今回は、GUEST&MEのデザインをされた
佐藤卓(さとうたく)さんにお話を伺ってきました。


佐藤卓さん

佐藤さんはロッテ・キシリトール、
RMKスキンケアシリーズ、ニッカ・ピュアモルト、
大正製薬ゼナ、明治おいしい牛乳など
私たちに身近な、数々のプロダクトデザインを
手がけられています。

ピュアモルト キシリトール RMK
クールミント カルピス グリーンガム

この中のどれかを、みなさんも一度は
手にされたことがあるのではないでしょうか?

インタビューに伺った佐藤さんのオフィスは、
壁、照明、テーブル、ドア、インターホン、
コーヒーカップ、コーヒースプーンにいたるまで
研ぎ澄まされたデザインで溢れていました。


オフィスの様子

佐藤さんご自身も髪の先まで
神経が行き届いているような存在感と清潔感があり、
それに「プロダクトデザイナー」という
カタカナの響きとオフィスの仕様が加わり、
訳もなく緊張して、
かたくなりながら挨拶を交わしました。

まず、読者のかたがたから頂いた
GUEST&MEのパッケージに対する感想をお伝えしたら、
「そんな風に思ってもらえてるんですか!うれしいっ!」
と、こちらの予想以上に無邪気に喜んでくださって、
一気に空気が和みました。

そんな佐藤さんが、きらきらした目で、
ひとつのコンセプトから、
どんな風にデザインを組み立てられていくのか、
を話してくださいました。

佐藤さんの頭の中を、ちょっと覗いた感じがしますよ。



GUEST&MEのデザインのお話をいただいて、
最初のプレゼンテーションで、豆腐を持っていきました。
プラスチックの容器に入って、
スーパーで売ってる普通の豆腐。
上に透明のフィルムがシーリングされているものが
ありますよね。
ピーッとはがして食べる。あれです。

「2週間で使い切る生タイプの石鹸」ということなので、
何か共通項を持ってるものはないかな、
と思って探しました。
ああいうパッケージって、食べ物の場合には
においが飛ばないためとか、新鮮さを保つためとか、
そういう工夫がされているじゃないですか。
そういうものを
石鹸のパッケージに持ってきたらどうかって思って
豆腐を持っていったんですね。

せっけんを使うときにピーっとあけて、
香りがプーンとしたら、
プリンとかゼリーを食べるときの行為と
だぶってくるわけですね。
そうすると、「生」で新鮮な感じが伝わるんです。

そういう体験は、みんな今までに、自分の中でしている。
だから、ぼくのやっていることは、
世の中にあるものを編集してるだけなんです。

せっけんの形も新鮮さを出すために
スパンと切ったままの形になっています。
作りこんだ形ではなくて、機械から出てくるものを
チョキチョキ切っただけのほうがよっぽどいい、
と思いました。
変に人間の手が加わってないものって
食べ物も、「いい」じゃないですか。
そのまんま、が。
土のついたじゃがいもって、なんかうまそうとか。

そういう心理を引きだすっていうことが
デザインにおいては、重要だと思うんです。
「エクスペリエンス・デザイン」っていう言葉が
世界中で使われているんですが、
みんなが自分の中に持ってる経験や体験を自然に
うまく引きだすデザインっていうのが
今、注目されています。

新しいものを提案して
無理やり覚えてくれっていうんじゃなくって、
もともと我々は習性を持っている。
それを利用してあげるデザインを考えるんです。

そうやって日常生活を見ていくとすごく面白いですよ。



ぼくのたずさわったものは、ぱっと見て
同じ人がやったとは思われないと思うんですね。
ぼくは、プロダクト(生産品)が
個性を持てばいいと思っていて、
その裏側にいるデザイナーは、生活者にとっては、
まったく関係ないものだと思っているんです。

どこのメーカーが作っているのかっていうのは、
お客さんには、すごく認識していただいて、
頭に蓄積していただきたいんですが、
誰がデザインしたかなんて関係ない。

だから、常に頭の中を真っ白にして
白紙の状態で、取り組みたいと思っています。

そのときに、自分が何をしたいかではなくて
まず自分が何をするべきなのか、を考えます。
お客さんと商品の間にいるわけですから
お客さんにその商品を翻訳をする役割をします。

「ぼくの作品」っていうのではなくて
結果として、形で、できるだけのことを
人に伝えることに徹する。

たとえば、ガム(キシリトール)で言うと、
「今回のガムは
 歯にいいと言われている甘味料が使われる」
「それがこれからのガムの中心になりそう」
とロッテの人に言われて、
それで「歯にいいガム」という画期的なコンセプトを
どうするべきなのか考えるんです。

そうすると、
歯にいいんだったら「デンタル」だなと。
「デンタル」って言うコンセプトを
「お菓子」に持ってきたんですね。
歯ブラシとか歯磨き粉とか
ああいうものの持っている、デンタルなデザインを
チューインガムに持ってきた。
あのマークは奥歯を上から見たところ、なんですよ。

さっきも言ったように、
新しいものを作っているっていうよりも
編集しているんですね。
世の中に既にあるものを、
そこに置くと伝わりやすいだろうなという、
ちょうどいいところにポンと持ってきて、
お客さまに届けるっていうことを
しているだけだと思うんです。

「デザインの解剖」(※注)
という本を出しているんですが、
デザインを細かく分析していくと、いろんな工夫の上に
ひとつの製品が成り立っているっていうことが
わかるんです。
せっけんにしても、形って色々あるわけですよね。
下が少しカーブして浮いたりしている
せっけんもありますが、
それも、それぞれの理由や考え方があるわけです。

せっけんの色ひとつにしても、
「誰か」が決めているんですね。
せっけんの剤を作る技術者が
決めていることもあるんです。
つまりデザインって、ものすごいデザインの集積で
できあがってるんですよ。
パッケージを作ってる人だけが
デザイナーじゃないってことです。



GUEST&MEのコンセプトを伺ったときに、
普段自分が、
こうあるべきじゃないかなって思ってることを
素直にやればいいんだって思ったんですね。

普段関わっているマスプロダクト(大量生産品)
の場合は、売り場の環境っていうのが
ものすごく重要視されるんです。

たとえば売り場でどう目立つか、
他社に比べてどう存在感をアピールするか、
っていうことが、まず重要なんですよ。
そこをぬきにマスプロダクトが作られることは
普通ありえません。
目立つ色だとか、大きさだとか、形だとかを
まず求められるんです。

でも今回のように、マスプロダクトではない商品が、
自分のため、自分の知っている友達のため
っていう視点で、普段の生活を基準にして
どうあってほしいか考えると、
新しいものができるんじゃないだろうかと思ったんです。

コンビニとかスーパーに並べるものじゃないもの。
今売られてるものに満足がいっていない、
自分の本当にほしいものを探している人たちに、
まずは届けばいい。
そういう場に置いていって、
わかってもらえる人だけにまず買ってもらいたい、
っていうことがGUEST&MEの背景としてあったので、
これは普段縛られている「目立たなきゃいけない」とか
「他社との差別化」をいっさい考えなくていい、と。

生活空間に置かれていること、
つまりインテリアとして考えた時には、
周囲のモノとなじむものであってほしいという
普段僕の中にある考えを実現できるなと思いました。
これは面白いぞ、と思ったんです。

(次回に続きます)

(※注)
「デザインの解剖(1)=ロッテ・キシリトールガム」
価格:¥1,800


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2001年3月から4月にかけて東京の松屋銀座で
展覧会「デザインの解剖=ロッテ・キシリトールガム」
開催されました。
日常、私たちがよく目にする大量生産品を
デザインという視点で解剖し、
商品とデザインの成り立ちを検証しようという
ユニークな試みで、好評を博した展覧会でした。
企画、構成をしたのが佐藤卓さん。
この本は、その展覧会の内容をまとめたものです。
お馴染のキシリトールガムが完全に解剖されています。

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そして、上記の展覧会のシリーズ第2弾が行われます。

『デザインの解剖(2)=フジフイルム・写ルンです』


会期:5月15日(水)6月10日(月)
会場:松屋銀座7階 デザインギャラリー1953
   tel.03-3567-1211(松屋大代表)
入場無料

今回は、「写ルンです」を取り上げます。
写真を撮った後、「写ルンです」は
返却しなければならないため、
分解して中を見ることはできません。
ここではその禁断の構造にもメスを入れることに
なります。


写ルンです解剖図

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さらに、展覧会のシリーズ第3弾も既に決まっています。

『デザインの解剖(3)=タカラ・リカちゃん』

会期:7月17日(水)8月12日(月)
会場:松屋銀座7階 デザインギャラリー1953
   tel.03-3567-1211(松屋大代表)
入場無料

リカちゃんは35年前の誕生以来、初代のリカちゃんから
現在まで5回のモデルチェンジを行ってきました。
時代の流れに合わせ、肌の色や目の彩色、
また髪の毛のバリエーション、コスチュームなど
細部に渡りさまざまな工夫が凝らされています。
その細部の秘密をデザインの視点で
解き明かしていきます。


リカちゃん解剖図

 

昨日、金魚カメラでお届けしていましたように、
発送隊が発送作業を行い、
ご注文いただいたかた800名様に、8日の夕方、
確かに発送をいたしました。
都内のかたには、9日着、
その他の地域のかたには10日着、
遅くても11日にはお届けできるはずです。
どうぞ、お待ちくださいね!

買えるお店がどんどん増えてます!

QUO
東京都目黒区大橋1-6-3
東急田園都市線 池尻大橋駅
東急東横線 地下鉄日比谷線 中目黒駅
03-5459-2391
11:00〜19:00(水曜休み)

La Maison d'Epice(代官山本店)
東京都渋谷区鉢山町15-2
東急東横線 代官山駅
JR渋谷駅南口バス停より
東急トランセ乗車 伊太利屋本社下車
03-3780-7828
11:00〜19:00(月曜休み)

La Maison d'Epice(横浜店)
神奈川県横浜市中区新港2-2-1
横浜ワールドポーターズ4F
JR根岸線・京浜東北線/東急東横線/
横浜市営地下鉄 桜木町駅
045-222-2424
10:00〜21:00(不定期月1回休み)

表参道のスパイラル2F
「スパイラルマーケット」

東京都港区南青山5−6−23 2F
地下鉄表参道駅B1出口よりすぐ。
電話は03-3498-5792
11:00〜20:00(年中無休)

南青山の骨董通りにあるインテリアショップ、
「SEMPRE」
東京都港区南青山5−13−3
骨董通りのFIK MINAMIAOYAMA Bld.1階
地下鉄表参道駅A3出口が一番近いです。
03-5464-5655
11:00〜19:00(水曜休み)

でもお買い求めになれます。
 

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2002-05-09-THU

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