フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

冬のメルカート──ふたつの大きな出発


更新を2週間お休みしている間に、
イタリアサッカー界では、
ふたつの大きな移籍がありました。
メルカートには数々の「行く人」と
「来る人」がともないますが、
イタリアと国外との行き来をみる限りでは、
イタリアへの到着よりも、
イタリアからの出発のほうが多かったようです。
そう、イタリア人選手たちが他国へ移っているのです。
過去にはイタリアに来る
外国人選手のほうが多かったのですが、
事態は逆転しつつあります。

ヴィエリ、モナコへ。


イタリアサッカーの2006年は、
カルチョメルカートでの、
ふたつの派手なパンチとともに始まりました。

アントニオ・カッサーノとクリスチャン・ヴィエリ、
このふたりは次期のW杯ドイツ大会で
アズーリの一員としてプレイする可能性が高いのですが、
カッサーノがローマからレアル・マドリードへ、
ヴィエリがACミランからモナコへと、
それぞれ譲渡されました。
スペインとフランスへ、
それぞれが流出するということで、
これは、もちろん大きな驚きです。

昨年の夏、
ヴィエリがインテルからACミランへ移った時も、
大論争を呼び起こしました。
そして、アズーリのアタッカーであるヴィエリの移籍を、
なんの躊躇もなく受け入れたインテルにたいする
センセーショナルな雪辱を果たすために、
彼もチームを変えたのだろうと、
だれもが、そう考えました。

ところが、逆に、
ヴィエリはACミランで成功しませんでした。
今回の彼の移籍については、
ACミランのオーナーである
シルヴィオ・ベルルスコーニ首相も、
1月9日月曜日に、テレビの人気サッカー番組
“Il Processo del lunedi”(月曜の裁判)で、
言及しています。
ベルルスコーニの説明によると、
ヴィエリは自分が6月まで
フランスのカンピオナートでプレイすることを、
ACミランに詫びたそうです。
彼の行くモナコはサッカー大国とは言えません。
モナコといえば、サッカーのチームよりも、
税金を支払わなくてよいことのほうで有名です。

要するにヴィエリは、ACミランで失敗したのです。
彼が、たそがれの大通りに
踏み込んだのではない、つまり、
彼のキャリアが終ろうと
しているのではないことを示す
数々のゴールや勇姿を、
ACミランで見せてくれるだろうと、
だれもが待っていたのですが‥‥。
それにもかかわらず
彼が人びとに分からせたのは、
彼の筋肉に残っていた“可能性”はどんどん減りつつあり、
しかも、その残された少しの力を、
次期W杯とアズーリのためにとっておきたいという、
彼の思わくでした。
そしてアズーリのマルチェッロ・リッピ監督は
彼に電話し、ドイツ行きのポストを保証していました。
「親愛なるヴィエリくん、
 きみが普通にプレイしていれば、
 アズーリのシャツは、きみのものだ」と。

ACミランには、
シェフチェンコとジラルディーノがいますから、
ヴィエリがあまり
プレイできなかったであろうことも確かです。
一方のモナコでは、
こんなにも容易に彼を手放したインテルやACミランの
判断が間違っていたことを示すための、
あらゆる可能性を、彼は手にできるでしょう。


カッサーノ、マドリードへ。


さて、もっと大きな衝撃は、
カッサーノのレアル・マドリードへの移籍でした。
その可能性については、ぼくも、ここで書きましたが、
本当に実現してしまいました。

カッサーノはインテルに行くのではないかと、
ちょっと前までは思われていたのです。
インテルのマンチーニ監督が
オーナーのマッシモ・モラッティに、
カッサーノ購入を強く頼んでいましたから。
しかしインテルの考えは、
カッサーノのローマとの契約が終了する6月を待つ、
というものでした。
契約が終了すれば、ローマに支払う金額が
節約できるからです。


ところが、素早く動いたのがレアル・マドリードです。
レアルは全てにおいて先回りし、
6月を待ちませんでした。
なぜか?
ラウルとロナウドが負傷してしまったレアルは、
すぐにもアタッカーが必要だったのです。
ローマの出したカッサーノの売却希望金額が
500万ユーロであることを知ると、
レアルは、すぐさま交渉を成立させました。

驚いたインテルも、
レアルを上回る額を提示しようとしたのですが、
時すでに遅く、カッサーノ自身も、
「ぼくが子供だったころ、
 バーリの旧市街の道でプレイしながら、
 夢見ていたのはレアル・マドリードだ。
 ぼくはスペインへ行くよ‥‥」と、
さっそくに表明していました。


この移籍は、だれも反対できませんでした。
友だちでありライバルである
フランチェスコ・トッティさえも、
こう言いました。

「カッサーノは、
 いまのローマでは居場所がないんだ。
 たくさんの幸運を祈るよ‥‥」

それは、カッサーノを情熱的に受け入れた
レアル・マドリードのティフォーゾたちも、
同様に祈るところでしょう。
でもその情熱は
カッサーノの体重が5kgオーバーしているので、
すぐにはプレイできないとわかると、
ちょっとだけ冷めてしまいましたけどね。

「太り過ぎ」に出鼻をくじかれた格好の彼は、
もっかダイエットをしています。
大好きなチョコレートを遠ざけて、
肉とサラダだけを食べているようです。
ま、大きな夢を実現させるためには、
ちょっとした犠牲は払わなくちゃね。



訳者のひとこと
文中の「税金を支払わなくてよい」モナコですが、
モナコ国籍の人は、原則として「所得税」のたぐいを
支払わなくてよいようです。
どれくらいの人数が、これに該当するのかは
調べ切れませんでした。
消費税や関税はあるようです。

みなさん、今年もフランコさんの記事を、
どうぞ、お楽しみください。
私も心をこめて翻訳いたします。
2006年が、みなさんにとって
良い1年になりますように!!
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-01-17-TUE

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