フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イタリアのサッカー経済

夢の中でも最もあこがれ度の高い欧州市場に、
イタリア人たちが夢見る日々が、またやって来ました。

全チームのサポーターたちは、
毎朝起きるやいなやスポーツ新聞か、
政治新聞ならスポーツ面に目を通します。

情報を得たいし、希望を持ちたいし、夢を見たいのです。

半数以上のチームが
借金に苦しんでいる。

セリエAで選手権のトップランクにいるチームは、
その地位を保つために優秀な選手を確保したいですから、
経済的には狂乱すれすれの額を支払う用意をしています。

下のランクにいるチームは、セリエBに転げ落ちないために、
有名なセンター・フォワードや
目を見張らせるミッドフィルダー獲得を夢見ています。

実情はといえば、イタリアのサッカーは借金をかかえながら
ゼイタクを続けているのです。
稼ぎを決定的に上回るゼイタクをね。

昨年の夏、スクデット(セリエAでの完全優勝)を
2度の経験しているという過去の栄光を背負いつつ、
フィオレンティーナが破産しました。
そして今はフロレンティアと名前を変えて、
なんとC2、つまり
4部リーグから再スタートという憂き目をみています。
(イタリアのサッカーには、セリエAを頂点として、
 以下、B、C1、C2の4つのリーグがあるのです)

半数以上のチームが借金にアップアップしながら、
先行きの改善に期待する銀行からの融資で、
かろうじて給料を支払える状態です。

このことはユーヴェ、インテル、
ミランには問題ではありません。

ユーヴェの支出は収入以内に納まっており、
経済的に余裕の黒字です。

インテルとミランは借金だらけではありますが、
石油業者のモラッティ、
イタリア首相のベルルスコーニという
大金持ちがそれぞれのオーナーであり、
彼らがポケット・マネーから膨大な額を、
チーム経済健全化のために毎年おろしてくれます。

中田と中村が移籍する可能性についての
フランコ的考察。

では、これら3チーム以外はどうしているのでしょう?

3チーム以外のチームは深刻な困難に直面しています。
来夏、収支決算が提示される時には
破産のリスクもあるでしょう。

ラツィオもこの中に入ります。
選手権の新しい星であり上位で健闘していますが、
給料を捻出するためには、今回のサッカー・マーケットで
何人かの選手を売りに出さなければならないでしょう。

オランダ人のスタンはミランが欲しがっており、
ユーゴスラヴィアのスタンコヴィッチには
ユーヴェが言い寄っています。

このふたりが1月31日ぎりぎりの時間に移籍する可能性は、
じゅうぶんにあります。

ヨーロッパ有数の大規模なチーズ製造業者、
パルマラット社のオーナーである
企業家タンツィに属するパルマでさえ、
経済的問題をかかえています。

パルマは、中田英寿をのぞく選手たちの給料を下げました。

中田はイタリアにいる選手たちの中で
一番の高収入を得ていますが、
彼を宣伝に使っている企業が
報酬の大部分を支払っているお陰です。



レッジーナと南イタリアのファンたちのアイドルである
中村俊輔にも、同じことが言えます。

中村や中田のネーム入りのシャツは
イタリアでも飛ぶように売れ、
今や彼らの人気はヴィエリ、トッティ、デル・ピエロ、
インザーギと肩を並べています。

でも選手権終了後の6月のマーケットでは、
このふたりの日本人選手は
移籍したがるかも知れませんね。
パルマは選手権の中では抜きん出て
素晴らしいチームではありませんし、
レッジーナに至っては
セリエBに降格される公算が高いですから、
彼らはもっと優秀で有名なチームでプレイしたいでしょう。

パルマには中田に対するオファーが、
国外ではマドリードのアトレティコやチェルシー、
イタリア国内ではインテルとボローニャから来ています。
一方の中村は、もしセリエAへの昇格が約束されれば
サンプドリアに、
そうでなければローマかラツィオに、
たいへん興味があるようです。

ま、夏のメルカートまでには、まだ時間がありますからね。
とりあえず1月31日までは、イタリアの全サポーターには
夢見る権利が(希望も)あるってもんです。

訳者の一言
サッカー界に限らず、
経済の問題は常に近代イタリアに
付いて回っているのです。
国家としてはとっくに破産しているという説すら、
聞き飽きたほど言われ続けています。
芸術家って金計算は苦手だから・・・?
翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-01-20-MON

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