フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

愛か金か!?

ロベルト・バッジョが、
彼の最も愛する地にもどってきます。
それは、日本。

彼の夢と、彼の宗教と、彼の未来があるところ・・・

彼はもう決めたのです。
彼が愛し、そして彼を愛してくれる地で
彼のキャリアの最後の年月を過ごそうと。

彼はまず、この8月に横浜で
2試合をプレイする予定です。

バッジョの思いに火をつけたのは?

過日、ある企業家が日本からイタリアへやってきました。
彼はブレシアの役員たちと話し合い、
8月6日と11日の親善試合の合意にこぎつけました。

この招待実現の動機となったのが、ロベルト・バッジョです。

彼はシーズンの終りには
ブレシアから離れたいと思っています。
最終的に日本へ移動するためですが、
この決断の受け入れを待ちながら、
これら2回の親善試合を承諾してくれるようにと、
バッジョが役員たちを説き伏せたのでした。

8月6日という日付けが、
バッジョを突き動かしました。

8月6日ですよ。
1945年のこの日には、彼が心から愛する国であり、
数千年の歴史を持つこの日本に、
大きな大きな悲しみと苦しみがもたらされましたね。

ブレシアを横浜に迎えての親善試合のうち、
最初の日が8月6日であると知ってバッジョは感動しました。
彼は目に涙を浮かべながら、
この申し出を受け入れるようにと
ブレシアの役員たちを説得したのです。

チケットは完売するであろうことから、
契約金は大した額にはね上がったに違いありません。
でも、この親善試合を受け入れたいという
ロベルト・バッジョの思いに火をつけたのは、
金額ではありませんでした。

8月6日に日本でプレイする。
彼は、人類史上初めて原子爆弾の犠牲となった被害者たちに、
敬意を表したいのです。

当日、彼はブレシアのシャツの左に黒い腕章をつけて、
プレイするつもりです。

イタリアでは黒は、亡くなった方たちに対する
敬意を表す色です。
ロベルト・バッジョは彼のサッカーにおける雄々しさと
ファンタスティックなドリブリングにかけて、
せめてほんのわずかな間でも、
58年前のあの恐ろしい8月6日を
忘れてもらえるようにと努力することで、
哀悼の意を表すでしょう。

お金のためでなく、愛のために・・・

バティ、契約金の新記録。

さて一方、お金のために、
もうじき終ろうとしている欧州移籍市場の
主役となっているのが、アルゼンチン人のアタッカーである
ガブリエル・バティステュータです。
彼はローマからインテルに譲渡されました。

やはりアルゼンチン人であるクレスポが
大事故に遭ってしまったので、
インテルとしてはバティをスカウトせざるを
得なかったのです。

ガブリエル・バティステュータは34才で、
5月25日まではインテルでプレイする予定です。

で、これだけのために600万ドルを受け取るのです。

契約金の新記録ですよ!!
こんなに短期間のためにこの額を受け取るというのは
前代未聞です。

バッジョとバティステュータ、
彼らに共通していることと言ったら、
名字のイニシアルが同じって事ぐらいですねえ。

バッジョは愛に導かれ、
バティはお金にひらめきを得る・・・

まあ、イタリアのサッカー界というのは、こんな塩梅です。

訳者の一言
バティのファンがお怒りじゃないでしょうかあ‥‥
日本では判官びいきと言って、
お兄さんの源頼朝につらく当たられたらしい
義経の方をひいきするという、
弱い者に味方する向きもありますが、
イタリア人もそういうところがあります。
強いのもすごく好き、でも、よわいのよわいのの味方。
フランコさんが「ほぼ日」に書いているのは
偶然じゃないのです。
翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら、

フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!)

2003-01-20-MON

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