フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ロナウディーニョ、移籍か?!


自分のチームのチャンピオン級の選手を売り渡す‥‥
利益に反するようでも、実際にはよくある話です。
スペインのチームのバルセロナも、
マラドーナやロナウドなど過去の例からも分かるように、
チャンピオンたちを譲渡してきました。
そしていま、バルセロナの周辺に、
ある選手の譲渡先として、
イタリアのACミランやインテルの名が
挙がりはじめています。
何かが起きそうな──イタリア側からすると、
“期待できそうな”気配が漂って来ました。
なにしろ世界各国の代表チーム監督たちから
世界一強い選手とみなされているロナウディーニョを、
イタリアのどこかのチームが
獲得するかもしれないのですから。

100,000,000ユーロ、って?!?!


ロナウディーニョは12月に、
世界中の監督たちから構成される審査委員会から、
FIFAワールド・プレイヤー賞をもらいました。
いまや名実ともにチャンピオンとなった彼ですが、
バルセロナがパリ・サンジェルマンから買ったのは、
2年前のこと。
いま彼を売れば金銭的にも儲かりますから、
考えられないことではありません。

実際、ロナウディーニョのマネージャーである
彼のお兄さんが、数カ月前からACミランやインテルと、
弟のことで接触しているとのことです。
この「お兄さん」も、数年前にはイタリアで
プレイしていたのですが、
あまり成功しませんでした。

彼を買うには、
契約金をバルセロナに振込むだけで良いのですが、
実は、その金額には、
あらかじめ条件が付けられています。

ロナウディーニョがバルセロナと契約して
スペインに移った時、
1億ユーロを支払えば他のチームと契約する自由が
彼に与えられる、という合意がなされていたのです。
逆に言うと、1億ユーロをバルセロナに支払わなければ、
彼と契約できないということです。

1億ユーロですよ。
これは世界のサッカー史上で、
どの選手のためにも使われたことのない金額です。

バルセロナに1億ユーロ支払うほかに、
5年間の契約をするとして、
ロナウディーニョにも、少なくも、
5千万ユーロは渡すことになるでしょう。

いったいACミランやインテルは、
こんな高額が出せるんでしょうか?

ベルルスコーニは不況のイタリアをしり目に
その額を出す気なんだろうか?!


これがどうも「可能」なんです。
ベルルスコーニやモラッティの財産は数十億ユーロと
言われていますし、
彼らには、自分のチームのためなら、
動機は異なるにしても、
どんなに途方も無いことさえ
やってしまう心構えがあるのですから。

ただし、ベルルスコーニは
ACミランのオーナーであるだけでなく
イタリア政府の首相です。
そしてイタリアは現在、
底なしの不況にあえいでいます。
一国の宰相としての彼は、
ある種の行動については
気を付けなければいけません。

もしベルルスコーニが首相として
イタリア国民に犠牲を払わせているなら、
自分自身が豪勢に散財することなど論外でしょう。
贅沢でありつづけるサッカー選手のために
想像を絶する額を使うという前例を、
作って良いはずがありません。

しかし、そんな時に名案を思い付くのが、
組織の中のブレインというものです。
ベルルスコーニの会社の中には、
銀行の企業連合のことを思いついた者がいました。
この連合に、ベルルスコーニ自身の持つ
メディアステ銀行も加入しています。

そして、この連合には、ロナウディーニョの購入という
「事業」のための経済的な備えがあるというのです。
ロナウディーニョは数社のスポンサーから
高額な契約の確約を受けているに違いないですから、
彼の獲得に高額をはたいたとしても
「散財」ではないというわけです。


モラッティは関連会社をたばねて
企業戦略を隠れみのに選手を買う?!


一方で、現実的に
ロナウディーニョを買う可能性が
もっと高いのは、インテルです。
オーナーのマッシモ・モラッティは
最近の10年間で何も勝ち取っておらず、
でも誰よりも散財しているという実績があります。

彼は石油業者であり、
世界中で石油価格が例をみないほどに高騰していますから、
狂乱の限界とも言える額を支払うだけの経済力が、
もちろん彼にはあるでしょう。

そしてモラッティのインテルには、
マルコ・トロンケッティ・プロヴェーラという
副会長も控えています。
彼はゴム会社として有名なピレッリと、
イタリアで最も重要な電話会社である
テレコムのオーナーでもあります。

そしてまさにピレッリとテレコムこそが、
製品の宣伝のためにロナウディーニョと契約する
スポンサーとして、名乗りをあげています。

ピレッリは1999年に
ロナウドと数百万ユーロで契約したことがあります。
今回はロナウディーニョと、
同じように高額で契約する意向があるとのことです。

テレコムもスポンサーとして、
インテルでプレイしていた頃のバティストゥータや
カンナヴァーロと、高額な契約をしたことがあります。

もしインテルが
バルセロナに支払う1億ユーロをひねり出せれば、
ロナウディーニョもミラノに引っ越すことを
承知するに違いありません。

選手として別格の、このブラジル人は、
ナイト・スポットやディスコなどに通いつづけ、
バルセロナの夜にすっかりなじんでいるようなので、
そちらの面で、かなりの難色を示すかもしれませんが、
イタリアといえば映画にもなったように
「甘い生活」の国ですからね、
彼も納得するのではないでしょうか。

訳者のひとこと
数字が大きすぎて何回もゼロを数えました。
1億ユーロは日本円にして
138億3270万円と少し、だそうです。

数字は何がややこしいと言って、
国によって数え方が異なるからですね。
1億はイタリアでは“100百万”と数え、
10億は“1000百万”です。
私、数学は赤点組でして、
数を見ると頭がとっちらかります。
ふぅ〜。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-04-25-MON

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