フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ジョルジオ・アルマーニとサッカー。

サッカー界というのは特殊な世界で、
そこではただ存在するというより、
どう自分を表現するかということが大切です。
そんなわけで選手たちが、とても大事にしていること、
それが「ファッション」です。
イタリアのサッカー界では、
(そしてたぶん、世界的に見ても、サッカー選手の間では)
全世界的に有名なジョルジオ・アルマーニが、
ナンバーワンの人気を誇っています。

 

アルマーニの「スポーツの顔」


1月11日の日曜日、
僕はアルマーニのパーティーに招かれて、
会場の日本レストラン「ノブ」に行きました。
「ノブ」があるマンゾーニ通りは、
ミラノのファッションの中心エリアにあります。
ファッションの帝王であるアルマーニは、
僕を満面の笑顔で暖かく迎えてくれました。

彼は、写真を撮って「1101.com」に載せたいという
僕の申し出に、快く応じてくれました。
写真を見て下さい。



アルマーニは、まるでベテランのモデルのように
ポーズをとっていますねえ。
ぼくが毎週日本のウエブサイトに寄稿していると話すと、
彼はメッセージを、くれました。

「日本のみなさんに、よろしく!!
 日本は私の第2の故郷なんです。
 あの優しさや文化や
 日本の芸術のエレガンスは、
 いつでも私のインスピレーションの泉です。
 この日本レストランを私のビルに開いたのも、
 素晴らしい国である日本を、イタリア人に
 出来るだけ知ってほしいからなのですよ」
ってね。

このパーティーは、
「Facce da Sport(スポーツの顔)」という本の
紹介のために開かれました。
それで、サッカー選手たちも、
たくさん招待されていました。
この本は5月に発売され、
売り上げは慈善に寄付されるそうです。





シェフチェンコもいました。
彼は故郷であるウクライナのキエフに
アルマーニのショップを開いたのです。
ミランの新しいスーパースターであるカカもいました。
彼も故郷のサン・パオロにアルマーニのショップを
開きたがっています。
他にはユベントスのディフェンダー、
レ・グロッタリエの顔も見えました。

そして、フォトグラファーたちが
誰よりも待ち受けて狙っていたのは、
クリスチャン・ヴィエリです。
彼は遅れて現れました。
まったくもう、こうして衆目を集めるのが
この選手はほんとうに上手です。
無声映画時代じゃあるまいし、
どこでそんなスター気取りを覚えたんでしょう。

でも偉大なアルマーニは、
ていねいにお辞儀をして、
実に情熱的に彼を迎え入れました。
そして彼は、親愛の情をこめて
ヴィエリを抱きとめつつ言いました。
「君が一番だ、誰よりも偉大だ」



まさにイタリアで最も有名な(たぶん)
ふたりの顔合わせです。
ファッションの帝王と
イタリアで一番稼いでいるサッカー選手。

実はアルマーニは僕に、
こう打ち明けていたのです。
「サッカー選手たちは
 若さの、つまり人生のシンボルです。
 彼らは演技しているのではなくて、
 自然にあるがままに振舞っています。
 それで、演技をするプロフェッショナルの
 モデルたちよりずっと真実味があるのです」


アルマーニがもっとも絶賛する男


この言葉からもわかるように、
このパーティーに招かれていたシェフチェンコや
ヴィエリをはじめ、アルマーニは総ての
サッカー選手たちを賞賛しています。
でも、なかでも別格なのは、
レアル・マドリードのベッカムです。

「私はデヴィッドのために
 特別なジャケットをデザインしました。
 彼はサッカー選手以上の存在です。
 今の若者たちはグローバルですから、
 国籍を超えた地球の市民と言えるでしょう。
 デヴィッドは、そんな彼らの、
 今日的なジュピターの化身なのです」

「ベッカム・ジャケット」は
アルマーニのショップでも買えますよ。
3月に売り出されるそうです。

さすがに偉大なアルマーニです、
今までのスタイリングを見直す上で、
次の方向を本質的に正しく見定めたと言えます。

なぜって、今日のイタリアでは、
サッカー選手が実際的なあこがれの象徴なのです。
地位、名声、収入、恋愛においてのあこがれは
もちろんですけれど、
彼らの美しさ、健康、肉体の輝き。
なにより、彼らの若さ。
俳優や歌手が偶像だった時代はもはや終ったと、
アルマーニは知っているのです。

ファッション・デザイナーの仕事は
何だと思いますか?
それを身にまとう人を、より美しく、
より若々しく見せる服を創ることです。
あのデザイナーの、あの服、という
「神話」を表現できるのは、美しい若者なのです。
それが、今のイタリアでは
サッカー選手たちなのですね。




訳者のひとこと

言われてみると、
確かに今のイタリア映画界には、
突出したスターは見当たりません。
歌の世界でも、国民的大歌手というのは
聞きません。
日本でも、昔はスポーツ選手というのは
イケメンであるかどうかは問題では
なかったのですが、最近は美しい人が
増えた気がします。
「美しさ」の基準も昔とは違いますが。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2004-01-19-MON

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