フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

なぜ、オリヴェイラが選ばれたのか。




8月31日の19時、夢の数々が幕を閉じました。
まるで夜明けに人が目覚め、
昨夜見たことと現実との大きな違いに気付く時のように‥‥
そう、メルカートが終了いたしました。

メルカートは、夢や希望を与えてくれます。
今後の予定をたてるのにも役立ちます。
そして、しばしば夢や空想が
現実よりも優位にたつイタリアでは、
ティフォーゾたちが最後まで夢を見続けました。

でも、ACミランのティフォーゾたちは、
目覚めが酷く悪かったことでしょう。
短時間のうちに膨らみに膨らんだ
ロナウド獲得の夢はやぶれ、
最後日には、このブラジルのチャンピオンは
永遠のライバルである
インテルに行くのではないかという恐怖さえ、
彼らを苦しめました。

ロナウドがどこへも移動しなかった一方で、
ACミランは、ロナウドほど有名ではないにしろ
ブラジル人のオリヴェイラを、
ベティス・ディ・セヴィリアから購入しました。

シェフチェンコのチェルシーへの移籍後のACミランは、
彼の代役の問題を抱えていました。
常に注目の中心にいたがるベルルスコーニが
舞台の前面で再び脚光を浴びるべく、
偉大なチャンピオンを購入する、
そしてそれはロナウドをおいて他にはいない、と、
だれもが期待していました。

出た結果は「ロナウド獲得は完璧に失敗」でした。
そして代りに彼のポストに来たオリヴェイラは、
数年前にはブラジル代表チームからも
大きな期待を寄せられていましたが、
その後、酷い負傷をして、
しばらく目立った動きがなかった選手でした。

それで、
「なぜ、よりによってオリヴェイラなのか?
 それも1700万ユーロという高額を支払って?」
という疑問を、だれもが抱きました。

オリヴィエイラ購入で
ロナウディーニョが喜ぶ?


なぜ、オリヴェイラが選ばれたのでしょうか?

この疑問には、ACミランのオーナー会長であり
メディア王ベルルスコーニ傘下の
テレビや新聞がすぐに答を提示し、
ACミランのティフォーゾたちは
再び夢を見始めています。

その答え、ACミランのシナリオは、こうです。
まず、この契約にからむ人間関係を説明すると、
オリヴェイラの代理人、
つまり契約にサインするエージェントはアシスといい、
あのロナウディーニョと同じエージェントです。

もっと言えば、
オリヴェイラの代理人は単なる代理人ではなくて、
ロナウディーニョの兄弟なのです。

そして、ベルルスコーニによって
コントロールされているテレビや新聞は、
「このオリヴェイラ購入の裏側には大きな動機があり、
 その動機は1年後、2007年夏の
 メルカートが開かれれば明らかになることだ」
と説明して、
ACミランのティフォーゾたちをなだめました。
なにしろ永遠のライバルであるインテルが、
イブラヒモヴィッチ、グロッソ、
ヴィエイラ、クレスポなど、
チャンピオンたちを次々買ったことで、
ACミランのティフォーゾたちはカッカしていましたから。

その説明によれば、オリヴェイラ購入は、
ロナウディーニョの兄弟を喜ばせるための
最初のアクションだと言うのです。
そして来年は、現役チャンピオンの中でも
最も大物を射止めに出る、と。

アシス、つまり
オリヴェイラの代理人であり、
ロナウディーニョの兄弟は、
ACミランが1年間のうちに
ロナウディーニョ獲得を目指せるだろうと、
ベルルスコーニに直に約束したそうです。


ヴィエリの行く末。


オリヴェイラ購入が大変に高価だった一方で、
カルチョ・メルカートでは
アトランタとヴィエリの契約もありました。

ヴィエリは彼のキャリア上で、
13枚ものシャツを着替えています。
もっとも、アトランタは
彼が若い頃にプレイしていたチームですから、
出戻りの格好です。

ヴィエリが所属したことのあるチームは、
プラート、トリノ、ピサ、ラヴェンナ、ヴェネツィア、
アトランタ、ユーヴェ、アトランティコ・マドリード、
ラツィオ、インテル、モナコ、サンプドーリア、
そして再びアトランタ。
このうちサンプドーリアとは、
6月に登録された契約が
すぐ8月に取り消されましたが。

1年前にはACミランで
年俸800万ユーロでプレイしていたボーボ・ヴィエリが、
来シーズンはアトランタのシャツを着て、
イタリアサッカー最低の報酬でプレイします。
月に1500ユーロ、
これは12ヵ月前には彼が2時間で稼いだ額です‥‥。

訳者のひとこと
9月になりましたね。
激動のイタリアカンピオナート、
ひきつづきフランコさんの
熱くクールでわくわくする記事を、
みなさんと一緒に待つことにいたします。

さて、今さらですが
「ロナウジーニョ」か「ロナウディーニョ」か、
ブラジル本国では
「ロナウジーニョ」に近いそうです。
でもイタリア読みでは
「ロナウディーニョ」ですから、
イタリア通信ということで、今までも今回も
「ロナウディーニョ」と表記いたしました。
ひとこと、申し添えておきます。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-09-05-TUE

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