「はだか」の作品。 アンリ・ベグランさん、福森雅武さんと、 伊賀の「土楽」で。
 
その9 Io penso che,     年齢なんてただの数字です。
糸井 今度事務所を引っ越すときは、
三浦さんに内装を頼もうと思ってるんです。
福森 それ言うたらね、
俺ね、今度、ひとりで‥‥。
糸井 隠れ家ですか?
福森 そう。西行みたいな、
なんでもええんやけど、
ちょぼっとした家を作りたいんやけど。
糸井 へえー。
聞いちゃった。
三浦 聞いちゃった。
糸井 ここから逃げて?
福森 逃げて。
一同 (笑)
福森 風呂と便所と、
ちょっとだけあったらええんや。
糸井 それからちっちゃな台所?
福森 そう。
糸井 そうすると料理の
下ごしらえしてくれる人は
どうするんですか。
福森 いや、そら、
来たいひとは来たらええね。
アンリ ぼくも泊まりに来ていいですか?
福森 いいよー。
糸井 狭いよー。
三浦 狭いよー。
アンリ ぼくは問題ないです。
糸井 若い時の下宿ってそうだったよね。
アンリ え、今もう若くないんですか?
福森 もう66だから。
アンリ 66、それは数字だけであって。
糸井 アンリとぼくと同い年なんです。
61です。
アンリ Io penso che...
福森 イオペンソケ?
ふみこ
さん
『ぼくは、こう思う』。
福森 いや、いいねぇ。
俺も言いたい。
イオペンソケ!
糸井 イオペンソケ!
アンリ イオペンソケ、ぼくたちにとっては、
「若い」「歳をとってる」
っていうのは、全然重要じゃなくて、
ここに今存在している、
その存在のかたちが重要なんです。
歳、じゃないんですよね。
もう、その存在、
今ある存在がゼロっていうことが、
ぼくたち3人にとっては
重要なことじゃないのかな。
福森 そうです、そうですよ。
アンリ 今、そういうことを考えながら生きていくと、
歳は重ねるかもしれないけど、
重ねるごとに自分の中が豊かになってるから、
もっともっと内面的に、若くなって、
どんどん歳ってことがわからなくなる。
福森 ものごとがわかる、っていうのは、
若くなるのよ。
それを表してんのが、
こういう世界なのよ。
アンリ だから何かをつくるっていうことは、
どんなちっちゃなことでも、
全身全霊を入れようと思わなくても、
自然に出てくるものだから。
福森 そう! そうなんよ。
そうなん。
自分から求めて
出てくるもんじゃないんだよ。
アンリ それがもう最高のものとして、
毎回、毎回、作られる。
福森 それは自分に与えられた仕事なんですよ。
アンリ そうですね。
福森 これ、当たり前のことを言ってんですよ。
だけどね、当たり前のことが
日本人にいま伝わらないっちゅうのは
おかしいよな。
糸井 以前、福森さんがおっしゃっていたのは、
むかしの無名の人のものにはかなわないと。
むかーしの無名の人が作ったものを、
現代の名工がつくってみせても、
届かない、って。
福森 そう。
だけどそれをね、
判断する人がいないのよ、いま。
いま「これは、そうだ」という人がおらない。
桃山時代がいいんだとか、
だれそれがいいんだとか、言いますね。
なにが、いいんだ?
俺はそう思うわけ。
糸井 「いい」とか
言われるうちはだめですね(笑)。
ふみこ
さん
ああー。
 
福森 なんで民芸ってあんなに、
おもてに出なきゃなんないんかなーと。
思うわけよ。
民芸は、表に出たら民芸じゃないんだ。
そういう悲しい問題もあるんだけど、
だけどそれをわかってる人が‥‥、
中央におらないんですよ。
いやー、
これはちょっとむつかしい問題だね。

(つづきます)
2010-09-13-MON
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN