゲーム理論では、「囚人のゲーム」と呼んだりします。
実に悩ましい部分です。
この焦げを見て、みなさんはどう思いますか?


シーマンに関する情報は こちら(www.seaman.tv)まで。

2003-02-02-SUN

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