フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

W杯とメルカート。


W杯ドイツ大会が始まりましたね。

イタリア代表チーム、アズーリは、
4年前の対韓国戦の醜態をぬぐう望みをもって、
ドイツで闘います。
でもW杯は、どの国が世界で最も優秀かを
単に決めるだけの催しではありません。

W杯は、ひとつの晴れ舞台でもあります。
主役はティフォーゾたちに夢を見させてくれる選手たち、
ボールを華麗にあやつる彼らです。

「この選手が自分のチームの
 ユニフォームを着てくれたら!」
と、そんなふうに思うのは、
ティフォーゾばかりではありません。
いまやW杯はテレビが贈るショーの頂点と
言っても良いくらいの人気ですから、
この大会は史上最大の、全世界的で、超弩級の、
カルチョ・メルカートだとも言えるのです。
たしかにイタリア人たちは、
それぞれの選手が見せてくれるドリブルや、
華々しいゴールや、
キーパーの偉大なセービングを愛しています。
しかし本当は、彼らが「ほとんど病気」なほどに
興味を持ち、激論と希望の数々を生んでいるのは、
カルチョ・メルカートなのですね。

W杯が終わったとき、
アズーリの選手達は‥‥。


ドイツでスペクタクルを繰広げている
チャンピオンたちの多くが、
そのままメルカートの主役です。

ユヴェントスの中でも優秀な選手たちは、
目下はアズーリとしてドイツにいます。
でもW杯が終った時には?
まさにユーヴェがスキャンダルで告発された
最重要なチームですから、
W杯の後に選手たちがどこに移動することになるか、
彼らにも分かりません。
お伝えしつづけているセリエAでの
不正ゲームのスキャンダルは、
イタリアサッカーを変形させてしまうでしょう。
果てしない恥の湧く井戸で終るのか、それとも
避け難い罰則の後に、ゼロから再びスタートできる
ダイナミックな場所に変身できるでしょうか‥‥。

もしユーヴェが、
今ささやかれている可能性の通りに
セリエBに降格すれば、
優秀な選手たちはチームを移ると決断するでしょう。
セリエAで活躍していた選手にとって、
セリエBは精神的にもスポーツ的にも
はずかしいこととされていますから。
ブッフォン、トレセゲ、イブラヒモヴィッチ、
エマーソンらは、すでにメルカートに出ています。
彼らは悪びれもせず、
「Bでプレイするなんて災難の極みだ」
と言っています。


▲トレセゲ ▼エマーソン


レアル・マドリードがブッフォンを欲しがるでしょう。
インテルはヴェロンの代わりとしての
エマーソンの購入を試みています。
トレセゲはバルセロナに望まれ、
イブラヒモヴィッチについては
レアル・マドリード、インテル、ACミランの
獲得バトルになっております。

まず最初の動きが決定すれば、
残りの動きも決まってくるでしょう。

ACミランはチェルシーに移るシェフチェンコの
代わりを見つけなければなりません。
いっぽうインテルは、
来シーズンにスクデットを賭けて闘うには、
アタッカーのゾーンを手直ししなければなりません。

このミラノの2チームのうちで
イブラヒモヴィッチを獲得したチームは、
トーニへの最短の道を
ライバルである相手に譲るのではないでしょうか。

やはり不正で調査されているフィオレンティーナの
センターフォワード選手である
トーニを欲しがっているのは、
アドリアーノを捨てたくないインテルです。
トーニはフィオレンティーナで
170万ユーロもらっていますが、
インテルには(またはACミランには)500万ユーロ、
つまりフィオレンティーナで稼ぐ額の3倍を望んでいます。


▲トーニ

ただ、すべては今後のスポーツ裁判にかかっています。
ユヴェントスの他にも
フィオレンティーナ、ラツィオ、そしてACミランにも
セリエB落ちのリスクがありますから。

この結果をじっと見つめて待っているのが、
イタリア以外の国のチームです。

ACミランは調査された4チームの中では
危険が少ない方ですが、
でも予想として出ているセリエB落ちになった場合、
レアル・マドリードがカカ獲得に向けて
あらゆる手段を講じるものと思われます。
引退するジダンの替わりを立派にできる
唯一の桁外れな選手ですから。

こうした様々な思わくや混乱の中、
イタリア代表アズーリは
過去に体験したことのない精神状態で、
ドイツ大会に挑みます。

サッカー面でのイタリアにとってはW杯での勝利が、
クラブチーム界で犯された全ての罪から
身を清めることになるでしょうし、
セリエAの優秀な選手たちが彼らの愛するチームと共に
イタリアに残る道を、開いてくれるかもしれません。

でもこれも標準的なイタリア人にとって、今のところ、
「まあ、お祈りよりは少しだけ清めてくれるかな」
という感じでしょうか。

訳者のひとこと
お祈りよりはマシ‥‥ですか。
イタリアでは敬虔なクリスチャンが
減る傾向にあります。
「祈り」の力を信じる人も
減っているのが現状でしょう。
「お祈りよりはマシ」ということは、
叶う可能性が少しだけある、
でも、お祈りが叶わないのと良い勝負だ、
ということだと思います。
それくらい、
スキャンダルの中心にいるチームに
優秀な選手たちが残る可能性も、
望みがうすい‥‥と。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-06-13-TUE

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