フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

二度あることは三度ある。
かわいそうなリッピの話。


イタリアのサッカーが低迷していることは、
ぼくもここで何回かふれましたが、
今やイタリアのサッカーは、
頼れそうな事には何にでも頼ろうという状況で、
こんな諺までも持ち出されています。

いまイタリアで頼りにされているのは、
最も古典的な諺で
Non c'e` due senza tre.
(3のない2は、ない)
というものです。
つまり、「2度あることは3度ある」ですね。

前例が2度あって、
人々が3度めを期待していることとは、
いったい何なのでしょうか?

アズーリ初監督の初戦敗退は
W杯優勝を意味する‥‥って???

かつて、アズーリ監督に就任してのデビュー戦で
負けてしまった人に、次のふたりがいます。
ひとりは、ヴィットリオ・ポッツォ。
1912年の対フィンランド戦で、
アズーリ監督としての初試合を3対2で負けました。
そして、エンゾ・ベアルゾット。
1977年にドイツに2対1で負けました。

ただし、アズーリ監督としてのデビュー戦では
負けたふたりですが、その後、
ポッツォは2度(1934、1938)
ベアルゾットは1度(1982)、
W杯で勝利しています。
肝心なのは、デビュー戦では負けたけれど、
W杯ではアズーリに優勝をもたらしているという点です。

これが「2度あること」のふたつの前例です。

去る8月18日水曜日、
アズーリの新監督マルチェッロ・リッピの
デビュー戦が行われました。
結果は? そう、「負け」でした。
そして、この結果を楽天的に受け止めるために、
イタリア人たちは唯一の希望を彼らの古い諺に
託そうとしているというわけなのです。
「2度あることは3度ある」
デビュー戦で負けてW杯で勝った監督が過去にふたりいる、
リッピは3人めになるだろう、ってね。

しかしですよ、リッピが負けた相手は
アイスランド代表チームです。
リッピがアズーリ監督としてのデビュー戦で
軽く勝てるようにと選ばれた相手です。
しかも親善試合でした。
アイスランドといえば、国民総数が
イタリアの一都市であるミラノの人口にも満たない
29万人ほどの、ちいさな国です。

ところが、これが凶と出ました。
過去1年間に1勝もしていないチームに、
イタリアは2対0で敗れたのです。
このアイスランド代表チームは
FIFAの順位付けでは79位であり、
おなじ順位付けでイタリア代表のアズーリは9位です。
ちなみに、日本は20位ですね。

たしかにアズーリの体勢は万全ではありませんでした。
アテネ・オリンピックに行っていたり、
負傷していたりで、
選手たちの欠けがありましたから。
でも、サッカーの伝統をもつ国であるイタリアが、
アイスランドまで行って負けてくるなんて、
あってはならない現実です。
しかも、プレイもひどいものでした。

試合前にリッピは、こう言っています。
「2006年のドイツ・W杯に勝てる確信をもって、
 アズーリと共にこの冒険を始めます」

そしてショックなことに、
彼はあっというまにこの冒険の始まりに
ミソをつけてしまいました。

やつに采配させるべきじゃない!
そうすれば勝てる?!?!

リッピはユベントスの監督時代には
多くの勝利をおさめています。
でも他のチーム、たとえばインテルでは、
彼はとことん当てはずれの監督でした。
リッピはユーべにいなければ勝てない監督であり、
それはユーべの組織が
彼のやりたいようにやらせた事がないからだと
思っている人も、じつは少なくありません。

リッピがアズーリの監督として呼ばれた時に、
彼は医療スタッフを変えるように要求し、
彼の友人たちを役職につけることを望みました。

フェデレーションは彼の要求を受け入れましたが、
対アイスランド戦の結果を見て、
リッピに権限を与えたことを後悔する声が、
さっそく上がっています。

次のアズーリの試合は、
9月4日にシチリアのパレルモで行われる
対ノルウェー戦です。
これはW杯の順位に影響する試合です。

この試合には、
マルチェッロ・リッピのアズーリは
絶対に勝たねばなりません。



マルチェッロ・リッピは、世界中の監督の中で
いちばん「いい男」だと言われています、
かがやく銀髪に青い目ですからね。
ポール・ニューマンみたいだと
言う人すらいます。



9月4日にパレルモでの対ノルウェー戦に勝った場合には、
こんなふうに言う人もあらわれるでしょう。

「もしかするとリッピは
 ポール・ニューマンよりいい男かもしれない。
 ハリウッドの俳優って、演技よりも
 サッカーのほうが得意なのかもね」
 
ハリウッドの俳優って?
サッカーのほうが得意って?

まず諺に頼ってみたりするものの、
イタリア人たちの落ちつく先は、
そんな皮肉や風刺だと思いますよ、ぼくは。


訳者のひとこと


フランコさんが送ってきてくれた新聞です。
大見出しはすっきりとひとこと
「かわいそうなリッピ」です。
すぐ下の小見出しは、
「代表チーム技能検定委員会ショックのデビュー戦
 0:2 対シンデレラ・アイスランド」
アイスランドを「シンデレラ」と形容しています。
さらにちいさく書いてあるのは
「親愛なるリッピ、険しいことになるだろう」

リッピの横にヴィエリ、デル・ピエロの記事が
ありますね。
上から順にいきましょう。
「インテル、ついにヴィエリの日」
「ユーベ、カペッロはデル・ピエロを再発見すべき」

これは「コリエレ・デッロ・スポルト」紙です。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2004-08-23-MON

BACK
戻る