ジブリの仕事のやりかた。
ハウルの動く城・公開直前の最新談話!


21
 豊かさは、物語の中にある。

糸井 今、鈴木さんと、ずっと一緒に
中日ドラゴンズと西武ライオンズの
日本シリーズを観戦してたけど……熱すぎる!

一般的にいえば、あのスタジオジブリの、
あの宮崎駿さんのプロデューサーですよ。
あれだけみんなが熱狂している作品には、
冷静にメスを入れる仕事をしている鈴木さん。
でも、これだけの中日への思いがあって……。
そういうのが、おもしろいなぁと思うんです。

鈴木さんは愛知県の出身だし、
ドラゴンズファンだっていうことは
前々から、知ってはいました。
たしか、中日スポーツを、
欠かさず読んでいるんですよね?
鈴木 ぼくがものごころついたときから
毎日読んでる新聞は、中日スポーツなんです。

東京にきてからも
ずっと中日スポーツをとっていますから、
もういままでに通算で
何回読んだかわからないぐらい、ですね。

ドラゴンズが五〇周年記念で
出した本があって、
これが中日スポーツの記事を
集めたやつなんですけど……。
やっぱり、いいんですよ。
ヒマなときに見るんですけど、
いい本なんです。
糸井 (笑)今も、中日以外のことについては、
ものすごくクールに見ている鈴木さんが、
そこまで! という場面が何度もあって。

だから、今日は、時期も時期ですし、
中日についての話をききたかったんです。
こういう話、きく機会もないけど、
する機会もあんまりないじゃないですか。
鈴木 ありません。
わずかにあるっていうのは、
名古屋にいったときだけです。
糸井 名古屋に、
同じようなファンがいるんですか?
鈴木 名古屋だと、
映画のキャンペーンその他で、
ラジオやテレビに出るじゃないですか。
そういうときにドラゴンズの話をするんです。
糸井 向こうも、水を向けるわけだ?
鈴木 いや……
向こうが水を向けなくったって、
こちらからしゃべっちゃうんです。
糸井 (笑)人間っぽくて、いいなぁ。

ぼくは、そういうところに、
ものすごく興味があるんです。

今、お金持ちの人たちが、
球団を買いますよ、とかいうじゃないですか。
あの人たち、宣伝になるとか
いろんな理由をいってるけど、
きっと「そういうこと」が好きなんですよね。
鈴木 今、仙台で、ライブドアだ、楽天だ、
っていってるじゃないですか。

そのなかで、ぼくがひとつだけ
気に入らない話があるんです。

仙台は、あまりにも
球場ロッカーがひどいから直すと……
ぼくは、今のまま、はじめてほしいんです。
どうしようもない状態からはじまっていって、
強くなってくために、
ある日、球場をきれいにすると。

やっぱり、ドラマが欲しいですよね。
糸井 つまり、それはウソなんだけど……?
鈴木 そう。ウソでもいい。
内緒で修繕したっていいんです。
糸井 それって、
外国のウィスキーの工場見学に似てる。
すごい昔ながらの樽で、
昔ながらの作りかたで、
昔のような服を着た人が見学順路で
「ホイッ、ホイッ」
と樽を運んでいたりするんだけど、
その工場はひとつまるごと、
人に見せるための工場だっていうんです。
……ほんとは奥に、近代的な工場がある。
鈴木 そういうのは、うれしいですよね!
いい話ですよ、それは。
糸井 いいですよねぇ。
鈴木 だから仙台のチームは、
最初からね、お膳立てして
きれいなところで集めてやるんじゃあ、
夢がないと思うんです。
糸井 夢があるっていうのは、
ボロのほうなんだ、と。
鈴木 そうです。ぼくはそう思います。
糸井 そのほうが、長く遊べるもんね。
鈴木 そう。遊べますよ。
それでチームが、徐々に強くなっていく……。
糸井 つまり、親に豪邸を建ててもらって、
新婚をはじめる、
みたいなことではいけないと。
鈴木 それじゃ、つまんないですもん。
しょんべんくさいぐらいで、
いいんじゃないですか?
糸井 つまり、
これからのぜいたくって、
そういうことですよね?
鈴木 みんなね、ほんとは、
ほんものなんか好きじゃないですよ。
やっぱり、ウソが好きですから。
糸井 芝居が好きですよね……。
鈴木 絶対にそうですよ。そう思います。
糸井 ほんものって、あわれなものですから。
鈴木 ええ……だって、つまんないですもの。
糸井 これは、すごく重要な部分ですよね?
鈴木 ぼくですら、物語がありますから。
十チームぐらい集まって、
草野球をやったことがあるんです。

その第一試合で、
ぼくは一番バッターでした。
で、ぼくは、はじまる前に、
ピッチャーに頼みに行ったんです。

「野球だからたのしいほうがいいでしょ?
 一球目、ストレート、どまんなか、頼む!」
そしたら、そいつがほんとにどまんなかに、
ゆるいボールを投げてくれたんです。

……フェンス、越えたんですよね。

やっぱり起こるんですよ、そういうことって。
糸井 ぼくも、喘息だった頃、
炎天下の草野球のチームに入って、
たまたま偶然、思いっきりふったら、
ほんとにフェンスを越えちゃったんです。

それ以降はまったく打てなかったんだけど、
そういうめぐりあわせ、
っていうようなことに対しては、
こう、祈りを捧げたいというか……(笑)。
鈴木 よくわかりますよ。
すごくよくわかります。

やっぱりみんな、
おもしろい物語を見たいですもの。
糸井 今の鈴木さんの仕事って、
そういうことですよね?
鈴木 この夏、
いろいろな映画が公開されましたが、
スパイダーマン2で、
ぼくはショックを受けたんです。

当然テレビで宣伝しますが、
スポットの中で、スパイダーマンが
マスクを取っちゃうんです……。
ぼくは、これは、いけないよ!
といいたくなるんです。

それは、誰だってわかっていますよ。
それでも、マスクって、
取っちゃいけないと思うんです。
ウソでもいいから、
マスクは、していてほしい──。
糸井 そうですね。
しかも、
コマーシャルの中でやっちゃったんだ。
鈴木 これは、お客さん、
見にいかないですよ、
そういうことをやっちゃったら。
糸井 つまり、
楽屋オチみたいなことをしちゃったわけだ。
鈴木 そうなんです。

ただそれがヒントになって、
ぼくらが今度公開する
『ハウルの動く城』という作品では
ほとんど情報を出していません。
テレビでもなんでも
主人公のおばあちゃんの絵しか
出ていないでしょう?

いつものジブリの
若い女の子がひとつも出ない。
宮さんの描いてる絵だから、出せば
いつもとおんなじ顔なんでしょうけど、
だけど、見せない。

それが大事だと思ってるんです。
  (明日に、つづきます)


感想メールはこちらへ! 件名を「ジブリの仕事」にして、
postman@1101.comまで、
ぜひ感想をくださいね!
ディア・フレンド このページを
友だちに知らせる。

2004-10-27-WED


戻る