フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イタリアサッカーは
アズーリだけではありません。

成功を勝ち取るのは簡単なことではありません。
でも成功し続けるのは、
もっともっと難しいことです。
 
かつての栄光から離れて久しい今年、
イタリアのサッカーが
ヨーロッパの女王の座に
返り咲こうとしています。
少なくもクラブ・チームのレヴェルでは。
(え? なんで王様じゃなくて女王様なの、ですって?
 チームはイタリア語ではスクアドラsquadra
 といって、女性名詞なんですよ。)
 
ナショナルチームのアズーリのほうは、
ヨーロッパ選手権で苦戦中です。
アズーリが昨年のW杯での落胆を忘れるには、
ここで高順位をおさめるのが
一番なんですが・・・
 
でも、イタリアサッカーは
アズーリだけではありません。
 
セリエAでおなじみの、
クラブ・チームの活躍がありますからね。
こちらが女王の座に近付きつつあるのです。


UEFAチャンピオンズ・リーグ、
4強のうちの3チームがイタリア勢!

セリエAの中でも三大強豪チーム、
ユベントス、インテル、ミランが、
ヨーロッパで一番のクラブチームを決める
UEFAチャンピオンズ・リーグの準決勝に残りました。
つまり4強のうちの3チームがイタリア勢だということです。
 
そうなると準決勝戦の1試合は
イタリア同士が闘うことになりますね。
なんと、両者ともミラノのチーム、
インテルとミランが対戦します。
もうひと組は、まさに伝統的な顔合わせ、
ユベントス対レアル・マドリッドです。
 
クラブ・チームとナショナル・チームを安易に比較して、
アズーリがインテル、ミラン、ユベントスのように
上手くいかないのはトラパットーニ監督のせい、
と言ってしまっては気の毒でしょう。
クラブ・チームには世界中から集めた優秀な選手もいて、
みんな力の限りを尽くしますからね。
ネドヴァド、トレセゲ、クレスポ、
フェコバ、コルドヴァ、シェフチェンコ、
リバウド、セルジーニョたちはアズーリには使えません。
まあ、どの国でもナショナルチームの場合は
そういうことなんですけど。
 
さて、UEFAチャンピオンズ・リーグの
準決勝戦、インテル対ミランは熱い対戦になるでしょう。
この両チームは、前にも書きましたが、
同じくミラノがホームで因縁のライバル同士なんです。
モラッティ対ベルルスコーニという
会長同士の闘いでもあり、
監督クーペル対アンチェロッティの闘いでもあります。
終わりなき決戦、なのです。
 
今回の負けのツケを払うのは会長ではなく、
監督のようですよ。
クーペルかアンチェロッティ、
負けたほうのクビがかかっているらしい。
 
ミランにしてもインテルにしても、
両監督の気持ちを落ち着かせるために、
契約を2005年までに延長しています。
いちおうクビは大丈夫、
という格好にだけはなっているわけです。
 
2年前も、ユベントスは3月に
アンチェロッティ監督の契約を2年延長しました。
そして5月には、事実上いったん彼を解雇しました。
 
でも、クビになっても、お金の心配はいりません。
解雇後も契約の2005年6月30日までは
報酬をもらえるんですから。
(そういう契約になっているんですよ)
これは今や、イタリアサッカー界の
お約束とも言うべきことです。
ほんと、お金持ちならではの美しいやり方ですねえ。
そして、世界一の浪費家が
いかにも考えそうなことですねえ
(もちろん皮肉をこめて‥‥)。
 
いずれにせよ、解雇の心配がまったく無いのは、
連続2年目のカンピオナート(イタリア選手権)優勝を
ほぼ決めているユベントスのマルチェッロ・リッピ監督です。


ロナウドのファン、胸中複雑?


もう一方の準決勝戦では、ロナウドを選手筆頭にすえる
レアル・マドリッドとユベントスが対戦します。
ロナウドはこの前の
マンチェスター・ユナイテッドとの対戦で、
3ゴールをマークしました。
その素晴らしさは、敵陣の競技場であったにもかかわらず
大喝采をあびたほどです。
 
ロナウドはかつて、ユベントスから
目の敵にされていましたね。
 
インテルにいたころ、彼は2回、
ユベントスにイタリア選手権優勝の印のスクデットを、
かすめ取られてしまいました。
 
1997ー1998シーズンの最後の最後に、
ロナウドのセンセーショナルなペナルティキックを阻み、
ユベントスがスクデットを持っていきました。
ユベントスのホーム、トリノでのことでした。
 
2回目は去年、5月5日、シーズン最終日のことでしたが、
インテルはローマの地でラツィオに負けました。
結果、スクデットはウーディネに勝ったユベントスが、
またもや持っていきました。
 
その午後はロナウドにとって、
インテルの選手として最後の
試合だったんです。
彼は悔し涙にくれたのでした。
 
その因縁のユベントスと、
UEFAチャンピオンズ・リーグの準決勝で
対戦するのです。
ロナウドは雪辱を果たしたいことでしょう。
 
彼自身のためでもあり、
彼を忘れられないインテルのティフォーゾたちだって、
きっと喜んでくれるに違いありません。
決勝戦がインテル対レアル・マドリッドになったりしたら、
ロナウドのファンでインテルのティフォーゾという人は、
どうするんでしょう・・・???

訳者の一言
クビになっても給料はもらえる???
いいな、いいな。
でも、イタリア男にとって、
より大切なのは名誉です。
負けてクビになるのは、
不名誉きわまりないでしょう。
しかし、契約を伸ばしながらクビにはする、
で、給料はくれる・・
よく分からんことを考え付くのも、
イタリアっぽいと言えなくもないか。
翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-05-05-MON
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