フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

各チームがほしがっているトーニの将来。


“彼”は2006年のメルカートでは、
偉大な主役のひとりでした。
イタリア代表アズーリのメンバーとして
ドイツW杯で優勝し、
世界チャンピオンになったばかりの“彼”に、
フィオレンティーナで稼いでいた額の2倍を、
インテルが提示していました。
その移籍は成立するかに思われました。
“彼”はシャツをインテルに着替えて、
UEFAチャンピオンズ・リーグでプレイしたかったのです。
しかし、TOD'Sのオーナーであり
フィオレンティーナの会長の企業家デッラ・ヴァッレは、
契約にしたがってフィオレンティーナに残ることを
“彼”に命じました。
それから約1年が過ぎた今──、
“彼”の移籍話が、
お約束のようにまた蒸し返されています。

“彼”、それはルーカ・トーニ。
フィオレンティーナのシャツを着て、
怒濤のゴールを入れつづけ、
インテル、ユヴェントス、ACミラン、
バイエルン・ミュンヘンら、
ゴールについての問題を解決せねばならないチームが、
あらたに彼の名前をめがけて殺到しています。

クリスティーズのオークションか?
というくらいに上げられる価値。


3月28日に、イタリア代表のアズーリは
スコットランド代表とデリケートな対戦をしました。
アズーリはユーロ08の予選を勝ち進むために、
勝利の3ポイントを得る必要があったのです。
アズーリのドナドーニ監督は、
ルーカ・トーニの志気が高められるように
チームを組み立てる決断をし、
その期待は裏切られませんでした。
ルーカ・トーニは2ゴールをヘッドで決め、
それがスコットランドを打ち負かす決定打となり、
同時に、彼が次のカルチョ・メルカートの
方向を決める男として、
再び脚光をあびることになったのです。

ロナウジーニョは
日ごとにACミランに近寄っています。
そしてベルルスコーニ会長は、
彼を手に入れるためなら途方も無いことをする
用意がある上に、
このイタリア前首相が
ロナウジーニョという別格選手を
バルセロナからかすめとって契約することに、
イタリアでは誰も対抗できないように思えます。

ルーカ・トーニ獲得に関しては
完全な競争が始まっています。
ほとんどクリスティーズにかけられたゴッホや
ダ・ヴィンチの絵のように、
彼の値段が日ごとに上がっているのを見て、
フィオレンティーナもチームの益になると気付いた時、
競売の幕が、
いよいよ切って落とされることになるでしょう。


インテルのスクデット獲得は、
もはやほぼ確実です。
1908年に創立されたこのチームが、
来年100周年をむかえるにあたって、
モラッティ会長は、
ヘッドが大得意で、しかし足でも優秀な、
身長196cmという巨大フォワード選手である
ルーカ・トーニを、ティフォーゾたちにも
自分にもプレゼントしたいはずです。

永遠のライバルどうしであるインテルとACミランは、
いつも近い状況にあるように見えますから、
ACミランが将来的にロナウジーニョ弾を獲得できた場合に、
インテルにとってのトーニ獲得は、
それに応酬する理想的な道でしょう。

そのACミランも、
じつはトーニを獲得したがっています。
トーニ、ロナウジーニョ、カカをレギュラー登録し、
ロナウジーニョとトーニを組ませることは、
ACミランの思い描く夢の攻撃体勢です。

もちろんほかのチームも
競ってトーニをほしがっている。


さて、セリエB降格の災難なシーズンを送り、
すぐにも最高のレベルに戻りたいユヴェントスですが、
その再生プロジェクトにトーニ獲得が含まれています。
ユーべは、トレセゲとの交換を考えています。

トーニには海外からの要望も来ています。
バイエルン・ミュンヘンは、
彼のために2000万ユーロ払う用意があるようです。

そして、フィオレンティーナ自身も、
次期のUEFAチャンピオンズ・リーグ予選に
ねらいを定めるためには、
彼を確保しておきたいでしょう。

そういうわけで、
ルーカ・トーニのサッカー的将来がどうなるのか、
トーニ本人も分からないほど、
事態は混沌として定まらない状況です。

でも、彼の経済的将来がどうなるかは、
彼は良く知っています。
来期には、最低でも現在の3倍以上である
500万ユーロを稼ぐことになるでしょう。

幸せは金銭だけでは買えないのも事実ですが、
金銭がトーニに「幸せな気分」を
与えることができるのも、確かです。


訳者のひとこと
UEFAチャンピオンズ・リーグに
出場できるかどうかは、
本人の出来よりチーム全体の力がないと‥‥
ということを実感させられる話ですね。

インテル、ACミラン、ユヴェントス、
3者揃い踏みのセリエAが戻って来るのは
楽しみですが、
その前のメルカート戦もすごそう。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-04-03-TUE

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