フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

マルディーニ、いざ日本へ!


今、ヨーロッパのクラブチームの頂点に立っているのは、
イタリアのACミランです。
そのミランのシンボルである選手が、
12月14日に横浜で開かれる
大事な世界選手権に欠場するわけにはいかないと、
その気持ちを語ってくれました。

彼の名はパオロ・マルディーニ。

彼は言います。
「2002年の6月、
 僕は負けて日本を去った‥‥
 韓国との、あの負けた試合のあと、
 僕はサッカーを捨てようと思った」

パオロ・マルディーニにとって、
あの敗戦は大変な衝撃だったでしょう。
サッカーは彼に総てを与えていたのですから。
コッパ・イタリア、チャンピオンズ・リーグ、
そしてトヨタ・カップでは2回、
彼は勝利しています。
サッカー選手がその人生に望む
ほとんど総てを、彼は手にしていたのです。

怪我が完治していない
マルディーニだけれど‥‥


負けの衝撃のあとの言葉通り、
イタリアに戻った彼は、まず、
韓国に負けたイタリア・ナショナルチーム、
アズーリのトラパットーニ監督に会いに行きます。
マルディーニは二度とアズーリの選手として闘わない、
つまりアズーリの選手の地位を辞退すると決めており、
トラパットーニは、長い話し合いの結果、
その意志を受け入れたのでした。

それからマルディーニは、
自分の所属するチームであるミランの、
ベルルスコーニ会長を訪ねます。
そして自分とミランとの契約を解消して欲しいと
会長に訴えます。

2002年夏の、その日、
ベルルスコーニ会長は彼を引き寄せ、
腕を取って彼を説得しました。
ミランには、世界一のチームに返り咲くという目標があり、
マルディーニ抜きでは目標にたどり着けない、
従って「君を解雇するわけにはいかない」と。

ミランの、この大選手は会長に従いました。
子供のころから着ていた赤黒の縞のシャツ、
ミランのシャツを着て闘い続けると決めたのです。
そのシャツは、彼より先に、
父親のチェーザレが誇りにしていたものです。
パパ・マルディーニもミランの選手だったのです。
(こちら2003-6-2の記事も参照してください)

こうしてパオロ・マルディーニは
「彼の」と言っても良いミランを率いて
チャンピオンズ・リーグに挑み、勝利します。
2003年5月28日、
マンチェスターでの決勝戦を制して、
ミランはヨーロッパ最強のクラブチームになりました。
何と言ってもキャプテン・マルディーニの功績が
大きいと言えるのです。

そして今、日本が彼を待っています。
ヨーロッパと南アメリカ地区の最強のクラブチームが
世界一をかけて闘うトヨタ・カップです。

マルディーニが、
「欠場するわけにはいかない」と言っていると、
最初に書きました。というのも、
実は彼は少し前のブルージュとの試合で負傷し、
まだ完治していないのです。

でも、大した故障ではないとのことですから、
12月14日には大丈夫でしょう。

マルディーニは、こう続けます。
「なんといっても最高の大舞台だからね。
 アズーリからは脱退してしまったから
 この先のヨーロッパ選手権には出ないし、
 だいいち次のW杯には、僕はもう歳を
 取り過ぎだから‥‥
 これが僕のサッカー人生での
 最後の大仕事になるかな」

「今回は僕がキャプテンなんだから!」


彼は実に4回もトヨタ・カップに参戦しており、
2勝2敗の成績です。
メデリンとオリンピアに勝って優勝し、
サン・パオロとベレス・サルスフィエルドには負けました。

今回、彼の5回めのトヨタ・カップを闘う相手は
ボカ・ジュニアーズですね。

ともかく、サッカー史上を眺めてみても、
世界一のクラブチームを決めるこの試合を
5回も闘った選手なんて
マルディーニのほかにはいません。
素晴らしいことです。

しかも今回の彼は、
キャプテンとして闘うのです。

「そりゃ熱くなるさ、
 自分にもっと誇りも持てる。
 ずっとフランコ・バレージがキャプテンだったけれど、
 今回は僕がキャプテンなんだから。
 ミランのキャプテンとして
 僕らが世界一のチームであることを見せるために
 日本へ行くということは、
 もう素晴らしいとしか言えない気分だね。
 ここ一番の競争をトップで走り抜ける馬に
 乗っている騎手や、
 F1レースでチャンピオンゴール目前のレーサー、
 オリンピックの100m走で
 飛ぶようにゴールに向かう選手も、
 きっとみんな、こんなふうに気持ち良いんだと思うよ」

彼の語ってくれたことをインターネットで
この「ほぼ日」に載せるんだよと僕が知らせたら、
読者の皆さん全員に向けて彼がこう言っていますよ。

「日本のみなさん、
 僕らを待っていてください。
 絶対に、がっかりはさせないから!!」

訳者のひとこと

パオロ・マルディーニ‥‥いい男ですねえ。
いわゆる美形がイタリアには山ほどいるのですが、
こういう個性的な「いい男」が、
これまた、いっぱい居るのがイタリアです。
「いい女」も、ですよ。
おじいさん、おばあさんも素敵です。
美しいとか、おしゃれとか、
そういうことを超えて素敵なんです。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-11-17-MON

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