hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.31 ハワイの伝説
Pele ペレ Part1


ハイウェイや高層ビルが並ぶ今日のハワイですが、
それでもまだ、“古のハワイ”は
ひっそりとではありますが、そこここに生きています。
いまのハワイでは宗教もキリスト教がメインです。
しかし人々は、ハワイの神々がいまでも私たちを
見守ってくれていると信じています。

1959年の夏。
私の伯母が3人の友人と一緒に
ビッグ・アイランド(ハワイ島のこと)を
車で走っていたときのことでした。
ハワイ人のお婆さんがたったひとりで
ゆっくり歩いているのが伯母の目に留まりました。
ビッグ・アイランドに行ったことのある人なら
ご存知だと思いますが、
ヒロとコナというふたつの町を結ぶ道は、
何マイルも家も木もない
土と草だけが続くようなところです。

伯母は運転をしている友人に
車を止めてくれるように頼みました。
伯母はなぜか、そのお婆さんを
ずっと昔から知っているような
気がしてならなかったのです。
“もしかしたら、あのお婆さんは親戚の人かもしれない。
 そうでなくてもきっと私の知ってる人だわ”
彼女は車から降りると、
お婆さんに「どこかへ行くのでしたら乗りませんか」
と声をかけました。

お婆さんは伯母を見上げるとにっこりしました。
「いいえ、いいんですよ。
 わざわざお声をかけて下さってありがとう。
 でも、ひとつだけお願いがあります。
 ライターをいただけませんか?」
伯母は、お婆さんの意外なお願いにちょっと驚きましたが、
快くライターを手渡しました。
「お婆さん、ほんとに車に乗らなくて大丈夫ですか?」
まわりに何もないこの土地では、
どこへ行くにしても、お婆さんはかなりの距離を
歩かなければならないはずです。
伯母は心配してもう一度尋ねました。
「いいえ、いいんですよ。
 私が必要なのはこれだけです」

結局伯母は車に乗り、
お婆さんを道に残したまま出発することにしました。
でも、うまく説明できないけれど
心の中に奇妙な違和感が残りました。
彼女は振り返ってお婆さんの姿を
もう一度見ようとしました。
ところが、お婆さんの姿はどこにも見当たりません。
道の両わきには、ただ草の生えた
平らな土地が広がるばかりです。
家はもちろん、木さえ1本もないので、
隠れる場所などもありません。
そしてさらに驚いたことには、
伯母のシートの横には、
さっきお婆さんに渡したはずのライターが
ぽつんと置かれていたのでした。

そのあと伯母と友人たちが向かった場所は
カポホという、キラウエア火山のすぐふもとの町。
伯母たちがそこに滞在しているときに、
突然、火山の爆発が起こり、
周囲は大変な騒ぎとなりました。
しかも、まさに奇跡としか思えないのですが、
幸いにもカポホだけが、
流れる溶岩の被害を受けずにすんだのです。

<To be continued>

2000-09-08-FRI
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