フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

よくやったぞ、ピッポ!!


さて、今週は、先週ここで触れた
「ピッポ」ことフィリッポ・インザーギについて
話を続けます。

ピッポは、一般的に言って
「誰にでも好かれている」
‥‥というわけではありません。

理由はいろいろ考えられます。
たとえば彼がシャイで、
誰とでもうちとけて話ができるという性格ではないこと。
そのくせペナルティー・エリアでファールを受けたなどと
大袈裟にアピールして、
審判をだまそうとしたりする面も持っていること。
女性にモテすぎで、彼を恋人や夫にするためなら
なんでもするという女性に常にかこまれている、
などなど‥‥。
「すっごい嫌なやつ!」と思われるほどの
理由にはならないようなものも
ありますけれどね。

そんなピッポにとって、
9月9日火曜日から16日水曜日までの一週間は、
かつてなかったほど素晴らしい
「fantastic」なものでした。
(おしゃれな彼に合わせて、
 僕も英語なんか使ってみました)


アズーリで、ミランで、
活躍するピッポ!

先週も書いたように、
ベオグラードで行われた、ヨーロッパ選手権の
出場資格を競う試合のひとつで、
アズーリ(イタリア・ナショナルチーム)を相手の
セルビアに同点に追いつかせたのは、彼のゴールでした。
それを皮切りに、土曜日にはACミランの選手として、
カンピオナート(イタリア国内リーグ)の第2日めの
対ボロ−ニャ戦でも、勝利のゴールをたたきこみます。
ついで火曜日、やはりミランの一員として、
UEFAチャンピオンズ・リーグ新シーズンの初日に、
アヤックスを破るゴールを、彼が決めています。

サッカーの三大イベントで、
ピッポはことごとく的を得たプレイを見せ、
「世界で最も手強いアタッカー」としての
確信も湧いたことでしょう。
彼もまた、
W杯での敗戦の雪辱を果たそうとしているのです。

アズーリをヨーロッパチャンピオンにし、
ミランには、12月に日本で開かれる
トヨタ・カップで優勝させたいと、
彼はいまや燃えています。

とりわけアズーリに関しては、
ヴィエリとのことで決定的に
ピッポが外されようとしていた矢先に、
有無を言わせぬ勢いでピッチに戻ってきての活躍です。

ヴィエリとの不仲。
これが起こったのは7月のことでした。
それまでのふたりは、兄弟のように仲が良かったのです。
それが、ヴィエリの恋人がピッポと一緒にいるところを
よく見られるようになったのが原因なのか、
ほかにまだ原因があるのか、よく分かりませんが、
とにかくふたりの仲は、ぎくしゃくしてしまったのです。

ところが、まさにヨーロッパ選手権での
ふたつの重要な試合を前に、
トッティが負傷してしまいます。
それで、事前には呼ばれてもいなかった
インザーギの登場となりました。

ピッポはゴールという鳴り物入りで、
この起用に報うことができたのです。



ミランでの彼の立場も初めは微妙でした。
シェフチェンコと組ませるには
ピッポよりリバウドのほうが好ましい、
と言う人物がいたからです。

たぶんそれを言った張本人の
ベルルスコーニ会長は、
リバウドがミランに来る気になるようにと、
世界新記録の高額な契約金を提示していました。

が、しかし、会長のおぼしめしに耳を貸さなかったのは、
アンチェロッティ監督でした。
監督はピッポ・インザーギに信頼を託し、
ピッポは、アズーリのトラパットーニ監督への
恩返しするのと同じように、
ゴールというお礼を
ミランのアンチェロッティ監督にも、
ささげたのでした。

ごめん、ピッポ!
ぼくのコメントを撤回します。

実は僕は、2002年の6月に仙台で、
W杯会期中の記者会見の流れのなかで
彼をこっぴどく批判し、
彼の反撃を受けました。

「見てろよ、フランコ。
 そんなことばかり書いて、
 いまにぜんぶ取り消すことになるぞ」ってね。

いや、これはケンカじゃないんですよ。
丁々発止のやりとりとでも思ってください。
だって僕は彼に、こう約束もしたんです。

「そこまで言うなら見せていただこうじゃないですか。
 君がまだまだ誰よりも強いってことをね。
 その時には僕はこの批判を撤回して、
 君を賞賛の嵐で包もうじやないか!」

‥‥「その時」が来たんですね。
嬉しいです。

今こそ僕はなんの怖れもためらいも無く、
彼をほめたたえますよ。

「素晴らしい(Bravo)!!
 本当のチャンピオンとは、
 君のような人のことだ。
 本当のチャンピオンこそは、
 見事なプレイや重要なゴールで
 批判をはねかえすものだ」

こういった
「ちょっといじわるなオトナとのやりとり」も
若者を育てるものなんです。
実際のところ、ピッポは少し人格が変わってきました。
ちょっとは感じ悪くなくなってきた‥‥
うん、むしろ好い感じになってきたかな。

フランコおじさんも、いろいろ考えているんです。
サッカーを愛していますからね。
サッカーに必要なのは選手だけれど、
人間性にあふれた選手が多く居るに越したことは
ありませんからね。

訳者のひとこと

イタリア語の話ではないのですが、
ピッポの映像検索をしていて
中国語のサイトにたどり着きました。
菲力普 英扎吉
Filippo Inzaghi
なのですね〜。
ACミラン AC米蘭
イタリア  意大利
(日本では伊太利ですね)
加入的時間1997年
なんていうのもありました。

実は私、フランコさんに、
漢字の当て字ではなく、翻訳した
名前をさしあげたのでした。
Franco 誠実な
Rossi 赤rossoの複数形 で
赤井 誠さん。
使ってくださっているかは、不明。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-09-22-MON

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