フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ヴィエリの不調、インザーギの好調。
親友ふたりの残酷な明暗。


ボーボ・ヴィエリとフィリッポ(ピッポ)・インザーギは
ピッチの外ではとても仲良しなのですが、
所属するチームはともにミラノ市の
インテルとACミランという、ライバル同士です。
ピッチの上では敵味方ということになってしまいますね。
このふたりの明暗をわける事態が、
おなじ日にシンクロして起きてしまいました。

彼らはすでに30才を過ぎています。
もう若造とは言えません。
そして、ふたりともそれぞれに
ティフォーゾたちから愛されてきました。
ところが、その2チームのティフォーゾたちが、
それぞれ、ある選択をしました。
インテルに入れこんでいるティフォーゾたちは
ヴィエリを見捨てようとしており、
もう一方のミラニスティ(ACミランのティフォーゾ)は
インザーギを見直そうとしているのです。

一体ふたりに何が起こったのでしょう?
今日は、その話です。

ヴィエリ、暮らしも仕事も不調続き。

まず、ヴィエリの事情から話しましょう。
彼の所属するインテルは
ロベルト・マンチーニ新監督をむかえ、
チームの再生をはかりながらこのシーズンに挑んでいます。
マンチーニは、ヴィエリが数年前にラツィオいた頃の
同僚でもあります。
そしてヴィエリといえば、
ポルトガルでのヨーロッパ選手権で醜態をさらし、
このシーズンには、生まれ変わった姿を
アピールしなければならないはずでした。

マンチーニは、
カンピオナートの最初の4ゲームに彼を出場させました。
ところが、ヴィエリときたら、
1本のゴールさえ決められないのです。

そのせいもあって、インテルのオーナーである
マッシモ・モラッティへのインタビューの受け応えも、
重苦しいことになってしまいました。
9月27日月曜日の2:2の対パルマ戦の後、
モラッティはテレビで断言したのです。

「ヴィエリはプレイするコンディションではない、
 マーティンスのほうが良い」

この直後、UEFAチャンピオンズ・リーグの
ベルギーでの遠征試合のために
トレーニング中だったヴィエリは、
膝を故障しました。

ヴィエリの問題は肉体的なことだけでなく
感情面での不安定も原因しているようです。

ちょうど9月26日、
怪我をする前日に公表された
コリエレ・デッラ・セーラ紙のインタビューで、
彼はこう言っています。
「ぼくとエリザベッタ・カナリスは、
 また一緒に暮らし始めました。
 彼女とは100回も、別れたり戻ったりしているけど、
 52回はぼくのせいで
 48回は彼女のせいかな」



別れては、またもどるふたり。
どうもいけません‥‥。
しかもインテルのオーナーは彼を
チームから放り出したがっているようですし、
公私ともに続く不調に
さすがのヴィエリも壊れてしまったようです。
どんな逆境にも強く、
影響を受けないように見えるヴィエリとて、
繊細な内面をかかえる、ひとりの人間なのです。

インテル、ヴィエリ不在で勝利。

そして、彼のプライドへのとどめの一撃が、
9月29日水曜日に打ちこまれます。
インテルがブリュッセルで
UEFAチャンピオンズ・リーグの対アンデルレヒト戦に
挑むという、その日のことでした。

ヴィエリは、ひとりミラノに残りました。
理由は膝の故障でしたが、
愛の傷もなおす必要があったでしょう。

ヴィエリ不在のインテルは、
彼のライバルであるアドリアーノとマーティンスの
ふたりを主役に素晴らしいゲームを展開し、
3:1で勝利しました。

膝の故障がなくても、
マッシモ・モラッティは彼がピッチに入ることを
もう望んでいないのです。
ロベルト・マンチーニは、かつての同僚のヴィエリを
かばっているようですが、
監督といえどオーナーの意向には逆らえません。

オーナーと監督の関係も、
すでにシーズン開幕時とは、変化しています。
お互いに惚れ込みあって契約が成立したはずの、
このオーナーと監督の純愛をこわすのに、
たった数週間しかかからなかったということです。
それも、ヴィエリのことが原因で。

ですから、ヴィエリの欠場が故障のせいであるうちは、
マンチーニも少しは心おだやかでいられるでしょう。
ヴィエリは少なくも3、4週間はプレイできないと
診断されているようですが、
その後、この問題はどうなるのでしょう?

彼を捨ててはまた戻る恋人の
わがままエリザベッタ・カナリスや、
彼を望まないモラッティにはさまれて、
かつては文句なくインテルのアイドルだった
ヴィエリのこの秋は、最悪の幕開けとなりました。

インザーギ、ヴィエリをなぐさめる。

これとは対照的に、
ミラニスティ(ACミランのティフォーゾ)に
また愛されはじめているのが
ピッポ・インザーギです。
4月にちょっと顔を見せただけで、
その後ずっとなかずとばずの彼でしたが、
9月29日、インテルがヴィエリ抜きで闘ったその日、
おなじくUEFAチャンピオンズ・リーグの
対セルティック戦に挑んだACミランで、
アンチェロッティ監督が
インザーギをピッチに送り出したのです。

インザーギが長期にわたって停滞していたのは、
足首の故障のせいで、
新たな手術が必要だとも言われていました。
そんな彼がゲーム終了の少し前、
1:1の状態のときにピッチに送りだされ、
みごとに追加点となるゴールを決めたのでした。



試合の後、インザーギはヴィエリのレストランへ、
夕食をとりに行きました。

ヴィエリは友だちインザーギに賛辞をおくり、
インザーギは友だちヴィエリを、なぐさめようとしました。

ふたりがレストランを出たのは、もう深夜で、
ヴィエリは前よりもっと悲しい気持ちで、家に帰りました。
彼が、また一緒に暮らし始めた、
とても美しいけれど移り気な恋人のエリザベッタからは、
優しい言葉もキスも、もらえなかったとのことでした。



訳者のひとこと
ピッポ・インザーギがゴールを決めたのは
後半44分で、その後、なんとロスタイム延長の
46分にはアンドレア・ピルロが、
だめ押しの追加点を入れ、結果は3:1での
ACミランの勝利だったようです。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2004-10-04-MON

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