フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

フラヴィオ・ブリアトーレと
フェルナンド・アロンソ。
今週はF1のお話です。



イタリア男たちの情熱をかきたてるもの、
それは「女と車」です。
これ以外だと、そう、サッカーですが、
今日は「女と車」のお話です。

美女や高級車に囲まれて暮らす人は
羨望のまなざしで見られ、
さらに尊敬までされたりします。
つい最近、フラヴィオ・ブリアトーレという55才の男が、
この羨望のまなざしを受ける男の
ナンバーワンになりました。
大金持ちで超美女たちに囲まれ、
仕事で大成功──たとえばF1の大きな賞の
数々を獲得しながら、
世界中を移動しつづけるような人びとのことを
ジェット・セッターと呼びますが、
その世界でも、目下の主役は、彼なのです。


シューマッハを見いだしたその男。


10年ちょっと前、フラヴィオ・ブリアトーレは
ベネトン・チームのジェネラル・ディレクターでした。
そして、カー・レーサーとして偉大な将来性の見込める、
ある青年を見つけました。
たぐい稀な優しさと確信をもって車を運転するこの青年は
ミハエル・シューマッハという名前でした。

ブリアトーレは若いミハエルと契約し、
ミハエルは世界一強かったベネトン・チームで
世界チャンピオンを2回勝ち取り、
ブリアトーレの信頼に答えました。

シューマッハはその後フェラーリに行き、
そこで更に5回、世界チャンピオンとなり、
今やF1の歴史上最多の勝ちを誇るドライバーですね。
マニュエル・ファンジョ、
プロスト、アイルトン・セナなど、
伝説の名ドライバーたちより多く優勝しています。

ブリアトーレは、
シューマッハが栄光と富をもとめて
フェラーリに行ってしまってからずっと、
F1に投じる若者を探し続けていました。

その間にも彼は、シャンパンやキャビアはもちろん、
世界中の最も美しい砂浜で魅力的な若い女性たちと過ごす
豪勢な暮らしをつづけていました。
世界広しといえども、こんな生活ができる男は
めったにはいません。
当然、この地上の男たちの誰もが
うらやましいと思うに違いない、
そんな暮らしぶりです。

トップ・モデルであるナオミ・キャンベルと
彼のラブ・ストーリーは、
「まっとうな結婚」という結末になるかに見えましたが、
この褐色の肌の超美女のワガママさも大変なものでした。
ブリアトーレは車のことばかり考えている、
私より車のほうが大事なのね、と言って
彼のもとを去ったそうです。

これに懲りたのか、
その後のフラヴィオ・ブリアトーレは
恋には深入りしないと決めたようです。
キャンベルの穴埋めのモデル嬢たちとは、
ちょっとの間だけ、精神的なことは抜きにして、ってね。
本当に彼にとっては「車」のほうが
「女」より大切なんですね。

ジェネラル・ディレクターのポストに
彼を呼んでくれても良さそうなものを、
一向にその気配のないフェラーリに対して、
ちょっとお返しもしなければなりません。
生半可の集中力では天下のフェラーリには勝てませんから、
本気の恋どころではないんです。

彼こそがシューマッハを見いだしたのです。
そして世界チャンピオンにしたのです。
そのシューマッハがフェラーリに行ったから、
フェラーリは20年以上の泣かず飛ばず状態から戻り、
また世界の頂点に立つことができたのです。
ブリアトーレはフェラーリのために多くの、
いや大変に多くの、働きができると思っていました。
フェラーリもその事を分かっているはずだと、
彼は思っていたことでしょう。

ところが、その召集は無かったのです。
フラヴィオ・ブリアトーレは現在、
ルノーでジェネラル・ディレクターをつとめています。
そのルノーがフェラーリに雪辱してくれるようにと、
彼は、近年まったく敵無しに思えるシューマッハを
打ち負かすドライバーを探していたのです。

ついに見いだした!
シューマッハの再来、
フェルナンド・アロンソという青年。


そして遂に、慎重に慎重をかさねた
彼のメガネにかなう青年が現れました。
10年前のシューマッハに匹敵するとも言える、
フェルナンド・アロンソです。

この24才のスペインの青年は、
まだ年間チャンピオンは獲得してはいませんが、
ブリアトーレの大きな後押しで
F1のすべりだしは絶好調です。

こうして、またF1の世界に
華々しく戻って来たブリアトーレですが、
F1レースがあるたびにドキドキと気をもみ、
感動し喜ぶ「フェラーリの人びと」と呼ばれる
多くのイタリア人たちは、
超美女たちに囲まれているブリアトーレを
うらやまないことにしました。

なぜって、
イタリア人のブリアトーレは、
イタリア人たちに最も愛される
フェラーリそのものの敵なんですから。
それに、そのうちフェラーリが
若いアロンソを買うだろうと、
「フェラーリの人びと」は思っていますから。

可哀想なブリアトーレ、
またシューマッハの時と
同じ事になるんでしょうか。
でもきっと彼は、それでも良いのです。
彼は本当に車を愛していますから、
今からしばらくの間はアロンソに
彼の夢を実現させたいだけなんです。


訳者のひとこと
UEFAチャンピオンズ・リーグの
準々決勝戦、ミラノ・ダービーの
一回戦はACミランが勝ちましたね。
フランコさんのコメントは
4強が決まったところで来るのかな?
イタリアが優勝しないと来ないかな?

車のことは私は良くわかりません。
私の性格を知っている友人には意外と言われますが、
私、運転免許を持っていないのです!

ところでイラストの
「グラスの中の指輪」の意味を。
イタリアの貴族や大金持ちの「遊び」で、
プレゼントの指輪をお酒のグラスに入れて
女性にさしだすらしいんです。
お金持ちならではの恋のかけひきですね。
女性が承知なら高価な指輪もあげる。
そのかわり君も‥‥ということ!
ミラノにいたころですが、
私がお酒に強かったので、
友だちの男の子たちから
「この娘にあれをやったら、指輪だけとられる。
 こっちが先にへべれけになるから」
と、からかわれたものでした。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-04-11-MON

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