フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イタリアサッカーの2大スター。

イブラヒモヴィッチとカカといえば、
いまやイタリアサッカーを代表する
スター選手ですが、
このふたりが対決することになりました。
とはいっても、インテルとACミランの、
それぞれのユニフォームのもとに
ピッチ上で対決するのではなく、
まず新聞上で、
つぎに銀行の預金額で。

いったいどういう対決なのでしょうか?

franco
▲「決闘 イブラ、カカを上回る」
 (決闘という単語duelloのeがユーロマークになっていて、
  お金の絡んだ決闘であることが解ります)

お金じゃないって言われても‥‥。

まずイブラヒモヴィッチですが、
彼はルチアーノ・モッジと
長い付き合いがあります。
モッジは、1年半ほど前に
イタリアサッカーを動転させた
スキャンダルの中心人物です。
モッジが仕切っていたユヴェントスは、
彼が中心となってしかけた
買収スキャンダルのせいで、
昨年はセリエBに降格されました。

franco

まさにこのモッジこそが2004年夏に、
イブラヒモヴィッチをアヤックスから
ユヴェントスに引っ張ってきた人物です。
イブラヒモヴィッチがインテルにいる現在も、
モッジはよくミラノに彼を訪ねています。
彼らの会談のひとつは
インタビューとして報道され、
この中でイブラヒモヴィッチは、とても正直に、
自分の気持ちを語りました。
インテルにはお金のために残った、と。

「ぼくはプロフェッショナルです。
 そして、インテルが世界中のどのチームより
 多額の支払いをしてくれるかぎり、
 ぼくはインテルに残ります。
 ぼくはお金のためにプレイするし、
 お金を支払ってくれるチームのために、
 いつもぼくの精一杯を提供します」と。

満足そうな表情のモッジの前での
この告白は、サッカー界のロマンティストたちを
憤慨させました。
彼らは、選手というものは
ユニフォームやティフォーゾたちや、
その他もろもろの「愛」のために闘うのだと、
なぜかは分かりませんが、
そう思いこんでいますから。

そしてその後日、
イブラヒモヴィッチの発言を受けてカカが
「ぼくはACミランでプレイするためなら
 減給もいとわない」
と明言しました。

franco

本当のところは、その数日前、
ラツィオのティフォーゾが警官の発砲で
死亡した事件が起きた時に、
「イタリアは暴力の国になってしまったから
 イタリアを去るかもしれない」と、
カカ自身が述べています。

イタリア代表チーム、アズーリの
ディフェンサーであるパヌッチは、
カカの「減俸もいとわない」という
発言にたいして、
彼にはもうこれ以上の金をやらないでいい、
それでも彼はイタリアにとどまるでしょう、
見ていてごらんなさいと、すぐに反撃しました。

「これ以上の金をやらないでいい」
という意味は、実はACミランはすでに、
数年前からカカに言いよっている
レアル・マドリードに彼を行かせないために、
記録的な契約金を提供しているのです。
広告のためにスポンサーが支払うものは
計算に入れずに、
チームとの契約のみを見ても、
年俸900万ユーロという額は
カカを世界一報酬の高い選手にしました。

ですから、ひとたび巨額の契約が成立した後に、
ACミランに残れるのは嬉しいとか、
もっと金額が少なくても
残ったろうなど言われても、
あまりにイージーすぎるというわけです。

イブラヒモヴィッチの友人である
ルチアーノ・モッジは、
カカの発言を即座に
「宣伝ねらい以外の何ものでもない」
と決めつけました。
ちなみに、サッカー界での資格を剥奪された
モッジですが、
最近“Un calcio nel cuore”
(心の中のサッカー)という本を出版しました。

franco

そしてモッジの友人であるイブラヒモヴィッチは、
カカが年俸900万ユーロをキープしたと
知った時点で、
彼の所属するインテル会長の
モラッティのもとへ行き、
「ぼくはあのブラジル人より優秀ですから、
 もっと報酬を受けたいと思います」
と言いました。

モラッティはすぐに彼を満足させました。
いまやイブラヒモヴィッチは
年俸1千万ユーロを獲得し、
世界一報酬が高いと言われたカカとの対決に、
10対9で勝利したのです。

でも、まだこの話は終わりません。
敗れたかに見えるカカですが、
ここ数日のうちにバロン・ドールを受けます。
そうなれば彼はACミランの
ベルルスコーニ会長のところへ行き、
自分はイブラヒモヴィッチより優秀なので、
さらに給金を上げるべきだと言うでしょう。

こうした巨額の金銭が動く一方で、
イタリアサッカーが借金まみれだというのは
いったいどういうわけだと首をひねる人もおりますが、
チームに大金を使えるのはこの二人の会長だけですから、
この決闘はベルルスコーニとモラッティの対決とも
言えるということですね。

franco

訳者のひとこと

モッジさんの本のタイトルは
"Un calcio nel cuore" です。
全く別人の別の本で
"Un calcio al cuore" というのがありますので、
原書を取り寄せて読んでみたいかたは、
ご注意くださいませ。
(じつはフランコさんも記事の中で
 混同なさったようです。
 でも、それはここだけの秘密)

翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-11-27-TUE

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