ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。
2008-06-17-TUE
リモンチェッロのつくり方。

きょうは、金色に輝くリキュール、
リモンチェッロのお話です。

ここ数年のイタリアでは、リモンチェッロが、
食前酒としてのベルモットや、
イタリア人の食後の習慣であるエスプレッソに替わる
飲み物になりつつあります。
色の美しさ、地中海の香り、
ほどよいアルコール分などが
人々の心をつかんでいるのです。

リモンチェッロが生まれたのはナポリの近く、
ソレント、アマルフィ、カプリのあたりです。
通説では、1900年初頭にカプリの小さな宿で
産声を上げたと言われています。
当時、その宿では
マリア・アントニア・ファラーチェという婦人が、
レモンとオレンジのたくましく育つ庭を世話していました。
そして、その小さな宿の小さなバールでは、
お祖母さんのレシピによって作られた
レモンのリキュールが名物でした。
これがリモンチェッロが公に世に出た
最初の場所だったというのです。

ただ、「発祥の地」ということでは、
アマルフィでもソレントでも
「うちが最初だ」と言っているようです。
確かに、より美味しいリモンチェッロ作りで大切なのは、
「ソレント産のレモン」を使うということです。
ソレントのレモンは大きく、
皮も厚ぼったくざらざらしており、
普通のレモンと違うのが一目で分かります。

franco

リモンチェッロがヒットした理由のひとつに、
どの家庭でも作れるということがあります。
ただし、純粋アルコールと、砂糖と、
ソレント産のレモンさえあれば。
(編註:日本では純粋アルコールを
 一般的に入手することはできません)

その「本物のソレントのレモン」は、
どこでも入手できるというわけではありませんが、
大切なのは、化学的な処置がされていないことです。
そうでないと、そのリモンチェッロの仕上がりは、
まずくて飲めないということになります。

酒造所の人のような気分で、
家でリモンチェッロを作るのは素敵で、
なんだか刺激的です。
友人たちを招いてパーティーをして、
食後にコレを出したら盛り上がるだろうな、などと
想像するのも楽しいものですし、
自分自身も気持ちがウキウキしますよ。
だって、今やリモンチェッロは
酒店などですぐに買えますから、
わざわざ自宅で作る人は、
ミラノにはそう多くありませんからね。

仕込むビンを選ぶのも楽しみのひとつです。
できるだけ500mlより小さいビン、
それも「色付きガラス」のものではなく
できるだけ「透明」なガラス製を選ぶのがコツです。
リモンチェッロの、まるで年月を重ねた黄金のような
独特の黄色を眺めては、ウキウキできますからね。
ビンの形も自分のお気に入りが見つかれば、
もっと楽しいでしょう。

franco

家に人を招いた時だけではなく、
友人たちの誕生日やクリスマスなど、
あらかじめプレゼントにするためのボトルも、
ぼくは用意しました。
クリスマスは冬で、リモンチェッロは
夏向きの飲み物ではありますが、
金色はクリスマス・カラーのひとつですから、
よしとしましょうか。

リモンチェッロを食前酒にする時は、
普通の大きさのグラスに注ぎ、
レモンかオレンジ一切れと氷を足し、
炭酸水を少し注いで混ぜます。
ガブ飲みしてはいけません。
いとおしむように、少しずついただきます。

食後酒には、キンキンに冷やしたリモンチェッロを、
そのまま小さなリキュールグラスでいただくのが
良いでしょう。
食後にエスプレッソ替わりに飲めば
消化を助けてくれますし、
禁煙したい人にも、もってこいです。
というのは、イタリアでは、食後やコーヒーの後に
タバコを吸う人が、まだまだ多いのですけれど、
小さなグラスでリモンチェッロをキュッと飲めば、
タバコは良くないな、わかってるんだけどねと、
ちょっと後ろめたい気持ちで吸うタバコを、
何本かは節約させてくれるでしょう。

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フランコ流レシピのご紹介。

では最後にフランコ流レシピのご紹介です。
「帰れソレントへ」を口ずさみながら、まいりましょう。

材料
ソレント産レモン 大7〜8個(皮のみ)
アルコール 純度95%以上 1リットル
ミネラルウォーター 1リットル
砂糖 800グラム

材料のレモンは、皮をアルコールに漬け込むので
無農薬栽培のものが良いでしょう。
使用する前に、ぬるま湯で、
たわしを使いながら汚れを落とします。
ワックスが使用されているようなら、
念入りに洗いましょう。

作り方
レモンの皮をできるだけ薄く剥いて、
果肉との間の白い部分もできるだけ取り除きます。

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この部分が入ると、出来上がりが苦くなるので。
果肉も入れたくなりますが、
絶対に入れてはいけません。
果肉は別にとっておいてください。

密閉できるビンに、用意したレモンの皮と、
アルコールを入れ、
1週間から10日冷暗所に保管します。

franco

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レモンの皮から、天然の色素と香りが
アルコールにとけ込んで、
レモンの皮が白くなったら、取り出します。

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ミネラルウォーターに砂糖全量を加え、
砂糖が溶けるまで鍋などで加熱します。
この場合、沸騰させなくても、
80度前後で砂糖が溶けますので、
白濁した砂糖水が、透明になればOKです。

10分ほど、砂糖水を冷ましたら、
一気にレモンアルコールに加えます。
すぐに白濁して、リモンチェッロの完成です。

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可愛い瓶などに小分けして、冷凍庫へ。
この状態でもアルコール分が40%以上ありますので、
凍りません。
キンキンに冷えたのが美味しいのです。

甘くて飲み口がいいのですが、飲み過ぎると
一気に酔いが回りますので、お気をつけて。

レモンの果肉は、白い部分を取って、
一口大に切り、小分けして、冷凍庫に保存を。
夏場の暑い日に、冷凍果肉と
ミネラルウォーター、砂糖(ガムシロップ)や
お好みで蜂蜜を入れてミキサーにかけると、
天然ビタミンたっぷりの
美味しいレモンジュースが楽しめます。

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また、オレンジ(アランチャ)を使用して
同じレシピで作るアランチェッロも、
お試しください。



訳者のひとこと

イタリアの食後酒といえばグラッパが有名ですが、
こちらはかなりガツンと来ますから、
アルコールに強い人でないとつらいです。
リモンチェッロも口当たりは大変甘いのですが、
それに色と香りが良いので、
ついついクィッと行きたくなるのですが、
アルコール度数はかなりなものです。
手作りではないでしょうが、
日本のイタリアン・レストランでも
用意してある店が多いと思いますので、
まずはそのあたりでお試しくださいませ〜。


confetti


翻訳/イラスト=酒井うらら



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