フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

地面に倒れたディーダ ── その真相。

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ぼくはほんとうにいつも不思議に思うのです。
世界のチャンピオン、アズーリを擁し、
ACミランというヨーロッパのクラブチャンピオンもいる
イタリアのサッカーが、
こんなふうにあらゆる種類の醜態を
集めることができるなんて。

昨年は、ACミラン、ユヴェントス、フィオレンティーナが
審判を買収、または買収しようとして
裁かれる事件がありました。
サンプドーリアのフラーチ選手のように
賭博によって出場停止処分を受けた選手もありました。
ボリエッロ選手を巻き込んだ
ドーピングスキャンンダルもありました。
ちなみにボリエッロ選手は、出場停止処分が明けてすぐ、
ACミランからサンプドーリアに売り渡されました。

そんななか、最新のスキャンダルです。
10月3日にグラスゴーで行われた
チャンピオンズ・リーグの
セルティック対ACミランの試合中に起きた事件。
きっと日本でも報道されたことでしょう‥‥。

ティフォーゾが乱入、そして‥‥。

まず、ことの次第を確認いたしますが、
その衝撃的なシーンは、92分、
試合終了の笛の鳴る数秒前に起きました。

ACミランが対戦していたセルティックには
中村俊輔選手がいますね。
彼は後半の終わり近くに登場し、
彼のプレイのいくつかがセルティックを2対1に導いた時、
ひとりのセルティックのティフォーゾ、
あきらかに酔っぱらっていたティフォーゾが、
ピッチに乱入しました。

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セルティックの選手たちは、
ヨーロッパチャンピオンACミランを
2対1で下すことになるであろうゴールの快挙に、
お祭り騒ぎをしておりました。
乱入したティフォーゾは
彼らに混じって彼らと抱き合いたかったのでしょう、
ピッチを横切り、
たったいま負けのゴールを入れられたACミランの
ゴールキーパー、ディーダの前に進みました。
そのティフォーゾは、ご機嫌なまま、ふとディーダを見つめ、
片手で彼の顔をなでると、彼のアイドルである
セルティックの選手たちの方へ走っていきました。

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ディーダは一瞬おどろいて止まり、それから
彼を追いかけようとして2、3歩進んだところで、
まるで稲妻にうたれたかのように地面に倒れこみました。

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ディーダは頭を抱えこんでおり、
助けを呼び求めて叫んでいました。
これには全員が驚き、
ACミランのドクターが駆け寄って、
彼を担架でピッチから出すように命じました。

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その結果、ACミランのキーパーとして
オーストラリア人のカラク選手が入りましたが、
試合は2対1でセルティックが勝利しました。

これが10月3日に起きた事件のあらましです。

UEFA本部は、
ディーダの出場停止を決めた。

ぶざまに地面に倒れたディーダの映像は
すぐに世界に知れ渡り、
UEFAは調査を開始することにしました。
はたしてディーダは本当にひどく殴られたのだろうか、
負けそうだった試合を何とか勝ちにもちこもうとして、
セルティック側のティフォーゾの乱入を
とっさに利用しようと策略したのではないか、
そのことの真偽を確かめる調査です。

その審議は10月11日木曜日に、
スイスのUEFA本部でおこなわれ、
判決はディーダに2日間の出場停止というものでした。
彼の行動は誠実さと公正さに欠けていたと
見なされたわけです。

つまりセルティックのティフォーゾは
彼の顔をなでただけでしたが、
彼は乱暴に殴られたふりをしたのです。

ディーダの2日間の出場停止処分‥‥
これで、イタリアサッカーの醜態コレクションに、
またひとつ最悪な姿が加えられました。
スポーツ精神はどこへ行ってしまったのでしょう。
もうあまりに長いこと見失っています。
イタリアサッカーは早晩、
スポーツ精神を取り戻すべきだと
ぼくは思うのですが。

dida


訳者のひとこと

この試合のリポートが来ないなと思っていたら、
フランコさんは事件の結末を
待っていらしたのですね。

う〜ん、ディフェンディングチャンピオン、
やってしまいましたね。
たったひとりの選手のとっさの出来心が、
チーム全体を傷つけるのは残念ですが。

翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-10-16-TUE

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