フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

フランコのシチリア案内。


1年ぶりのシチリアに到着しました。
あのころよりもっと、この上なく美しいと思いました。

イタリアには多くの州があり、
それぞれの州に特長があります。
芸術、自然、想像力ゆたかな料理、
海、そして夏には灼熱からの避難場所となる山々などが、
それぞれの場所で調和し、共存しています。

そんななかで、シチリアはとくに個性的なところです。
ここに似た場所はどこにもありません。
シチリア文化は古代文明に基づき、
ギリシャからアラビアまで、
入れ替わりこの地を治めていった異なる民族の
全く異なる文化が混じり合い、融合して、
「シチリア」というひとつの文化を作ったのです。
ここでは美しさにおいても、時の流れにおいても、
どこからどこが何といった境界線や優劣は無く、
みごとに解け合って、
独自の美しさを完成させているのです。

世界遺産にも登録されているノートは、
太陽に焦がされてしまったような街です。
まるで敵意むき出しな岸壁にしがみつくようにして、
この街があります。

ここの大聖堂、つまり街で一番重要なキリスト教会は、
ヨーロッパで唯一のバロック様式の原形であり、
まるでアフリカなみの暑さを生き抜くために、
あえてこう作られている真っ白な壁の家々は、
時の流れと空気中に軽々と吊るされて
浮かんでいるように見えます。

この街のカフェ・シチリアは、そのお菓子や、
イタリア式かき氷グラニータの素晴らしさで有名です。

なかでも美味しいのは、
レモン味、オレンジ味、バジリコ味、
そしてアーモンド味のもの。

自然が贈ってくれるものの全て、
色や風味や香りなど抵抗できずに
手が出てしまうもの全てを、
砂糖と混ぜこんでなじませてあるお菓子‥‥
たとえばサフランと白胡椒入りの
ベルガモットのケーキなど、
だれもことわりきれない誘惑です。
これを食べて、
もしコレステロール値が上がってしまったら?
それでもしかたありません。
舌と咽の悦楽という罪を犯してもしかたない、
それも人生です。

ノートにあるカフェ・シチリアのグラニータのことは、
世界中のグルメたちの半数が知っていて、絶賛するとして、
もう少し庶民的なジェラート屋が
フォンターネ・ビアンケという所にあります。
サンティーノといって、
約60年前に店を開いたジェラート屋です。
ここの桑の実のグラニータはシチリアで一番です。
値段がひかえめなので、より美味しく感じられます。

トラディショナルなグルメにとって、
モディカという街への訪問は外せません。
ここで作られるチョコレートは、
アステカの古いレシピに由来する
「ミルクを混ぜないチョコレート」で、
300年以上も前にメキシコから直接伝えられました。

モディカの有名なチョコレート屋
ボナユートのチョコレートは、
近ごろでは日本へも輸出され、
ジョルナーレ・ディ・シチリア紙が
「雅子妃殿下もモディカのチョコレートを評価なさった」
という記事を発表しました。

チョコレートとペペロンチーノ(赤唐辛子)、
チョコレートと塩、チョコレートとシナモンなどは、
大成功を納めた組合わせです。
シチリアのエトナ火山のランポーネ(木いちご)、
砂糖付けのタバコの葉、カカオ、
シナモンで作られたケーキは、
最近、イタリアの年間最優秀スイーツ賞を獲得しました。

シチリアはドルチェ(スイーツ)だけの地ではありません。
新鮮な魚、野菜、そして有名なパキーノのトマトがあります。


海辺のレストランに腰をおろせば、
人生の素晴らしさを感じさせてくれる喜びが、
そこにあります。
別に有名ではなくても小さな店でも良いのです。
目の前の浅くて清潔でなんの危険もない海では、
子どもたちがのびのびと遊んでいる、
そんな風景もご馳走のうちです。


さて、なにをいただきましょうか‥‥
前菜はナス、それから
カジキマグロの切り身にはパキーノ・トマトを添えて、
マグロの薫製、そして、いろいろな野菜...
なにをとっても「天国の味」を
いただいているように思えます。

シラクサはアルキメデスの住んでいた街で、
もっとも重要な寺院はギリシャの美の神アポロのものです。

そして「美」はシチリアのトータルなシンボルです。
でもアポロだけでなく、まちがいなく多くの神々から
シチリアの地は祝福されていると、ぼくは思います。



訳者のひとこと
はぁ〜〜〜、いつか行きたいですねぇ。

でも、その前に、
「地球温暖化」でこの美しい地球が
壊れてしまわないように、
さしあたって私もエコライフを
めざすことにいたします。

ところでトマトの写真ですが
「ポモドーリ・パキーニ」
という品種だそうです。
ポモドーリはポモドーロ(トマト)の
複数形です。
ポモドーロは直訳すると「金のリンゴ」、
トマトの原種は「黄金色」だったのでしょう。
あまりの美味しさから、
この「ポモドーリ・パキーニ」、
最近日本からの買い付けが多く
買い付けでは飽きたらずに、
種を輸入して、日本でも
栽培されることになったそうです。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-07-31-TUE

BACK
戻る