ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-02-11-WED

夏のメルカートに向けたプロジェクト。


franco

インテルのクアレスマ選手が、
5ヶ月間のイタリアでの「冒険」ののち、
チェルシーに期限付きで移籍しました。

冒険? その通り。
でも、彼にとってというより、
インテルにとっての冒険だったと言えるでしょう。

昨年9月の初旬には、
期待に満ちたインテルのティフォーゾの集団が、
「リカルド(クアレスマ)、
 チャンピオンズをプレゼントしてくれ」と書かれた
巨大な横断幕を掲げます。
ところが2月2日の対トリノ戦で引き分けた時には、
このポルトガル人クアレスマは容赦なく野次られ、
悲しい月曜日の記憶を抱いたまま、
彼はイタリアを去って行きました。

そもそもこの選手については、
モウリーニョ監督がどうしても欲しがったので、
3千万ユーロという、ヴィエリにつぐ高額を支払って、
モラッティ会長が監督の希望を叶えたのでした。

そしてロンドンに到着したクアレスマは
「チェルシーでは、
 ぼくが偉大な選手である事を見せてやる」
と言いました。
でも、チェルシーの監督はフェリペ・スコラーリです。
彼はポルトガル代表を監督した時に、
クアレスマにはプレイさせなかったという
経歴がありますが、どうなんでしょう?

大金をはたいて選手を入手するくせに、
世界のどの国のチームより
大きな負債を背負っている、
イタリアのチームたち。
それはカルチョメルカートにおけるミステリーです。
まさにこのクアレスマの件のように、
まるで気まぐれに思える散財をして、
挙句に効果が少ないという不思議。

しかし、毎年多くの借金を埋め合わせる
ベルルスコーニやモラッティが、
会長としてついているかぎり、
この状況はあまり変らないのでしょう。

franco

ベッカムを本気で欲しがるベルルスコーニ。

ミラノのこの2チームは、
すでに昨年の夏のカルチョメルカートを、
本質的に期待はずれなものにしました。

たとえばベルルスコーニは
ロナウジーニョに夢中になって購入し、
シェフチェンコを強く望んで呼び戻しました。
もちろん、彼らは2人ともバロン・ドール選手であり、
素晴らしいキャリアを持っているのは事実です。

ところがシェフチェンコは、
3年前に彼が去った頃のACミランとの違いを感じ、
現在のチームになじめずにいます。
一方でロナウジーニョは、
最初は簡単すぎるくらいに情熱かきたて、
宿敵インテルとのミラノ・ダービーでは、
勝利のゴールも入れました。

現在のロナウジーニョはといえば、
これが危機的状況の中にいます。
カカがマンチェスター・シティーの申し出に応じず、
ACミランに残ることで、
自身ののポジションの保証を得たのです。
そのポジションでのプレイは
ロナウジーニョの存在と相容れません。
つまり、ロナウジーニョの動きに合わせるのではなく、
カカ本来のプレイのしやすいポジションという意味です。

そこへベッカムがやって来たことで、
ロナウジーニョの出番はいよいよ減って、
最近の試合では彼はベンチにいます。

ベッカムは、ACミランにとってのサプライズでした。
どうせ、来るというためだけにイタリアに来て、
彼自身の宣伝をするだけだろうと思われましたが、
彼は、結局みんなを納得させました。

たしかに彼のミラノでの滞在は、
夫人とともにモデルとして、
アルマーニとの新記録な金額の契約を結ぶという、
経済面での動きが目を引きましたが、
それ以上に、ピッチに立った彼の効率は、
単に良いというレベルを
はるかに上回っていました。

これを見たベルルスコーニ会長は、
ベッカムの3月までの借り入れ契約を
本当の決定的な契約に変更するために、
ロスアンジェルスのギャラクシーと交渉しろ、
という命令を出しています。

イタリア首相でもあるベルルスコーニは、
自分のチームをより素晴らしくするためのチャンスを、
逃しません。
「我々は長い間、世界一有名で強いチームだった。
 そこに戻ろうではないか」と
言っております。

本当に実現できるのかも知れませんが、
ACミランのティフォーゾたちは、
このチームがスクデットを取れないでいる数年を、
あまりに長いと感じています。
まあベッカムがいれば、
返り咲きの実現は、より早く、より確かでしょう。

インテルの欲しがる選手は‥‥。

マッシモ・モラッティ会長のインテルは、
クアレスマに使ったお金が
捨てたようなものだったとしても、
まだ問題が少ない方です。

「スクデットの四連覇は実現するだろうが、
 うちの本当の標的はUEFAチャンピオンズ・リーグだ」
と、モラッティ会長は言います。

モウリーニョ監督も、
UEFAチャンピオンズ・リーグ優勝のために
自分が雇われたことは、重々承知です。
ただ、準々決勝戦の相手に、
世界一のチームであるマンチェスターUが
当たってしまいましたから、
乗りこえ難い絶壁に
道をはばまれたような気持でしょう。

そうこうする間も、
この夏のメルカートに向けたプロジェクトの数々が、
すでに出そろっています。

インテルが欲しいのは
ドログバ、アグエロ、エッシャンで、
ACミランはカルヴァーリョ、
ベンゼマに注目‥‥などなど。

franco

この夏のカルチョメルカートも、
大きな夢たくさん見させてくれるでしょうか。


訳者のひとこと

アメリカのギャラクシー側は、今のところ、
ベッカムは渡さないと言っているようですね。

ただ、ベルルスコーニのことですから、
欲しいとなった時の集中力は並みではありません。
どうなりますことやら‥‥。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



まえへ
最新のページへ
つぎへ