SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

第9回 フォーマット・ホルダーの話

ゲームハードメーカーの人が自分たちのことについて
フォーマット・ホルダーという言葉を口にするのを
最近よく耳にします。
見た目は同じでも、音楽CD、DVD、セガサターン、
プレイステーション、Windows、
いろいろなCD-ROMがあります。
これらは皆、
それぞれ中身を読みだすフォーマットが異なるが、
フォーマットとはいわば文法のようなものです。
そのフォーマットの権利を有している人が
フォーマット・ホルダーです。

メディアの世界では、このフォーマットの価値は
シェアで決まってくる、という不文律があって、
一番身近な例は、これはほぼ世界共通の
フォーマットとなった音楽CDですね。
この音楽CDのフォーマット・ホルダーは
日本のソニーとオランダのPhilipsで、
音楽CDを一枚製造する際にいくら、
プレイヤーを一台製造する際にいくら、
というロイアリティを徴収する権利を
彼らは有しているのです。
ソニーが一人でMDを必死に普及させようとしているのも、
そういうことです。

ゲームの例が任天堂で、彼らはスーパーファミコン用
フォーマットのカセットを製造することで、
それが任天堂の莫大な利益となって話題になりました。
このフォーマットの覇権争いこそが、
いまインターネットの世界でしのぎを削っている
台風の目なわけです。
マイクロソフトはインターネットエクスプローラー
というソフトを無料で配って物議をかもしだしたが、
それに対抗するネットスケープ社も
同社のブラウザー製品を無料にすることを決めました。
「膨大な時間と開発費用をかけて作ったソフトを、
何がうれしくてむざむざと無料で配ってしまうんじゃ?」
人並みの商人がそう首をひねるのも無理はありません。

その答えは「標準フォーマット」
という言葉の中にあります。
やがて彼らの作ったソフトのいずれかが、
インターネット上の、さらには
情報スーパーハイウェイ時代の、
標準フォーマットとなってゆくことを
彼らは知っているのです。
しかも通信ですから市場は無限です。
フォーマットは著作権で守られているから、
シェアさえ獲得していれば、
ソフトの代金を回収する手なんて
いくらでもついてくるわけです。
とにかく今はユーザーを増やして
実質的なスタンダードになってしまうのが先決、
というわけです。


●ゲーム業界の優劣を決めた意外な要因
こんな例があります。
以前に、某メーカーの家庭用ゲーム機の中を開きました。
そのゲーム機の中は数枚の基板で構成されていたので、
ただ体がでかかったんです。
「なんで基板を一枚にしなかったのか?」
そう尋ねると、メーカーの人は、
やけに低く説得力のある声で
「CD-ROM部はソニーさんの特許だから、
この部品を他の部品と一つにしてしまうと、
全体の価格に対してロイアリティーが
発生してしまうからです」
と答えたのであります。
ソニーのプレイステーションが
小さくなれた理由を発見した思いがしました。
任天堂が最後までカセットにこだわった理由も
わかったような気がしました。

1999-04-05-MON

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