フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

インテルのモラッティ会長への
日本からの手紙。
そしてモラッティがぼくに語ったこと。


7月27日の浦和レッズとの親善試合には、
やむなくチームを2つにわけて、
その一方を日本に送り込んだ
インテルのモラッティ会長が、
日本人選手をチームに導入したい意向を
語ってくれました。

日本はイタリアサッカーにとって、
新しいフロンティアなのです。
これを開拓することが
これからのイタリアサッカー界にとって
大切だと考えているのでしょう。
インテルは、そのことを理解するのが
少し遅かったようですが、でも、
今からでも遅くはないと、
仕切り直しを考えているようです。

組織のオーナーであるマッシモ・モラッティは、
日本の、あるティフォーゾたちのグループから届いた
手紙に心を動かされました。
それは、彼に渡してほしいと、
まず、ぼくに送られてきた手紙です。

日本のファンが教えた「忍耐」。

その手紙には、
27日の試合を楽しみにしていること、
遠く離れた日本にもたくさんのインテリスタがいること、
サイトでつのったメンバー150人で応援に行くこと、
モラッティの来日を期待していることなどが
書かれていました。
そして、日本の美学「忍耐」についての
とてもていねいな説明がつづきます。
苦しみ・つらさ・怒りなどを、たえしのぶ先にこそ、
本当の栄光や幸せが待っていると
日本人は信じており、それが美学であると。
新監督のマンチーニも、
はじめのころはうまくいかないかもしれないけれど、
その苦しみを乗り越えてこそ
本当の栄光、グランデ・インテルの復活があると、
日本のインテリスタは信じていると。

FORZA Nerazzurri! の言葉で締めくくられたこの手紙を、
モラッティは日本人に頼んで、
イタリア語に訳してもらい、読みました。



マッシモ・モラッティが
浦和レッズとの親善試合のために
埼玉に送り込んだチームは、
先々週ぼくがここで書いたように
本来のチームの半分であり、
万全ではありませんでした。
この失態の埋め合わせは必ず来年に果たすと、
モラッティはその意志のほどを語ってくれました。

「チームとともに日本を訪れた私の息子のアンジェロは、
 埼玉から熱くなってもどってきました。
 そして、来シーズンのカンピオナートが終ったら
 私自身も必ず日本へ行くと、私は息子に約束しました。
 その時は私が準備できる限りの
 強いインテルを連れて行きます。
 言ってしまえば、
 イタリアのチャンピオン・チームとしての
 インテルを連れて行くのが理想です」

日本人選手獲得に
意欲を見せるモラッティ。

そして、モラッティの頭の中には、
ここ1年のうちに、まさに日本人選手こそを
インテルに呼びたいという思いがあるようです。

「イタリアに来た日本人選手たちは
 みんな高レベルです。
 中田はまちがいなくチャンピオン・クラスですし、
 ローマにいた時のスクデット獲得への貢献度は
 小さいものではありませんでした。
 中村も今や大チームにふさわしい選手へと
 成熟しています。
 柳沢はイタリアでの最初の1年を
 サンプドーリアで活躍しましたが、
 今年はメッシーナで、昨年以上の栄光を
 手にすることでしょう」

モラッティは続けます。

「日本のサッカー市場は
 これからもっと拡大するでしょう。
 インテルは、ここ数年レアル・マドリッドが
 実行していたように、
 日本との長く続く関係にこそ興味をもっています。
 東京、大阪、横浜をはじめ日本の他の都市でも、
 ネラッズーリ(インテルの黒青)のシャツは
 良く売れている方だと知りました。
 我々は、その事実を反映させなければなりません。

 遠くから我々を見守ってくれるファンを、
 がっかりさせるわけにはいきません。
 そして日本との絆を固めるのは、
 ビジネスや打算ではなく、
 まずもって愛情です。
 新監督であるロベルト・マンチーニが
 これから作って行く新しい伝説や、
 アドリアーノやレコバなど
 インテルの選手たちの活躍を
 見守っている情熱的な人々が
 イタリアを遥か離れた地に
 たくさんいると思うと、
 私は光栄に思いますし、感動いたします」

モラッティの夢はひろがります。

「インテルは、
 このように我々のチームから離れずにいてくれる人々の
 思いを裏切らないチームにならなければいけません。
 そして、様々に異なる若者たちにとって、
 ネラッズーリ色こそが、
 スポーツと友好の理想郷へのパスポートになりうると
 思い描くことは、私の大きな喜びです」


訳者のひとこと
イタリア人の多くは
「忍耐」が苦手かもしれません。
言葉上では「忍耐している」と
つじつまがあったとしても、
その度合いに日本との差があると思います。
忌野清志郎さんのCMソングを、
イタリア人たちは本気で実行している向きも
ないではありません。
あ、もうダメ、と言うのが日本人より
早いかもしれないと思うのですが、
もちろん全員がそうなのではありません。
もしくは、もうダメと最初から大騒ぎしつつ
あんがい忍耐しているのかもしれません。
それに、無駄な忍耐を避けるべく、
知恵を駆使して「わざ」を極度に磨く、
という良い面もあるんですよ。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2004-08-02-MON

BACK
戻る